『組込みソフトウェアエンジニアのためのハードウェア入門』Part5「測定器、使えてますか?」PDFファイルを無償公開――放射線量などの環境計測を始めたい方を支援

このたび、2011年3月11日の東日本大震災の被害の全貌もまだ明らかになっていない当日夜、福島原発にトラブルが発生し、近隣の住民に避難指示が出されました。トラブルは日を追うごとに深刻化し、避難指示の範囲は現在も拡大される一方です。相次ぐ余震により、放射線の閉じ込め作業はなかなか進展しません。

また、福島県とその周辺の農作物や魚からは放射性物質が検出されています。東京都でも、水道水から微量の放射性物質が検出されてミネラルウォーターの買い占め騒動が起こりました。福島県や北関東の数県では、農業や漁業に関わる人が風評被害によって作物や水揚げを出荷できなくなるという問題も発生しています。さらに日本は、放射性物質を環境に放出している国として国際的に批判を受けています。問題は、日本人が生きることのありとあらゆる側面に拡大しつつあります。

この状況を受けて、自分で放射線量などの環境計測を行おうとする方々が増えました。また、それらのデータを集計して、公式発表によらずに、自分を守るのに必要な情報を得ようとする方々も増えました。

デジタル時代の現在、あらゆる測定の世界で、ボタンを押せば何らかの測定結果を表示してくれる測定器が主流となっています。そのような測定器を用いれば、測定器のしくみや測定原理をまったく理解していなくても、何か測定結果らしきものを得ることができます。しかし測定は、一般的に、それほど生やさしくなく、一筋縄ではゆかない困難な行為です。その困難さは、⁠測定を行う」という行為そのものが含んでいる宿命に近いものです。また、測定結果をどこまで信用してよいか・その理由はなぜかなど、常に考えていなくてはならない問題も数多く存在します。自分の生命や生活を守るための測定であれば、なおさら、その測定の正しさの程度に問題意識を向けることは重要です。

放射線測定の場合には特に、⁠測定装置そのものの劣化」という重要な問題も考慮する必要があります。そのあたりに転がっていた古い線量計を自衛のツールとして役立てることは十分に可能なのですが、そのためには若干の知識と知恵が必要なのです。

この状況に鑑み、過去に技術評論社から出版させていただいた拙著『組込みソフトウェアエンジニアのためのハードウェア入門』のうちの一章「測定器、使えてますか?」のPDFファイルを無償で公開し、これから測定に取り組もうとされる皆様に、必要な予備知識と考え方を得ていただきたいと考えました。題材としているのは電気測定ですが、測定一般に広く共通する内容です。

書籍情報

画像
『組込みソフトウェアエンジニアのためのハードウェア入門』
中根隆康, 後閑哲也, みわよしこ 著

公開パート

Part5「測定器、使えてますか?」
みわよしこ 著

本書の想定読者層は、ハードウェアに苦手意識のあるソフトウェア技術者ですが、本章を読むにあたって必要な予備知識は、小学校高学年レベルの算数と理科です。中学2、3年以上の方でしたら、問題なくお読みいただけると思います。

本章を、市民の皆様の測定のレベルアップに役立て、不安の多い社会の不安材料のかずかずを「正しく怖がる」ための一助としていただければ幸いです。また、ご近辺に「これから測定にチャレンジしてみようと思う」という方がおられましたら、本PDFファイルの一読を勧めていただけますと幸いです。

本書には、後閑哲也さんによるデータロガー作成記事も収録されています。自動測定やデータロギングにも取り組んでみたいと考えておられる方には、お手元に置いておくと何かと便利な一冊であろうと思われます。もしよろしければ、ご購入・必要とされている方々へのご寄贈などもご検討ください。筆者として、すべてのご質問に個別にお答えすることはできませんが、疑問点などをwaruiko.miwa@gmail.comにお知らせいただければ、次のより良い一冊への励みとなります。

最後に、今回のPDFの公開を快諾くださいました技術評論社の皆様、共著者の後閑哲也さん、中根隆康さんに、心より感謝申し上げます。

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