VOCALOID(初音ミク,鏡音リン・レン)の上手な歌わせ方教えます!

第3回 調整のテクニック

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人間らしく

次に,ベタうちの段階から素の声を自然に近づけるための調整に入ります。前回ご紹介した通り,ベタうち状態ではかなり声がガタガタしているので,それを出来るだけ滑らかに補正する必要があります。先程のメイクの例で言えば,シミやクマなどを隠すコンシーラみたいなものですね。違和感のないサウンドに仕上げるためには不可欠な調整です。

まずはベタうち状態で再生してみましょう。ここで不自然だなぁ,と漠然に思っているだけでは何も始まりません。調整するためには「どこがどのように不自然なのか」を見極める必要があります。では実際によくある不自然さを作り出す原因と,それをどのように自然にしていくかを見ていきましょう。

1. 音量のバラつき

DYNもVELも何もいじっていない無調整の段階でも,発音や音程,前後の言葉のつながりで音量にバラつきが出来てしまうのはVOCALOIDではよくあることです。まずはこれを補正する必要があります。補正にはDYNの調整を行います。

調整の際は聞こえ方を最も重視してください。ただ単に,ここはフォルテだからDYN高め,ピアノだからDYN低めにすればいいというのは間違いです。DYNはほかのパラメータとは違い,いじりすぎることで声が不自然になってしまうことが少ないパラメータです。この音だけ大きすぎる!と感じたら大胆にバッサリ下げてしまいましょう。また,小さすぎると感じた場合も,不自然さが無くなるまでDYNの値を上げて調整します。視覚的に値だけ見て「これいじりすぎじゃないかな」と思うようであっても,聞こえ方を最優先してください。

また,前回ご紹介したとおり,ノート発音中はなるべく離散的な値の変化を避け,離散的な変化はノートのつなぎ目だけにするようにしてください。

DYN未調整

DYN未調整

(シンガー:リン)

この例だと最後の「da」の音だけが明らかに大きいです。私は以下のように調整しました。

DYN調整済み

DYN調整済み

(シンガー:リン)

なお,音量のバラつきについてはリンとレンについて顕著に見られます。リン・レンにこの調整をひとつひとつ施していくのはかなり骨の折れる作業です。そこでWAVに書き出してから調整する裏技をご紹介します。

VOCALOIDには打ち込んだノートをそのままWAVに書き出す機能がついています。ファイル→書き出し→WAVを選択すると直接WAV形式に書き出してくれます。ここで生成したWAVに,あるエフェクトをかけることによって音量のバラつきを解消することができます。そのエフェクトがコンプレッサーです。恐らく大抵のWAV編集用のソフトにはコンプレッサーエフェクトがインサーションエフェクトとして入っているはずです。

本来このコンプレッサーというエフェクトは,ダイナミクスレンジを詰めることによってマージンを作り,最終的に音圧を上げて音に迫力を持たせる用途で使われます。簡単に言えば「大きい音だけを圧縮して出来たスペースの分だけ音量上げられるようにする」わけです。ここで重要になるのは「大きい音だけを圧縮してくれる」という部分です。

大きい音だけを圧縮してくれるということは,結果として強弱の差(=ダイナミクスレンジ)が少なくなるということです。なので,結果として音量のバラつきが補正され,自然に聞こえるようになるわけです。

しかしこの処理を施すことによって,意図してつけた強弱まで損なわれてしまうので,意図した強弱を残したい場合はコンプレッサーの各パラメータの値を調整することで均衡をとる必要があります。コンプレッサーのパラメータについてはこの講座の範囲外になってしまうので省略させていただきますが,私の場合はコンプレッサーを使う場合,曲中でトラックのフェーダーを操作することにより強弱を付けています。

2. 発音の補正

続いては発音の補正です。発音も音程,テンポ,音のつながりで様々に変わり,自分の意図しない発音になってしまう場合も多くみられます。ただ,発音に関しては調整が非常に困難な場合も多く,ある程度の妥協もしなければ先に進めません。あまり一つの箇所にこだわりすぎて力尽きないように注意してください。前回言ったとおり,モチベーションは貴重なエネルギー源です。無駄遣いはいけません。

発音の悪さを解消するにはいくつかのテクニックがあります。その中でも一番実用的で効果が見られるのが子音と母音を分割する方法です。これは音を伸ばしたときの発音が悪いときに特に効果を発揮します。また,この手法は音の繋がりが悪いときにも有効な場合があり,総合的に見ても非常に重要なテクニックです。

発音無調整

発音無調整

(シンガー:リン)

この例では,このように調整しました。

発音調整済み

発音調整済み

(シンガー:リン)

最後の「i」は母音を二個に分割しました。

次に,多少強引ではありますが,ほかの音程で打ち込んであとから無理やりピッチを合わせるという手法もあります。既に言及しているように,発音は前後の音程によって変わります。試しに違う音程で打ち込んでみて発音が解消されるようであれば,この方法で発音の悪さを解消することができます。音程を合わせるときはPITとPSBをいじります。パラメータについては前回一通りご紹介しましたが,PITとPSBの関係について改めて,詳しくご説明しようと思います。

世の中で耳にする音楽の多くはド,ド#,レ……ラ#,シの12の音階で構成されています。しかし実際には半音の半音,半音の半音の半音というように音階は無限にあります。ピアノの鍵盤では表現することの出来ない,そのような中間の音程を表現するためのパラメータがPITです。そしてそのPITの効きを調整するパラメータがPBSです。具体的には,PBSで設定した値がPITでいじることの出来る最大範囲になります。例えばPBSの初期設定は2です。この状態でPITを最大値にすると音程が+2,最小値にすると音程が-2になります。お馴染みのカラオケの移調機能と同じように,ここでは半音を1と表現しています。つまりド+2=(レ⁠⁠,ド-2=ラ#となります。

つまり本来の音程から-2で打ち込んで発音が解消されたら,その下げた-2の分をPITとPBSを使って補正してあげればいいわけです。ただし,-8みたいに幅を取りすぎると声の質自体が変化してしまうので注意が必要です。

3. 音程の補正

最後に音程の補正を行います。細かいフレーズや,極端に音程が離れているフレーズを歌わせようとすると,音程を外してしまうことがありがちです。そういう場合にはPBSを最小にしてPITで微調整を行います。

また,VOCALOIDはデフォルトの状態で歌わせると微妙に音程がずれてしまうという特徴があります。具体的に言うと,特に中音域の音程で音程が低いと感じることが結構あります。微妙といっても本当に微妙なケースが多いので,かなり音感が鋭い人ではないとずれているかどうかの判断が厳しいです。それにずれている分をいちいちPITで修正するのはかなりの手間になります。

ここで再びWAVに書き出したあとに編集する裏技の登場です。ボーカルの周波数を解析,表示,補正を行えるauto tuneという便利なツールがあります。これを使うことによって微妙にずれた音程を補正することが出来ます。私がオーディオの編集などに使っているSONAR 6 Producer EditionというソフトにはV-Vocalというauto tuneが搭載されており,クリック一つで音程の補正をすることができます。

V-Vocal操作画面

V-Vocal操作画面

このひと手間を挟むだけで,コーラス時のハーモニーなども格段に良くなります。

著者プロフィール

OSTER project

音楽好きなただの大学生。ネットを中心にDTMで制作した楽曲を公開。リスナーに楽しんで貰える遊び心いっぱいの楽曲作りを心がけている。

VOCALOIDと可愛いものと辛いものが大好き。

URLhttp://fuwafuwacinnamon.sakura.ne.jp/