インタビュー

お客さまと同じ立場に立ち共にサービスをよくしていく――お客さまのマインドまでも変えていく大規模システムでのUXデザインへのチャレンジ

この記事を読むのに必要な時間:およそ 3 分

お客さまにデザインの価値を感じてもらうためには,実際に一緒にプロジェクトをやってみること

実際,どのようにプロジェクトを進められているのか,お客さまの新しいサービス体系のリリースに関わった事例を伺いました。

プロジェクトのはじまり

NTTデータでは,⁠デザイン」は顧客の新しいニーズに応えるための,大きな手段だと考えられているそうです。提案時には,具体的な活動のイメージを膨らませてもらうため,風間氏も営業に同行します。この事例では,お客さまの話に耳を傾けた結果,⁠単にシステムを作るだけでは,お客さまの最終的な目標に到達するのが難しそうだった」と判断し,プロジェクトの開始準備をしました。また,ユーザ体験を中心に取り組んでいきたいというお客さまの希望もあったため,小さく施策を考えていくことになりました。

「デザインの価値を感じてもらうためには,プロジェクトを実際にやってみることが一番重要だと思います。お客さまがデザインの思想を取り込みやすい方法は何かというところが,一番の鍵ですね」⁠風間氏)

エンドユーザに関する情報収集

プロジェクトを開始するにあたって,まずは情報収集からはじめたそう。⁠お客さまの社内でも,ユーザインタビューやアンケートは実施されています」と風間氏。すでにお客さまが取得している既存の調査結果を,どれだけ活用できるかがポイントです。相対する部署以外にも,複数の事業部を巻き込み,現状の契約者数など散らばっている情報をかき集めました。

併せて,新しいサービス体系の位置付けなど,お客さまのビジネス戦略や商品開発の思いなども集めました。一方,新たな調査として,新しいサービス体系を促進する仮説を立案するために,ユーザインタビューを行いました。

仮説づくり

このような情報を元に,エンドユーザがどのような体験を得られるのか,具体的な仮説を検討していきました。

まず,既存のサービスのユーザ層など,事実情報から対象とするターゲット像を描きます。そして,どのように価値を届けるのか,新しいサービス体系を知るきっかけや,サービスが欲しくなるタイミングなど,いくつかのユーザストーリーを描き,その後,関係部署の方を対象にワークショップを2回開催し,サービスの仮説を形づくっていったそうです。

プロトタイピングと仮説検証のためのインタビュー

そのあと,UIデザイナーやお客さまと共にプロトタイプを検討しました。PC版とスマートフォン版のプロトタイプの検証として,それぞれ6人ずつ,実際にユーザ候補にプロトタイプを操作してもらい,デプスインタビューを実施。

「2回目のインタビューは,我々の仮説の検証という意味があります」と,風間氏は1回目のインタビューとの違いを述べます。ユーザストーリーが現実的かというUXの側面と,情報の構成というUIの側面の検証を行っているわけです。

「検証のサイクルを小さく回すことを意識している」と風間氏。なぜなら,大きなサイクルの最後でユーザから予想外の反応があった場合,手戻りの影響範囲が大きくなってしまうから。お客さまにとっても労力が無駄になってしまいます。

「自分の会社のサービスであれば,どれだけ大きな失敗でも弊社だけで何とかすればいい。我々はBtoBtoCの会社なので,お客さまのビジネスも考えたうえでデザインに取り組もうとすると,この進め方が合っていると思います」⁠風間氏)

課題の改善

インタビューの結果,メイン導線以外のページ間をスムーズに行き来できず,迷子になってしまうことがわかりました。インタビューによって,エンドユーザがどの段階で,新しいサービス体系を認知し,何を疑問に思い,どのような情報を必要としているのか,思考回路が見えたそうです。また,PC版とスマートフォン版で,与える印象が全く異なることに,このとき気が付けたとのこと。検証でわかった課題を洗い出し,改善方針を検討していきました。

システム作りにおいて,デザインプロセスの理解が得られにくい中,なぜ2度もインタビューに組み込めたのでしょうか。⁠お客さまがデザインに一番求めているのは,開発者の目線でも会社の目線でもなく,エンドユーザの目線であるというのが一番大きいです。」と,風間氏はその理由を語ります。リリース後も,お客さまとサービスに寄り添い,改善の活動を続けています。

画像

人間中心設計の資格取得が新たな学びや,社内の動きを促進していくエネルギーのひとつになる

風間氏が人間中心設計の資格を見つけたのは,デザイン分野へと進んだ際に,身に付けるべきスキルセットの参考として資格を探している最中でした。当時は受験資格を満たせませんでしたが,⁠プロジェクトで経験を積み,ユーザの体験を設計することが,自分がプロフェッショナルとして持つべきスキルだと見えた段階で,資格取得を考えました」と,風間氏は取得のきっかけを振り返りました。人間中心設計スペシャリストの申請書類を書くことで,それまで案件で実践してきたことが言語化されたことも印象的だったと話します。

「資格を得ることが目的でしたが,それ以上に受験する期間も学びになりました。今までの取り組みを整理するきっかけになりました。自分のスキルを別の観点から見ることができるので,チャレンジする価値はあると思います」⁠風間氏)

資格取得は,社内でサービスデザイナーの認定を受けるための武器になりました。自身のスキルは,公にも認められたものだという裏付けとして活用できたのです。人事部に対しても,人間中心設計の大切さと,お客さまからのニーズを証明できました。資格取得は,社内の動きを促進するひとつのエネルギーになり,今ではさまざまな事業部からデザインの取り組みが新たに出続けています。

「もっといろいろな人がデザインの魅力に気付いて,エンドユーザにサービスを届けられる人がもっと増えれば,魅力的な企業になります。IT業界の中でも,特色を持った会社になれる可能性をデザインに感じています。⁠この会社でのデザインというのは何か⁠を,率先して考えられる人材になっていけたら,と考えています」⁠風間氏)

インフラエンジニアから転向した当時は,キャリアのひとつの選択肢くらいの感覚だったデザイン分野でしたが,⁠今では自分のアイデンティティ」と風間氏は語ります。デザインに関わる人たちの思いを見聞きするなかで,思いが強くなっていきました。その思いは,人間中心設計と自社の強みをかけ合わせることで,もっとおもしろい世界が見えそうだという確信に変わっています。

人間中心設計専門家・スペシャリスト認定試験

あなたも「人間中心設計専門家」⁠人間中心設計スペシャリスト」にチャレンジしてみませんか?

人間中心設計推進機構(HCD-Net)「人間中心設計専門家」⁠人間中心設計スペシャリスト」は,これまで約1200人が認定をされています。ユーザエクスペリエンス(UX)や人間中心設計,サービスデザイン,デザイン思考にかかわる資格です。

人間中心設計(HCD)専門家・スペシャリスト 資格認定制度

受験申込2020年11月20日(金)~2020年12月4日(金)
主催特定非営利活動法人 人間中心設計機構(HCD-Net)
応募要領資格認定制度について(人間中心設計推進機構のサイトが開きます)

著者プロフィール

森川裕美(もりかわひろみ)

UI設計とフロントエンドをつなぐひと。

RIA開発に憧れ2009年よりエンジニアキャリアをスタート。HTML5の黎明期からWebフロントエンドのR&D業務に関わったのち,新規事業や業務システムを中心に,シナリオ設計からIA,プロトタイプ開発,ユーザビリティテストまで一貫してUI設計業務に従事。現在はアジャイル開発の推進を行う。HCD-Net認定人間中心設計専門家,Scrum Alliance認定スクラムプロダクトオーナー。


羽山祥樹(はやまよしき)

時代の3歩先をねらうWeb屋さん。

1996年からインターネットに触れる。Webデザインのアルバイトでネットショップの立ち上げと運営を経験。就職後、システム営業を経て、現在はIT系商社のWeb戦略に関わる。

大規模Webサイト運営やWebガバナンス、Webサイトガイドライン、Webコンテンツ品質管理・監査を得意とする。UXD(ユーザエクスペリエンスデザイン)やIA(情報アーキテクチャ)、アクセシビリティの分野でも積極的に活動をしている。

個人Webサイト:http://storywriter.jp/

バックナンバー

2020