( 株) ソラコムは2017年7月5日、IoT通信プラットフォーム「SORACOM」における新たなサービス2種の開始を発表した。発表は同日開催された同社主催するカンファレンス「SORACOM Conference “ Discovery” 2017」の基調講演で行われた。
デバイス管理サービス「SORACOM Inventory」
新サービスの1つ「SORACOM Inventory」は、IoTデバイスのステータス、稼働状態や設定の管理、デバイスに簡単なコマンドを実行させることができるサービス。リモートからセキュアに設定の確認や更新、ファームウェアの確認や更新、コマンド実行、デバイスの再起動、データ配布や各種メトリクスのモニタリングが実現される。
「SORACOM Inventory」のサービスイメージ
通信プロトコルにOpen Mobile Alliance(OMA)により標準化されたOMA Light Weight M2M(LwM2M)プロトコルを採用。管理したいIoTデバイスにLwM2Mの「エージェント」と呼ばれるクライアントプログラムをインストールし、SORACOM側に用意されたサーバと通信することでサービスが提供される。SORACOM SIMがセットされたゲートウェイを使用している場合は、その先に接続されたデバイスにもエージェントをインストールすることで管理可能となる。
ユーザはサーバ側の設定は不要で、Webコンソール上、およびLwM2MベースのAPI経由で各種の操作が可能。LWM2Mエージェントはユーザが作成する必要があるが、Linux上で動作するC、Javaで書かれたエージェント、およびAndroid向けのエージェントのサンプルがソラコムから提供される予定。
デバイスのさまざまな情報をコントロール可能
利用料金は、アクティブデバイス数とイベント数(どちらか大きい方)に応じた月額課金となる。
3デバイス or 15万イベント/月まで :無料
100デバイス or 500万イベント/月まで :5,000円
300デバイス or 1,500万イベント/月まで :13,500円
1,000デバイス or 5,000万イベント/月まで :40,500円
なお、このサービスは7月5日時点で「Limited Preview」という形で提供される(Limited Preview中は利用料金は無料) 。利用するには目的や使い方、導入時期などの申請を行う必要がある。
SORACOM Inventory
URL:https://soracom.jp/services/inventory/
透過型トラフィック処理サービス「SORACOM Junction」
「SORACOM Junction」は、ユーザが管理するデバイスの通信を監視、制御できるサービス。デバイスの通信トラフィックの概況を把握したり、セキュリティ監視やアプリごとに通信の制御を変更したいといった要望に応えるものである。7月5日の開始時点で3種類のトラフィック処理機能を実現している。
Inspection
パケットフローを解析して統計情報を出力する機能。アプリケーションの判別や通信先の可視化、法人向け通信サービスでのアクセス先の分析等に利用できる。統計情報の送信先はユーザが指定できる。
Mirroring
パケットのコピーを指定の宛先に転送する機能。ミラーリング先に不正アクセス検知やセキュリティ解析を行うエンジンを指定することでセキュリティの脅威や異常検知の早期発見等に効果がある。
Redirection
パケットを指定のゲートウェイ経由で転送するサービス。経由させるサーバにトラフィックを制御するエンジンを置くと、ファイル配信等の帯域を絞ってセンサーデータやアラートを優先させたり、特定のアプリの通信のみを許可するなど、独自のポリシーに従ったトラフィックの制御が可能となる。
「SORACOM Junction」の概要
これらはいずれもSORACOMのコアネットワーク上でパケット交換を司るVirtual Private Gateway(VPG)を通るパケットを操作することにより行われる。VPGは既存の「SORACOM Beam」( データ転送) 、「 SORACOM Canal」( AWSクラウド内の閉域接続)から使われてきたいわば「心臓部」で、この制御をユーザに一部提供する点も注目すべきサービスといえる。
「SORACOM Junction」の利用料金は基本料金が15円/時間(10,800円/月相当) 、3つの機能のいずれかを使った場合VPGの利用料金がこれに加算される(50円/時間 or 300円/時間:機能の同時使用も同額) 。さらにInspection機能を使った場合、Inspection機能利用料金(100円/時間)がその上に加算となる。
SORACOM Junction
URL:https://soracom.jp/services/junction/
これで、同社のサービスは「SORACOM Air」から始まり「J」まで揃った。
省電力広域通信技術「Sigfox」に対応
同社ではこれまで通信基盤としてセルラーとLoRaWANを使用していたが、7月5日から新たに省電力広域通信技術「Sigfox」への対応を監視した。SigfoxはLoRaWANと同様、低消費電力で広域をカバーするIoT向け通信技術(LPWA)の一種。通信速度は100bps、通信容量は12バイト/回、通信回数が最大140回/日、通信方向が現状上りのみ(下りは国内法改正待ち) 。
運営はフランスの通信事業者で、欧米を中心に32か国で展開されている。日本では京セラコミュニケーションシステム( 株) ( KCCS)がオペレーターとしてインフラの構築とサービス提供を行っている。現在は東京23区、川崎市、横浜市、大阪市でサービス提供中で、2020年までに人口カバー率99%を目指すという。
「SORACOM Air for Sigfox」はセルラー、LoRaWANと同様、「 SORACOM」プラットフォームのWebコンソール/APIを通じて、Sigfoxのデバイスや通信を一括操作・管理することができるほか、「 SORACOM Beam」( データ転送) 、「 SORACOM Funnel」( クラウドリソースアダプタ) 、「 SORACOM Harvest」( データ収集)のSORACOMサービスを利用できる。
利用するにはソラコムのWebコンソールからSigfox対応デバイスを購入し、デバイスを設定、SORACOM各サービスをWeb上から設定して利用開始となる。開始時点で用意されているSigfoxデバイスはSigfoxセンサーキット「Sens'it」( 8,478円) 、オプテックス社ドライコンタクトコンバーター(39,800円)の2種。この金額にはハードウェア料金、契約事務手数料、「 SORACOM Air for Sigfox」の1年分の料金(Sigfox通信料金、SORACOM アプリケーションサービス料金を含む) 、10円分/月のBeam、Funnel、Harvestのサービス使用料が含まれる。契約は1年ごとに更新され、年額更新料は1,440円/台(上記の料金すべて含む) 。ボリュームディスカウントもあるとのこと。
SORACOM Air for Sigfox
URL:https://soracom.jp/services/air/sigfox/
クラウド向けサービス、および対応通信技術の両面で機能を拡充させていくソラコム。同社の代表取締役社長 玉川憲氏は、今回の発表に先立ち行った記者説明会で、同社は今後もワイヤレスとクラウドの両方の「Agnostics」( 非依存性=どんな環境でも対応する)をより進めていくと語った。
ソラコム 代表取締役社長 玉川憲氏
Wireless AgnosticsとCloud Agnostics