今回は2010年に向けてのAndroidの展望についてお話します。
人気者になれるのか?
最近Android周辺が少しずつ賑やかになって来ました。
最近,Camangi Japan株式会社からAndroid OSが搭載された7型タブレット端末「WebStation」が発表されました。一昔前であれば,こうしたタブレット型のモバイルインターネットデバイス(MID)には,OSにLinuxかWindows Mobileが搭載されていましたが,最近はAndroid OSが搭載され始めています。
図1 WebStationのホームページ。ビッグローブのAndroid専用サイト「Andronavi」のモニター端末として使用される。
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Android OSが使われ始めた理由
なぜ,Android OSが使われ始めたか考えてみます。
最初に考えられるのは,ロイヤリティが不要で,多くはApache 2.0のライセンスに準拠していることが上げられます。これはわかりやすい理由で,デバイスの販売価格にも関係します。メインでなく,補完的な役割が多いMIDの場合,メインPCのように,多くの費用をかけられないので,価格は重要な要素となり,購入の際にも大きなウエイト占めているはずです。しかし,ロイヤリティで言えば,フリーを武器に世界を席捲しているLinuxも同様です。
Android OSのアーキテクチャ
では,なぜAndroid OSなのか?を考えてみます。
1つ考えられるのが,ハードウェア層とソフトウェア層を上手く分離して,それぞれの開発に専念し易くなっている点が挙げられます。上手く分離するために,OSとアプリケーションの間に,仮想マシン「Dalvik」を設け,アプリケーション側から見れば普通のOS,ハードウェア側から見ると仮想マシンに見えるように,巧みに抽象化されています。それぞれ,開発エンジニアは異なるので,上手く機能すれば開発効率が格段に向上するはずです。
筆者は,Android向けのアプリケーション「NetaShare」を開発していますが,正にこの印象で,こうした端末のアプリケーション開発では,所々でハードウェアの差異を気にする必要があるのですが,仮想マシンがハードウェアを上手く抽象化しているためか,ハードウェアを意識することが少ないと感じています。
図2 Andoridのアーキテクチャは,developer.android.comで詳細に解説されている。興味のある方にはぜひご覧いただきたい。
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Dilvik≠Java VM
そのDilvikは,Java VMと紹介されることがあります。
これは間違いです。開発言語がJavaを用いているだけで,いったんJavaコンパイラでクラスファイルにコンパイルして,コンパイルしたクラスファイルをDalvik実行形式にリコンパイルすることでDalvikで動作するようになっています。また,Java VMとは異なり,ジャストインタイムコンパイルをサポートしていないのが特徴です。話が逸れましたが,MIDでAndroid OSが使われるようになったのは,このDilvikも一役買っているのは間違いないはずです。
GUIはどうなってる?
次に,タッチスクリーンでの操作に対応したグラフィカルユザーインタフェースの存在が考えれます。たとえば,ノキアのN900に搭載されているMaemo(Debian GNU/Linux ベース)は,iPhoneのような宝飾品のようなユーザインタフェースで,トレンドのタッチ操作やズームインタフェースを備えていますが,ようやく搭載された端末が登場したところで,多くの実績がありません。
オープンソースのウィンドウマネジャーを利用することも考えられます。
秀逸なものが多いのは間違いありませんが,GTK+,Qt,Xlibなど選択肢が多いが仇となって,バラバラでわかりづらいと印象を受けてしまいます。また,これらの中には,高解像度の画面と入力デバイスにマウス・キーボードを想定しているものが多く,タッチ操作で使うとユーザインタフェースのオブジェクトが小さく慎重な操作が求められます。その結果,ユーザはストレスを感じながら使うことになるので,ユーザインタフェースを再構築したり,チューニングする等の手間をかける必要が出てきます。
その点,Androidは,低解像度のタッチパネルと数個のハードボタン,タッチ操作を前提としてグラフィカルユーザインタフェースがデザインされているので,MIDのようなデバイスではストレスを感じることなく使うことができ,多くの手間をかけることなく製品化することができます。
Android Marketの魅力
最後,標準で添付されているアプリケーションやAndroid Marketも見逃せません。
Webブラウザやメールなど,モバイルデバイスに最適化されたアプリケーションが揃っている点や,Android Marketには,1.6万本のアプリケーションが登録されており,これも理由の1つに上げることができます。
皆が同じになる不安が…
ケータイ以外でAndroid OSが使われて始めたと言っても,人気者への道はまだ険しく,リリースされているのはものの多くは,現状から電話機能を除いてリリースしている物ばかりです。
一定品質をクリアした上で,安価であることは意味がありますが,烏合の衆では,プラットホームの魅力向上には繋がりません。かつて,Pocket PCのiPAQがヒットした時に,劣化コピーが急速に増えたことがありました。時代の潮流も関係していますが,結果,プラットホームの魅力を押し上げることはなかったので,多くのバリエーションが存在して,様々にニューズに答えてくれる,特徴的なデバイスが我々の掌に収まり,真の人気者になってくれることを期待します。