[特別広報]IPとITが融合する新プロジェクトが始動! エンジニアよ、KADOKAWAで世界を目指せ

第1回KADOKAWAが目指すIP×IT―知的財産と情報技術の新戦略[前編]

KADOKAWAは、IT企業であるドワンゴと経営統合し、出版を中心とするコンテンツとITの2つの文化を持つ企業です。独自の強みとなる小説やアニメなどの知的財産(IP)をITというデジタルの力で変革し、付加価値を高めようとしています。その背景や目指す世界について、同社のデジタル戦略推進局 エグゼクティブプロデューサー 宮崎賢一氏写真1⁠、Web戦略室 カクヨム編集部 編集長 河野葉月氏写真2⁠、デジタル戦略推進局 サービス企画部 ECサービス企画課 課長 小野大氏写真3にお伺いしました。

KADOKAWAが目指す IP×ITの新戦略

─⁠─KADOKAWAでは、IPとITを組み合わせた戦略があるそうですが、まずは背景から教えてください。
写真1 デジタル戦略推進局
エグゼクティブプロデューサー
宮崎賢一氏
写真2 デジタル戦略推進局 エグゼクティブプロデューサー 宮崎賢一氏

宮崎:IT業界を見ると、日本は海外IT企業、たとえばGoogle、Apple、Amazon、Facebookにまともに挑むのは難しい状況です。日本のITは公共料金のコンビニ決済や社会インフラで強みがあるものの、近年中国で急速に電子決済が普及してきて追い上げられてきています。こうしたなかで日本が世界でどう戦うかを考えたとき、日本はアニメを筆頭としてIPが強いと考えています。IPとITを組み合わせれば、これからも戦えると思いました。

─⁠─IPと組み合わせるとき、ITやインターネットはどんな強みを活かせるでしょうか。

宮崎:インターネットは遠くの人とつながることができて、人間の生活を豊かにすることができます。やはり人間にはコミュニケーションが必要なのだと思います。新しいインターネット技術を使えばメディア間のインタラクティブ性が生まれます。テレビからインターネットという一方通行だけではなく、インターネットからテレビという流れも加わり、双方向になります。今は「アニメで人気が出たからVRに」など、まだIPとITの組み合わせは中途半端です。IPは複合的に技術を組み合わせることで新たなデジタル化の可能性があると考えています。私はドワンゴで映像や書籍とITを組み合わせる事業を経験してきましたが、KADOKAWAはKADOKAWAで独自の進化を目指していけると思います。

編集者とエンジニアがコラボした小説投稿サイト

─⁠─IPとITの組み合わせと言えば、KADOKAWAにはカクヨムがあります。
写真2 Web戦略室 カクヨム編集部
編集長 河野葉月氏
写真2 Web戦略室 カクヨム編集部 編集長 河野葉月氏

河野:カクヨムは小説を投稿し、無料で読めるサイトです。編集者と外部のエンジニアさんとで協力して2016年2月にサイトをローンチしました。弊社としては、このサイトから強力なコンテンツが生まれてくれればいいなと願っています。

─⁠─編集者とエンジニアが密接に協力して構築したサイトなのですね。

宮崎:KADOKAWAとドワンゴの経営統合には「編集者の隣にエンジニアがいるという状態を作りたい」という思いもありました。⁠神は細部に宿る」と言いますよね。IPをデジタル化するとき、細かな使い勝手や機能次第でIPを生かすも殺すもできてしまいます。デジタル化が進むなか、我々も変革していかないといけません。

─⁠─エンジニアが編集者のそばにいると何ができるのでしょうか。

宮崎:たとえば、アニメの制作現場にエンジニアが混じれば、アニメのコンテンツと連動した何らかの機能を開発できるかもしれません。既成概念のない存在がIPを生み出す場に混じることで、新しい発想でコンテンツを発展させることができると思います。作品作りのプロとそれをデジタル面で活かすプロという関係が生まれるかと。

─⁠─編集者とエンジニアが協力する現場はどうでしたか。

河野:私はずっと紙の編集者で技術的なことはわかりません。カクヨムはKADOKAWAとはてなさんの共同開発として進めてきました。当初はやりたいこととできることが噛み合わず、コミュニケーションを重ねました。私の頭には「評価される作品がサイトの上に表示されるようにしたい」などの理想像があるのですが、技術的にどうすればいいかわかりませんでしたので、そこをエンジニアさんに提案してもらいました。

図1 小説の編集者とITエンジニアが一体となって開発した小説投稿サイト「カクヨム」
図1 小説の編集者とITエンジニアが一体となって開発した小説投稿サイト「カクヨム」

編集者とエンジニアのカルチャーギャップ

─⁠─考え方などのギャップもあったのでは。

河野:バックボーンが異なるので視点も意識も違うと何度も実感しました。私たちはユーザーさんや作家さん、あるいは書籍化する編集部を見ながらサイトを構築していこうと思う一方、エンジニアさんたちは労力と効果を比べながら作業優先度を考えていました。驚いたのは、共通の目標を達成する際にも、アプローチがまったく異なる点です。こちらでは気づかない点を指摘してくれることもありました。こちらはかかる労力がわからないまま、サイトをリッチにしようとしていたのだと思います。エンジニアさんたちに「またあの人たちは論理的ではないことを言っている」と思わせていたかもしれません(笑⁠⁠。

─⁠─とくに大きなギャップを感じたところはどこですか。

河野:「固まらない状態」を理解するのに時間がかかりました。紙の本には「ベータ」という概念はありません。完璧な状態にしてから世に出すのが当然という感覚です。しかし、Webではサイトやサイトに掲載する文章のレイアウトもざっくりしていて、カルチャーショックでした。

─⁠─一緒に作業することに意義があるのですね。

宮崎:対等な立場って大事だと思うのです。SIerを使うなら、KADOKAWAはユーザー企業で外注先に要望を出す形になります。そうした体制も悪くないですが、どちらもKADOKAWA内部の人間なら対等な立場になります。リアルに強い編集とデジタルに強いエンジニアが本当に対等な状態で作品作りに取り組んだ事例はまだありません。どちらもプロなのでプロどうしがぶつかると何かが生まれると思います。

異なる文化を合わせると世の中は変わっていく

─⁠─宮崎さんは編集者とエンジニアの違いをどう見ますか。

宮崎:私はエンジニアなので「⁠⁠細かい表示など)そこ気にするの? 合理性ないよね。デジタルならこうする」と考えます。個人的には、アニメも本もデジタルに比べれば歴史が長いので、しがらみが多いと感じました。私から見て、出版社は歴史があるので編集者は大人、IT業界が若いのでエンジニアは子どもというイメージです。子どもは無茶をしがちで、リスクがわかる大人が止めるのですが、子どもが無理をしても大きな問題が起きないこともあります。大人と子どもが一緒にやることでぎりぎりのところを攻めていけると思います。

─⁠─異なる存在がぶつかると予想外の化学反応が起こりそうです。

宮崎:少し前まで映像の見放題サービスはありませんでした。コンテンツにはがちがちに権利許諾の制限がかけられていて、使い勝手も良くありませんでした。ところが「楽天ShowTime」から流れが変わりました。積み重ねがある文化と自由な文化が組み合わさると、世の中はどんどん変化していくということです。

─⁠─どんなエンジニアがKADOKAWAで活躍できるでしょうか。

宮崎:何よりもIPが好きで、世界にIPを発信していきたいと思う人であることが重要です。ドワンゴなら技術を高めることに貪欲な人が向いていますが、KADOKAWAなら技術を用いて世にエンターテインメントや知識を提供していきたい人が向いていると思います。それからIPという日本の強さをもって、海外勢とガチで戦いたい人だといいですね。

─⁠─スキルで言うと何になるでしょうか。

宮崎:どういうバックグラウンドでもいいと思います。IT企業に比べてKADOKAWAだと多様性がありますので、デバイスドライバの開発者、Webやゲームの開発者、SIerでプロジェクト管理していた人でも活躍の場はあります。

Webの変遷を振り返る─⁠─これからIPを生み出す場に

─⁠─小野さんの経歴を教えてください。
写真3 デジタル戦略推進局
サービス企画部 ECサービス企画課
課長 小野大氏
写真3 デジタル戦略推進局 サービス企画部 ECサービス企画課 課長 小野大氏

小野:最初はアスキーにバイトで入り、今で言う営業部の部材管理をしていました。返品物が積まれた倉庫で棚卸しをしながら、内心で編集部に悪態をついていましたが、何の因果か編集部に移りまして(笑⁠⁠。⁠がんばっても返品は来るよね」と考えを変えました。後に編集部が雑誌のホームページを作るようになるのですが、編集者は20文字ごとに<BR>(改行タグ)を入力しがちです。Webの知識があればそれは不要とわかります。当時はまだ編集者のそばにWebの専門家はいませんでした。いたら「ここはこうすればいいですよ」と基本的なことを教えてくれたでしょう。担当していた雑誌が休刊になると、ケータイサイトの運営や管理にも携わるようになりました。

─⁠─紙とデジタルの両方を経験していますね。

小野:紙は出したら解放され「飲みに行くぞ」と休むことができます。しかしWebは出すまでもたいへんですが、出してからも「ちゃんと動いているか?」と心配してしばらく張り付いていたりします。⁠出しても終わらない」が大きなギャップでした。

─⁠─これからはどう変わるのでしょうか。

小野:先ほど宮崎が言ったように、IPは一方通行ではなくなります。またWeb発の小説だといったん公開したあとでも、好きなときに改稿できます。書籍化のタイミングで内容が変わることも起こりえます。もちろん、作品をより良くするためですよ。編集者から見るとすごく画期的です。Webは一方通行から双方向へ、そしてIPを作り出す場へと変わっていきます。

─⁠─技術的にはどうでしょうか。

小野:デバイスがガラケーからスマートフォンに変わったところが大きいと思います。かつてはガラケーでは十字キーでカーソルを動かすなど、不便さを乗り越えてコンテンツに到達していました。今はタップで移動し、便利な機能を提供できるようにしなくてはなりません。サイトもコンテンツ提供者もユーザーに寄り添う必要があります。発信する内容が同じだとしても。

宮崎:今はバズワードのIoTにもコンテンツが絡む可能性があります。フィギュアが声を出すとか。ネットにつながるモノにコンテンツを組み合わせるなら、いくらでも発展できそうです。これからKADOKAWAはそうしたIPとITを組み合わせるプラットフォームを作ろうとしています。そのための部署も立ち上げています。

KADOKAWAはデジタルでリアルも伸ばし世界と戦う

─⁠─IP のデジタル化が新たな段階へと進みそうです。

小野:IPのすべてがデジタルに置き換わることはありません。⁠チャンネルを増やす」という表現がふさわしいかもしれません。たとえばニコニコ動画なら、再生中の動画の下にアイテムを表示できます。これを可変として、オープニング再生中に、その曲の販売リンクを表示すれば買う人がいるかもしれません。IPを変換するというより、既存のものも含めて価値を最大化へ。そのためにITの技術を使ってIPへリーチさせるのが私たちの挑戦だと思っています。

宮崎:KADOKAWAだとリアルも伸ばしていこうと考えています。たとえば、書店で本を手に取ればVRで何らかの特典コンテンツを楽しめるなど、書店に足を運びたくなるような機能があればおもしろいと思います。KADOKAWAと組んだ書店が世界に展開していく流れを作ることもありうるかもしれません。

─⁠─エンジニアがIPを生み出す現場に来たら、新しい経験ができそうです。

宮崎:経験が浅いエンジニアだと、方法論とか細かいことに傾倒してしまいがちです。コードがきれい、設計がきれいというのはエンジニアとして当たり前です。これらができるエンジニアはわざわざ声高に言いません。言っているとしたら二流、三流です。一流は当たり前のことをこなせて、ほかのところで戦う、あるいはプロダクトアウトができて本当の一流なのです。私はエンジニアに「コードのきれいさ」など小さな世界にとどまってほしくありません。KADOKAWAという成熟した環境に来て、新しい経験をして視野を広げ、世界と戦う経験をしてもらいたいです。

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KADOKAWAでは、各種エンジニアを募集しています。詳しくは、
http://ir.kadokawa.co.jp/recruit/
をご覧ください。

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