「クラウドは複数利用が当たり前になる―クラウド管理の老舗、RightScale CEO が語るクラウドの近未来」Michael Crandell氏インタビュー

クラウド管理プラットフォーム「RightScale」をSaaS(Software as a Service)として提供するRightScaleのCEO、Michael Crandell氏が1月17日、提携するクラウドサービスプロバイダ⁠株⁠IDCフロンティアの主催するイベントで講演を行いました。ここでは同氏へのインタビューをお届けします。

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RightScaleが提供するサービスについて教えてください。

RightScaleは、IT業界にクラウド管理という新しいカテゴリを作りました。企業が動かしたいのはあくまでそれぞれのアプリケーションであり、クラウド上のサーバ自体を起動したいわけではありません。そこでRightScaleは、ユーザアプリケーションと、サーバが稼働するインフラとなるクラウドサプライヤの中間レイヤとして、クラウドの機能を自動的に利用できるようにします。たとえばRightScaleのオートメーションエンジンは、モニタリングやアラート、オートスケーリングなどを提供します。コンフィギュレーションフレームワークは、動的なコンフィギュレーションをサーバテンプレートと呼ぶ技術で実現され、OSやクラウドの利用形態をテンプレート化して、サーバの起動時に動的にそれを適用可能にします。またアクセスやセキュリティ、ロギングなどを制御するガバナンス機能や、マルチクラウドマーケットプレイスという機能もあります。これはMySQL、Zend PHPなどのオープンソースソリューション、IIS WebサーバのようなWindowsソリューションなど、パートナー企業によって作成されたものがAppStoreのように利用できるものです。

日本での今後の展開について教えてください。

昨年11月に⁠株⁠IDCフロンティアとのパートナーシップをアナウンスしました。日本国内のコンプライアンス、ガバナンスに精通している同社との協業は非常に重要と考えています。国内に3つの地域で大型のデータセンターを持ち、それぞれ高速に接続されています。同社の提供するクラウドサービスは、ディザスターリカバリのような多重化させたシステム環境を単独で実現できるのも優位な点です。こうしたパートナーシップを重視しています。

RightScaleのサービスはAmazon、IDCフロンティア、Rackspace、OpenStackなどさまざまなパブリック、プライベートのクラウドに対応しています。Googleにも対応する予定はありますか。

現在提供しているサービスにはIaaS APIが必要です。将来的にGoogleがAPIを提供すれば、サポートすることになるでしょう。

RightScaleは、2006年と、クラウドサービスベンダとしてはかなり早い時期にスタートしています。起業の経緯を教えてください。

私と、ほかに2人いるRightScaleのファウンダーは、Amazon Web Servicesが登場したとき、それぞれユーザ企業としてAmazonのサービスを使い始めました。Amazonの登場は我々にとって非常に大きなものでした。その頃私はeFax.comの副社長でしたが、同社はそのとき、全米約40カ所のデータセンターを利用しており、ハードウェア、電気代、人件費などのコストが非常にかかっていました。それがAmazonによって、著しく簡単になり、コストが下げられるようになりました。ただ実際に使い始めると、エンドユーザの立場からするとAmazonで提供しているものと我々のニーズのギャップが非常に大きかったのです。その埋め合わせをする機能の開発が、RightScaleのサービスのきっかけになりました。

また、弊社のCTO Thorsten von EickenとAmazonのCTO Werner Vogelsはもともと共にコーネル大学で教鞭をとっており、昔ながらの付き合いがありました。そのためAWSを早い段階から使う機会を作ってくれたという背景もあります。クラウドという言葉が存在していなかったころから棲み分けができるような人間的なつながりもあったのです。

クラウドコンピューティングは今後、どのように進化していくと思いますか。

まず、企業にとってクラウドが「要求」になってきます。これまではクラウドを「やる/やらない」という議論でしたが、運用コストなどを含めて必須のものになってきました。

また近未来の予測としては、⁠ハイブリッドクラウド」がもっともポピュラーになるでしょう。複数のパブリッククラウドを用途によって使い分けるようになるわけです。たとえば日本国内のサービスはIDCフロンティアのクラウド、海外向けサービスはAmazonを使うとか、顧客データやコンテンツ関係などに関するミッションクリティカルなアプリケーションはプライベートクラウドを利用し、実際の運用はAmazonを使うとか、プライベートクラウドで基幹業務を動かしながら、年末商戦の際にはIDCフロンティアのクラウドをその期間利用するとか。実運用はプライベートクラウド、開発やテスト、QAをパブリッククラウドでやるとかそういった使い分けです。これまでは技術的な観点から、プライベートクラウドはこう、パブリッククラウドはこうというトポロジーとしての定義はありましたが、使い分けとしてのパターンが出始めており、それがおそらく常識化するということです。

また、IaaSとPaaSの定義が、これまでは別の存在でしたが、だんだん重なり始めてくるという点も挙げられます。IaaSとPaaSの違いが何かということは説明できますが、違っているべき理由は何もありません。2つあわせて一つの企業のアプリケーション、IT運用環境を提供することとして扱われ始めるでしょう。一例としてはたとえばPHPのZend開発ツールがありますが、RightScaleは、これをどんなクラウドプラットフォームでも動かせるようにするサーバテンプレートを用意しています。もう一つの事例は、VMwareがオープンソース化しているCloudFoundryのようなPaaS。さまざまな言語、さまざまなサービスをVMwareはさまざまなクラウドで動かすと言っていますが、実際の実装は、VMwareの環境に限定されています。RightScaleは、CloudFoundryをAmazonで動かすサーバテンプレートをベータ版で出しています。次の世代のPaaSはIaaSとの連携により、どこで動かすかを指定することができるようになるでしょう。

また、現在はすべてのクラウド関係の動きが、標準化がまったくない状態で推移しています。今後、誰かが全体をマネージする必要性が出てくる中で、RightScaleの位置付けも大きな役割を果たすと考えています。

RightScaleにはエンジニアの仕事を自動化してくれる機能があります。開発環境にしても運用環境にしてもさまざまなものが自動化されることで人手がかからなくなり、エンジニアの需要が減るということはないでしょうか。

エンジニアの職種は非常に多岐にわたるノウハウの集積だと思いますが、RightScaleの存在がエンジニアの仕事をとるというようなことはまったくないですし、RightScale上で動くアプリケーションの開発がもちろん必要なのは今後も当然、変わることはないでしょう。一つ考えられることとしては、マシン構築の部分がサーバテンプレートによって自動化されるということはあります。一台一台マシンのLAMPスタックをインストール、セットアップ、属性設定するといったことは自動化されるのですが、それを自動化することで大幅に品質とスピードが上げられます。サーバテンプレート自体は単にLAMPスタックを作ることをスクリプト化するだけでなく、起動の手順、運用時にどんなイベントが起きたらどういう反応をするか、あるいは停止時の手順も記述できます。そしてそこに実はシステム運用のノウハウがあります。エンジニアがそれぞれ独自にもっており、ある意味ではエンジニアとして非常に差別化要因になるノウハウですが、それをサーバテンプレートに埋め込むことによって、ある意味ではノウハウを製品化することもできます。サーバテンプレートは現在、6万個登録されています。それらのサーバテンプレートには非常に多くのノウハウが盛り込まれていて、これはプログラミングツールとは異なるものですが、オペレーションノウハウのスクリプト言語と言えます。エンジニアのノウハウと知識と才能を活かす場が提供できると考えています。エンジニアが職人芸的にやってきた部分をテンプレート化することによって、職人芸から一つのビジネスに変えることができる。これはおそらくエンジニアの方にも興味の持てる分野になるのではないかと思います。

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