エンジニアのためのSoulHacks

SoulHack #2 GTDで仕事を自分の「テイスト」に染めてしまおう

2008年6月16日

この記事を読むのに必要な時間:およそ 4.5 分

ネットワーク化された社会

これは,プログラミング言語やソフトウェアという特定の領域に限ったことではなくて,世の中がネットワークによってつなりやすくなっている状況から一般的に発生する状況です。

  • 道はたくさんあって100%確実な道はない
  • 道は相互につながっているので,道を間違っても進んだ分が全部無駄になるわけではない
  • 道はそこを歩む人の「テイスト」によって分かれている

ソフトウェアの世界ではオープンソースというムーブメントによって,この状況が端的に先行して表面化していますが,この状況は知識労働に関わる全ての産業において,同じように発生しつつあるのではないかと私は思います。

そして,これは企業にとって対応するのが難しい状況です。

たとえば,上記のAさんのケースですが,Aさん個人からの相談であれば答えるのは比較的簡単ですが,Aさんの勤務先の企業からの相談だとしたら,答えるのは難しくなります。

「当社は従業員を使い捨てにしたくないので,長期的な見通しで計画的に研修を進めていきたい。技術者に対してどのような研修を用意したらいいと思いますか」

こう聞かれた場合,⁠RubyとPythonとScalaの3つのコースを用意して,各人に選択させて下さい」と言えばいいのですが,それでは企業にとっての負担が大き過ぎます。かと言って,現状ではどれか一つに絞りこむ決定的な理由はありません。それがはっきりした頃になってから研修計画を立てるのでは遅すぎます。

企業は「正解」の範囲でしか動けないものですが,⁠正解」が確定した時に動くのでは間に合いません。このような将来に向けての準備を企業が統一的に行うのは難しいのです。

仕事に自分の「テイスト」を持ち込む

こういう状況の中で,マスオさんのように「仕事」「プライベート」をきちっと分けようとしたらどうなるでしょうか。

すなわち,⁠仕事に関する勉強や情報収集は,あくまで『仕事』の領域の中で行うべきものであり,それは『プライベート』とは切り話しておきたい」と望んでいては,状況が変化した時に状況に追われることになってしまいます。

常に「プライベート」の中から「仕事」につなげていけるネタを用意しておくことが,自己防衛の為に必要なのです。

Aさんが,どれか1つの言語を勉強しておいて,勉強会に参加するなどしてネットワークを広げておけば,将来,会社が「Javaの次」に移行する時に,主体的に関わることができます。たとえば,⁠次の案件は,全くの新規かつ小規模なのでRuby on Railsによる開発を顧客に提案してみたらどうでしょうか」というような提案ができるし,そのために必要な情報も人脈があれば大きな労力なしに入手できるかもしれません。

「JavaプログラマがRubyを使う時の注意点」とか「StrutsからRailsへの移行の事例」のような情報は,個人的なネットワークがあればTwitterやmixiでボソっとつぶやくだけで集ってくるかもしれません。

こういう情報は,同じような道を通っている人にとってはほとんど労力無しで入手できる情報ですが,経験がない人が自力で集めるのは大変だし,情報の取捨選択が難しいものです。お互いの情報や経験を交換できるネットワークがあるのと無いのでは全然労力が違ってきます。

そして,この時,Aさんは自分に「テイスト」が合う選択肢を会社の標準とすることも可能かもしれません。そうなれば,Aさんにとって次の開発は楽しくて,しかも成果が会社に評価されるものになります。

もちろん,仕事を自分の趣味のみで左右していいものではありませんが,会社の立場から考えてみても,この場合重要なことは「どれか一つの言語で開発実績を作りノウハウを蓄積すること」です。客観的な情勢から特定の言語を必然的に選ぶ必要があれば別ですが,⁠ネットワークでつながれた世界」を前提とすると,そういうケースの方が稀です。多くの場合,どれでもいいから一歩でも進むことが必要なのです。

だから,ネットワークや情報を持っている社員がいるなら,その社員を有効活用することが会社にとっても合理的な選択肢となるわけです。

また,そのためにはそれなりに準備が必要ですが,何より重要なのは自分の「テイスト」がどこにあるかあらかじめ知っておくことです。それは自分が動かないと得られない,検索しても得られない情報です。

著者プロフィール

中島拓(なかじまたく)

株式会社ブレーン研究部にて,Windows用ソフトウエアルーター 「PROXY-2000シリーズ」を開発する。 オープンソースソフトウエアとしては,Ruby用HTMLテンプレートエンジン Amrita/Amrita2,個人用GTD支援ソフト「レビュアブルマインド」の開発に携わる。

アンカテのブロガーとして,2006年アルファブロガーに選出される。

URLhttp://d.hatena.ne.jp/essa/

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