(株)ソラコムは,同社のIoT通信プラットフォーム「SORACOM」を,LPWA(Low Power Wide Area)通信の一種であるLoRaWANに対応させたサービス「SORACOM Air for LoRaWAN」を開始,SORACOMの提供するIoT向けデータ通信やIoT向けクラウドサービスで2月7日(火)よりLoRaWANが利用可能となった。
LPWAは近年IoT等の通信手段として注目を集める無線技術で,数km~数十kmの通信距離をカバーしながら出力の小さい「特定小電力無線」に分類され,利用するために免許を受ける必要がない。複数の通信規格が存在し,LoRaWANもその規格の1つ。サブGHz帯を利用して伝送距離は数km,通信速度は数百Kbpsの性能をもち,乾電池で数年稼働する低消費電力が特徴。非営利団体のLoRa Allianceにより仕様が策定・公開され,標準化が進められている。デバイスモジュールが安価で出回っているほか,ArduinoやRaspberry Pi用のソフトウェアがOSSとして公開されており,デバイスを入手すれば手軽に試すことができるのも特徴の1つ。
ソラコムは(株)M2Bコミュニケーションズと資本業務提携を通じてLoRaWANを利用した実証実験キット(PoCキット)を2016年7月13日から販売し,実験的にLoRaWANを用いたサービスを提供していた。このキットを使って,牧場における牛の移動状況を管理したり,携帯通信網が入らない山中で登山者の位置データを取得し,遭難防止に活用するといった実験が実際に行われている。
今回の正式対応で,同社のIoT向けデータ通信「SORACOM Air」に「Air Type」という概念が加わり,既存の「セルラー (3G/LTE)」に加え「LoRaWAN」というAir Typeが追加された形になる。
「SORACOM Air for LoRaWAN」の概要

これにともない,SORACOM対応のLoRaゲートウェイとLoRaデバイスを2月7日に発売,SORACOMユーザーコンソールから購入可能となる(3月より順次発送)。LoRaゲートウェイにはソラコムのSIMカードを挿した3G USBドングルが内蔵され,SORACOMのセルラー回線経由でインターネットに接続される。LoRaWAN を利用したいユーザは,LoRaゲートウェイを購入,設置するだけで,SORACOMのネットワークを介したプライベートネットワークを構築できる。ユーザーコンソールやAPIを通じてLoRaゲートウェイとLoRaデバイスを管理,一括操作を行うこともできる。またLoRaデバイスはArduinoボードに実装され,プログラミングによる制御が可能。
「SORACOM Air for LoRaWAN」で提供されるLoRaゲートウェイ

同LoRaデバイス,Arduinoボードに組み込まれている

LoRaデバイスから得られたデータはLoRaゲートウェイを経由し,クラウド上の「SORACOM LoRaネットワークサーバー」を通じてSORACOMプラットフォームに送信される。その上で,データ転送支援サービス「SORACOM Beam」で任意のネットワークにデータを送ったり,クラウドリソースアダプタ「SORACOM Funnel」を用いて,クラウドサービスとの連携を行うことが可能。さらに今回の発表とあわせて,2016年にスタートしたデータ収集・蓄積サービス「SORACOM Harvest」もSORACOM Air for LoRaWANに対応した。SORACOM Harvestを使ってLoRaデバイスからのデータの収集と可視化をコンソール上だけで簡単に実現できる。
開始時にはSORACOM Beam,SORACOM Funnel,そして「SORACOM Harvest」が利用可能

「SORACOM Air for LoRaWAN」の料金体系は以下の通り。
- LoRaゲートウェイ(所有モデル)
- 初期費用(購入費用)69,800円
- 月額利用料金
- 1台目 39,800円
- 2台目以降 29,800円
月額利用料にはゲートウェイのセルラー通信料(全額),「SORACOM Air for LoRaWAN」利用料(全額)が含まれるほか,「SORACOM」のサービスSORACOM Beam/Funnel/Harvestを上記月額利用料と同額分使用できる。
- LoRaデバイス
- 7,980円
- 初期キャンペーン価格 4,980円(個数限定,先着順)
LoRaゲートウェイを購入せず「共有する」サービスもスタート
さらに,上記のLoRaゲートウェイをユーザが購入して管理,運用する「所有モデル」に加え,ソラコムが所有し,誰でも利用できる共有ゲートウェイをサービスとして提供する「共有サービスモデル」を開始する。共有ゲートウェイは,他のユーザも利用可能に設定されており,共有ゲートウェイの設置スポット周辺では,他のユーザもLoRaゲートウェイを所有することなくLoRaデバイスを利用できる。「共有サービスモデル」のユーザが共有ゲートウェイを設置すると,その設置情報の登録が必要で,これをもとに共有ゲートウェイの設置スポット情報が更新され,ソラコムサイト内の「SORACOM LoRa Space」で順次公開される。
このサービスの開始に伴い,ソラコムは企業や団体の協力を得て,まず全国の数ヵ所に「共有ゲートウェイ」を設置した。今後「共有サービスモデル」より設置されたLoRaゲートウェイが増えることで,LoRaWANの利用エリアは拡充されていくとのこと。
このモデルのメリットは,その料金。初期費用が24,800円,月額9,980円で,所有モデルと同様のゲートウェイ通信料およびSORACOMサービス利用料が含まれる。ただし,契約期間が1年単位でゲートウェイの設置場所の登録や公開が条件となる。
所有モデルと共有モデルの違い

LoRaWAN機器を手に説明を行う(株)ソラコム代表取締役社長 玉川憲氏

- SORACOM Air for LoRaWAN
- URL:https://soracom.jp/services/air/lora/