SONY Readerで日本の電子出版を体感

第2回電子書籍端末SONY「Reader」レビュー(その2)

意外な障害が……

PRS-T1を購入してから数回出張に出たので、その都度一緒に連れて歩きました。

この間、電車と飛行機での移動がありました。まず、電車では、何の問題もなく使うことができ、2時間半の移動中も読みふけることができました。問題は飛行機です。紙の書籍では問題無かったのですが、Readerは電子機器です。そう、離発着時には、電子機器の電源を切る必要があるので、PRS-T1が使えません。たとえば、1時間程度のフライトだと、30~40分くらいしか読書ができません。思ってもみなかったので、滅多に眺めない窓の外を見て時間を潰しましたが、電子機器の弱点がこうしたシーンで出るとは意外でした。

さて、前回は、PRS-T1のハードウェアを中心にご紹介したので、今回は、Readerのソフトウェアをご紹介します。

やさしい表示の電子ペーパー

ソフトウェアのご紹介を……と書きながら、もう少しだけハードウェアのご紹介を続けます。

PRS-T1のディスプレイは、E Ink社の電子ペーパーが使われています。このディスプレイは、光による反射が低く、コントラストが高いので、液晶ディスプレイで文字を読む感覚とは違い長時間読書を続けても目が疲れません。これが「読める端末」の一端を担っています。

見やすいディスプレイ。読書をするような距離ならば、ドットが気になることもない
見やすいディスプレイ。読書をするような距離ならば、ドットが気になることもない

ただ、良い面ばかりではありません。このディスプレイは、描画をしているのが目で追える程表示速度が遅いのです。STN液晶をさらに酷くした感じと言えば、オールドユーザには、その程度をご理解頂けるはずです。他、ページめくりのように、画面の大半を書き換える場合は、白黒反転した後で描画が行われたり、メニューを表示して閉じると残像が残るなど、慣れ親しんだディスプレイとは異なった動きをします。こうした動きは、人によって評価が分かれるかもしれません。筆者は、デメリットよりもメリットの方が上回ると考えているのと、読書をするのに支障にならないので悪い印象はありません。

PRS-T1は、ピンチイン・ピンチアウトの操作で、ページの拡大・縮小が行えます。

操作をすると、画面がちらつきながら追従するので、どれくらいのサイズに変更したか掴みづらいのと、ちらつく画面を操作する感覚が気持ち悪いので使う気になりません。ディスプレイの特性を考えれば、こうした機能を盛り込まない判断もあったはずですが、先走り気味なところは、ソニーらしいと言えるかもしれません。

シンプルなホーム画面

ホーム画面は、一代目のそれと比較すると画面下にあるタブが無くなり、2ページの画面構成になっています。1ページ目は、読書中の書籍が画面上部に大きく表示され、その下に最近追加した書籍が3冊表示されます。

さらに、その下には、アプリケーションボタンが4個並びます。それぞれ、購入した書籍のファイル一覧を表示する「書籍⁠⁠、Reader Storeにアクセスできる「Reader Store⁠⁠、作成したノートを表示する「全ノート一覧⁠⁠、手持ち書籍をジャンル分けしてグループ化できる「コレクション」となっています。二ページ目は、ネットワーク、アプリケーション、マルチメディア、システムにカテゴリ分けされており、それぞれにボタンがあります。

ホーム画面。シンプルな造りに改められたのは好感が持てる
ホーム画面。シンプルな造りに改められたのは好感が持てる

一代目を使ったことがないので、それとの比較はできませんが、使い心地は「可もなく不可もなく」と言った印象です。この仕上がりに、もの足りないと感じる方も居るかもしれませんが、Readerの本分は「読むこと」なので、それ以外に気を取られないような造りに徹しているのは好感が持てます。

ただし、作り手の意図が掴めない部分もあります。

たとえば、ホーム画面でフリック操作をしても画面は切り替わりません。ホーム画面は、ボタンが多く並ぶので、そうした操作ができない方が良いと判断したのかもしれませんが、タッチ操作ができる端末であれば、ユーザはこうした操作ができることを期待するはずです。ユーザの期待を裏切るような仕様と操作感が統一されていないのは残念です。

もうひとつ、1ページ目にある「書籍」「コレクション」アプリケーションの役割分担がわかりづらいことです。⁠書籍」はReaderのファイルを一覧表示する。⁠コレクション」は、手持ちの書籍をグループ分けするアプリケーションです。こうして書くとなんてことはありませんが、この2つが統合されていても良いはずです。iPodの音楽管理方法のように、手本になるような端末はたくさんあるはずなのに、なぜ2つに分けているのか作り手の意図が掴めません。

次回もソフトウェア周りを取り上げます

PRS-T1は、先走ったところや意図が掴めない部分もありますが、総じて懲りすぎた部分がなく、肩の力が抜けた感じで道具に徹している仕上がりです。こうした専用機は、やはり日本のメーカのほうがうまくまとめます。今回は、⁠ソフトウェアを……」と始めながら、ホーム画面にしか触れることができなかったので、次回もソフトウェア周りを取り上げます。

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