Googleケータイ、世に現る

第26回Nexus Oneは、覇者となる夢をみるのか

数年前から「gPhone」などと呼ばれ、何度か噂話が流れましたが、2010年1月5日、Googleブランドのスマートフォン「Nexus One」が発表されました。

図1 Nexus Oneのホームページ。2010年1月12日時点では、米国、英国、香港、シンガポールのユーザが購入できる。
図1 Nexus Oneのホームページ。2010年1月12日時点では、米国、英国、香港、シンガポールのユーザが購入できる。

簡単にご紹介すると、台湾HTCと共同開発を行った端末で、3.7インチ型で480×800画素(WVGA)の有機ELパネル、1GHz動作のCPU「Snapdragon」⁠米クアルコム製⁠⁠、500万画素のカメラを搭載しています。本体の厚さは11.5mmで、重さは130g。オーディオ・プロファイルに対応するBluetoothや、周囲の雑音を打ち消す「アクティブ・ノイズキャンセル」機能を備えています。

Nexus Oneは“スーパーフォン”

発表会では「顧客の要求にこたえるべく、Googleのエンジニアを結集して開発した⁠⁠、最新のハードウェアとソフトウェアを搭載したフラッグシップ・モデルで、⁠Nexus Oneは、⁠スーパーフォン⁠と呼ぶ新興カテゴリのデバイスである」としています。

なぜ自社で端末を売るのか?

Googleは、端末販売の理由を「顧客の要求にこたえるべく」としていますが、それ以上は語られていません。これからは、なぜ自社ブランドで端末販売に踏み切ったのか、筆者なりに妄想してみます。

トラクターデバイスの不在

DROIDの華々しい話が耳に入りますが、それも瞬発的で、プラットホーム全体を牽引していくような、トラクターデバイスが存在していないので、自身のブランドを付けて、トラクターデバイスを作り出す考えかもしれません。

Googleが、スマートフォンを販売開始したとなれば、多くのメディアで、アンドロイドケータイまたはGoogleケータイの名前が踊るのは間違いなので、Nexus Oneが、その代名詞になる可能性は十分に考えられます。

また、Androidチームを率いる、Andy Rubin氏は、Gineral MagicやDanger、Appleにも在籍しており、モバイルデバイスに対して思い入れの強い人物です。こうした背景を持つ人物が、手塩にかけた端末を世に送り出すこととで、象徴となる端末を作り出す狙いもあるかもしれません。

激安スマートフォンがあるか?

Googleが広告媒体として、次に狙うのがモバイルデバイスと言われています。昨年、モバイル広告の大手、米AdMobを総額は7億5,000万ドルで買収にも現れています。この買収は、広告媒体が増えないことには意味をなさないワケですが、端末販売は何かの前フリかもしれません。

その前フリというのは、極端な低価格での端末販売です。極端な低価格で拡販を行い、その後は、各々ユーザに広告を打つビジネスモデルで儲けていくというものです。

総務省の指導で見かけなくなりましたが、報奨金を付けて販売されていたようなことをすれば、販売現場では、知ったモデルで売ることができるので、イマイチ煙たがれいるスマートフォンを、喜んで受け入れる販売が増える可能性があります。 また、ユーザから見ると、ケータイと比較すると価格が高くて、購入に踏み切れないユーザに対してアプローチでき、これまでとは違うユーザ層を取り込めるかもしれません。

ただ、端末が安く入手できても、キャリアのプランが無い状態では、通信料が馬鹿にならない額になります。キャリアのプランがあっても、iPhoneでもあった、2年間の縛りの中で合計20万円程度の維持費がかかるネガティブキャンペーンに購買欲を削がれたユーザもいると思うので、端末の販売価格ではなく、維持費に対して、得意の広告モデルでアプローチしてくる可能性も考えられます。 どちらにしても、現状の端末販売は、継続していく意味を見いだすのが難しくなって来ると思うので、何らかのタイミングで舵が切られるのではないかと予想します。

iPhoneに圧勝できるか?

最後に、iPhoneに対して圧勝できるのかを考えてみます。

筆者は、善戦はするが圧勝するのは、無理ではないかと考えています。

その一番の理由は、端末の機能云々ではなく、エモーショナルな要素が少ない点です。Nexus Oneは、スマートフォンとしては、高スペックで、良くまとまった端末に見えますが、iPhoneが発表された時に、興奮して何度もビデオを見返したことを思えば、端末を操作するデモムービーを見ても「欲しい、持ちたい、使いたい」のいずれもの要素も強く感じることが無いためです。

図2 YouTubeにもチャンネルが作成されている。動作している様子はここで確認できる。
図2 YouTubeにもチャンネルが作成されている。動作している様子はここで確認できる。

筆者の先入観も関係しているかもしれませんが、利用者との距離が近いパーソナルなデバイスは、この衝動的な要素がユーザーを獲得し、ファンを増やしていく重要になると考えており、Nexus Oneには、そうした要素を感じることが少なく、良くも悪くも技術志向の強い会社が送り出した製品に写ります。

同じプラットホームでも、ソニー・エリクソンの「XPERIA X10」は、先の衝動的な要素が多いと感じており、溢れかえりはじめたiPhoneを見る度に、ため息をつくガジェットマニアや新しい提案を持つ端末が欲しいユーザなどを、派手でわかりやすいユーザインタフェースと、それにひけを取らない本体デザインでアピールするので「欲しい、持ちたい、使いたい」のいずれかを満たしてくれます。

筆者は、XPERIA X10がトラクターデバイスになるかもと期待しているのですが、皆さんの見方はいかがでしょうか?

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