「出てくる」体験
ライフログシステムと一体化して運用する電子化した書籍の最大の魅力は、「出てくる」ことにあります。特にデータ本的な電子書籍ではとくに魅力的です。
筆者は、ライフログシステムのひとつで、『最新あなたに愛と幸運を呼ぶ誕生花 花言葉ポケット図鑑』(徳島康之 榊原その/主婦の友社)を使って、2012年9月から、毎日、その日の誕生花を表示しています。
誕生花を表示するだけで、花の魅力に触れることができ、とても楽しいものです。毎朝、今日の花はなんだろう、と、ちょっとわくわくします。
知らなかった花を見たり、知らなかった花の名前を覚えたり、朝に見た花を散歩の途中で発見したりします。このように新しい知識が増えたり、整理できたりすることは地道で小さなことですが、たいへん魅力的なのです。
図鑑でも辞書的な本でも、紙の状態では必要があって探すわけで、逆にいうと必要がなければ死蔵しがちです。
電子書籍化した場合、従来は「検索して出てくる」ことに比重があったかと思います。能動的な検索です。
筆者はこれまでにも何度か「出てくる」ことが魅力だと話していますが、この「出てくる」は能動的な検索ではなく、受動的な状態で出てくることを意味しています。「思わぬ発見」が連続するのです。
「思わぬ発見」はセレンディピティといわれますが、ライフログシステムでの「思わぬ発見」はセレンディピティよりもずっとひんぱんに発生します。
『aromaDatabase』
ライフログシステムは人生全体をターゲットにしています。その全体像は依然として不明ですが、筆者はこれまでにそのシステムの内、約150ほどを単機能のアプリケーションとして切り出して実装して公開してきました。
それでもまだ全機能の1/10程を公開したのに過ぎませんので、ライフログシステム(すなわち人生)の全体像はすくなくとも1,500以上の機能(2013年3月現在)が複雑に絡み合いながら動いているのだということができます。たかだか5年ほどでこの規模ですから、人生全体ではその10倍以上のトピックがあることは容易に想像できます。
そのひとつの機能として、先日、アロマテラピーの情報を整理する『aromaDatabase』を公開しました。
この『aromaDatabase』を見ていたら、「アロマテラピーで扱っているのは植物なのだから、誕生花と連携したら、もっと植物を立体的に把握できるのではないか」と連想がつながりました。
そこで早速、『aromaDatabase』と『最新あなたに愛と幸運を呼ぶ誕生花 花言葉ポケット図鑑』の表示システムを連動して、動作するようにしました。これが冒頭の画面です。
インスピレーションを自動化する
『aromaDatabase』では、Googleと連動した産地の自動検索機能もあり、アロマや花、国などを核として、さまざまな情報を連携して知ることができます。
ちなみに、『aromaDatabase』で表示している写真も、Googleを使って自動的に表示しています(写真の出典はプログラム上に明記しています)。
…と執筆していたら、そういえばこれまでに筆者自身が何度か薔薇園を訪問して、薔薇の写真を撮ったことを思い出しました。今後、その写真とこのシステムを組み合わせていけば、より自分自身のライフに寄り添ったシステムになるでしょう。
このように、ライフログシステムは、個別のシステム(電子書籍、データベース、インターネット、サーチエンジン、デジタルカメラ、日記)などを連携して扱うことで、魅力が増幅します。そこで、このような連携システムを『インスピレーション・エンジン』(©MISAKI Kaoru)と名づけてみます。
『インスピレーション・エンジン』は、さまざまな連想を強力にサポートして加速化するシステムです。一貫性をもっていて、破綻なくばらばらの体験や知識を体系づけることができます。
現在のところ、『インスピレーション・エンジン』はごく一部を実現できたところですが、今後よりわかりやすい形での構築を進めたいと考えています。