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近年のGTD,Lifehackの出現と相まって,情報カードやモレスキンといった,アナログ・ツールの使い方が議論されるようになりました。Lifehack.org,2ちゃんねる,Flickrでは,その具体的な使い方について,日々情報交換がなされています。
GTDと情報カード
David Allenは著書「Getting Things DONE」(2001)の中で,後に「GTD」と呼ばれるタスク処理法を提唱しました。David Allenがその本の中で明らかにしたことの一つは,「頭の中のことを紙に書き出して処理しても良い」ということでした。David Allen が,頭の中を全て書き出すメディアの一つとして挙げたのはアナログ・メディアの「カード」でした。
その後,Marlin MannはGTDとカードの具体的な組み合わせとして,Hipster PDAを示しました。5x3サイズの情報カード数枚をクリップで留めた,最先端(hipster)のPDAです。続いて,Jazzmastersonは,GTDによるタスク処理とカードの組み合わせをflickrのフォトセットで示しました。
情報カード大国,日本
一方で日本には,1960年代から1970年代にかけて書かれた,カードと生産性向上に関する数々の本があります。梅棹忠夫氏は,「知的生産の技術」(1969)の中で,知的生産におけるカードの使い方を具体的に紹介しました。この他,渡部昇一氏の「知的生活の方法」(1976),板坂元氏の「考える技術・書く技術」(1973),川喜田二郎氏の「発想法」(1967)を合わせた4冊は,カード使いにとって必読の書と言えるでしょう。このように,情報カードの使い方(=ソフトウェア)に関して,日本には実に40年に近い伝統があります。
GTDからPoICへ
David AllenがGTDを提唱し,Merlin MannとJazzmastersonは,GTDとカードの組み合わせを示しました。一方で,日本には,カードに関する優れたソフトウェアがあります。これらを融合し,より具体的な「何かを成し遂げる(Getting Things Done)技術」を実現できないでしょうか?
この問いに対する一つの提案が,本連載で紹介する「情報カードの積み重ね(Pile of Index Cards : PoIC)」です。
PoICのエッセンスは,たった3行で表現できます。
- 頭の中のアイディア・身の回りの情報を,すべて「情報カード」に書き出す
- それを箱の中に「時系列」で保存していく
- それをあとで利用し,新しい知恵・知識・成果の再生産を行う
PoICのエッセンス

私がこのシステムを構築する際に大前提としたのは「長続きすること」です。余分な要素を一切排除し,楽しく使うための要素を取り込みました。PoICに必要なのは,紙とペンと箱と,ちょっとした技術だけです。プリンターもバッテリーも充電器も必要ありません。
PoICの利点
デジタルと比較したとき,アナログ・メディアを使うPoICには,さまざまな利点があります。
- 絵を自由に描けること
- いつでも・どこでも・どんな体勢でも情報を捕獲できること
- 自分のアイディアが,カードの枚数になって現れること
- 実際に手を動かすことで,脳が活性化されること
- メディアが比較的安いこと
これらの利点が発想を促します。デジタルが得意とする分類性や検索性をあえて見切ることで,個人の知的活動は活き活きとさえしてきます。そして,発想の連鎖が生産性を向上させます。
次回からは,PoICを始めるのに何が必要か,それをどう使うのかについて見ていくことにしましょう。