SONY Readerで日本の電子出版を体感

第4回電子書籍端末SONY 「Reader」レビュー(4)

今回は、Webサービスの「Reader Store」とコンテンツ転送ソフト「eBook Transfer for Reader」を取り上げます。

筆者が購入したPRS-T1は、Wi-Fiが搭載されているので、端末だけでReader Storeにアクセスして書籍が購入できます。筆者は、書籍購入時等に、端末のソフトキーボードを使ってIDとパスワードを入力するのが面倒なので、Macで購入してeBook Transfer for Readerで転送する使い方なので、これに沿った形で取り上げていきます。

らしい輝きがない「Reader Store」

他でも書かれていますが、Readerは、コンテンツありきの端末なので、まずは、Reader Storeの蔵書点数に関してからです。品揃え云々は当然ありますが、いまだゴタゴタが続く電子書籍に多くを求めるつもりはありませんし、蔵書が人気タイトルに偏るのは書店でも変わりないので、筆者は悪い印象を持っていません。この辺りは、人によって評価が分かれるので、気になる方はReader Storeにアクセスして品揃えを確認することをお勧めします。

また、せっかくの端末なので、これで読書ができないのは惜しいと考える方もいるかもしれません。先でも触れたように、現実の品揃えでは、すべて電子書籍でというワケにもいきませんが、読みたいと思った時にすぐに入手できて楽しめるのは、何にも替えがたい魅力です。Reader Storeに読みたい本がなければ、筆者は、素直に諦めて紙の書籍を購入しています。これは、iTunes Music Storeが始まったころも同じことをしていたので、時間とともに切り替わっていくだろうと気長に考えています。

さて、Reader Storeの使い勝手は、可もなく不可もなくといった印象です。

筆者は、SONYが運営する他のWebサービスを使ったことがないので、比較はできませんが、無難にまとめられている印象で、光る部分が見当たりません。このサイトだけ見れば、SONYが運営していると気づかないほどで、⁠らしさ」のないサイトです。

ただ、もうひとつと感じる部分があります。

Reader Storeには、Amazonの「ほしい物リスト」のように、気になる書籍をピックアップしておける「キープリスト」機能があります。これがパソコンと端末で別々の管理になっており、実質は、どちらかで管理しないと使えない機能になっています。作り手は、どちらか一方でしか使わないだろうと考えて、現状のような仕様になっているのかもしれません。しかし、これでは端末からReader Storeにアクセスできる機能が宝の持ち腐れとなりそうですし、Webサービスで展開しているメリットを感じられません。早々の解決をお願いしたいところです。

転送ソフト以上でも以下でもない

購入した電子書籍を端末に転送するには、端末とパソコンをUSBケーブルで繋ぎます。USBケーブルを繋ぐと、データ転送モードに変更するボタンが端末の画面が表示されるので、ボタンをタップしてUSBストレージとしてパソコンにマウントします。その後は、⁠Book Transfer for Reader」を使って書籍を端末に転送します。

使いづらいワケではないが物足りない「Book Transfer for Reader」
使いづらいワケではないが物足りない「Book Transfer for Reader」

Reader Storeで、電子書籍を購入すると、.mbbsの拡張子が付いたファイルがダウンロードできます。これを端末のDownloadフォルダへ転送するのではなく、ダブルクリックして、書籍ファイルをダウンロードした後、端末へ転送する流れで使います。ダブルクリックするだけで端末に書籍が転送されるので、使い勝手のよい仕組みですが、eBook Transfer for Readerがインストールされていることが必須条件になるので注意が必要です。eBook Transfer for Readerを使わない場合は、パソコンで書籍を購入するのではなく、端末で購入するのが一番手間がかからない方法になります。

eBook Transfer for Readerは、文字通りのソフトでReaderへの電子書籍の転送とバックアップが行えます。デキが悪いワケではありませんが、iPhone+iTunesのベストデュオを知ると物足りなさを感じます。日本では使えませんが、アメリカで配布されているReader向けのソフト「Reader for Mac」では、iPhone+iTunesに近い造り込みが行われているようです。メディアの世代交代を加速させる為には、古いメディアでは得ることができなかったユーザ体験を提供することも重要なポイントになるはずなので、日本でも早々の提供を望みたいところです。

端末と比較するヒケて見える周辺環境

SONYらしい輝きを持つReaderと比較すると、取り巻く周辺環境は、輝きのにぶいものが多く物足りなさを感じます。いづれも時間が解決するような問題なので、ブラッシュアップされていくはずです。電子書籍を取り巻く状況が、一気に好転するような兆しはなく、気兼ねなく楽しめるとは言えませんが、SONYには、先駆者としての気概を持って、取り組んで頂けることを期待しています。

最後になりましたが、Reader購入後、電子書籍と紙の書籍の購入後比率は、筆者のケースでは、半々くらいです。これを、多いと見るか、少ないと見るかは微妙なところです。

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