日本数学会は2018年3月7日、14回目となる日本数学会出版賞を発表し、同3月19日授賞式を行った。
今回受賞したのは、
の2冊。
日本数学会出版賞とは?
日本数学会出版賞が設立された背景には、日本国内での数学が高度に専門化していくことに伴い、数学の果たす重要な役割が一般はもとより, 理科系の専門家にも理解されているとは言い難い状況となっている一方で、数学の魅力を巧みに伝える一般向け啓発書が相次いで出版されるという状況がある。日本数学会は、これからの数学・数学分野の発展につなぐべく、このような企画を側面から応援したいと考え、2005年度から表彰を始めた。2018年度で14回目となる。
表彰の基準は、出版活動などの著作活動により, 数学の研究・教育・普及に顕著な業績を上げたものを対象としている。
[改訂第7版]LaTeX2ε美文書作成入門について
今回受賞した『[改訂第7版]LaTeX2ε美文書作成入門』は、LaTeXユーザ全員を対象とした高品質な組版を用いた文書作成システム「LaTeX」を活用し、美文書を作成するためのノウハウを体系的にまとめた書籍。
1991年12月に『LaTeX 美文書作成入門』、1994年11月に『LaTeX入門』の2冊が刊行。その後、1997年9月に現在の最初の版となる『LaTeX2e 美文書作成入門』が刊行され、改訂を6回重ね現在に至る。25年以上の間で累計25万部を記録し、日本におけるLaTeXの普及・促進、ユーザの育成と拡大に貢献してきた書籍となる。
LaTeXは、組版の自由度、表現力の抱負さなどから、教育分野、とくに数学・物理など、自然科学の分野において利用されることが多く、また、21世紀に入ってからのドキュメントのデジタル化において、日本の学術資料制作には欠かせないツールとして利用されている。一方で、その利用方法には一定のスキルが求められ、そのスキル向上に最も役立つ書籍の1つとして、『[改訂第7版]LaTeX2ε美文書作成入門』は多くの読者に読み続けられていることが今回の受賞につながった。現在は、電子書籍版『[改訂第7版]LaTeX2ε美文書作成入門』も刊行されている。
技術評論社は、これからも本書『[改訂第7版]LaTeX2ε美文書作成入門』をはじめ、日本の学術機関に貢献できる書籍・雑誌をはじめとしたコンテンツを企画・提供していく所存である。
受賞者の声
最後に、今回の受賞にあたり、技術評論社が刊行する『[改訂第7版]LaTeX2ε美文書作成入門』の著者、奥村晴彦氏、黒木裕介氏よりコメントをいただいたので紹介する。
奥村晴彦氏:
このたび、2018年度日本数学会出版賞を、『[改訂第7版]LaTeX2e美文書作成入門』の著者として、いただきました。授賞理由には、本書で扱っているpLaTeXのほかに、NTT-JTeXなども紹介されており、日本語圏でのTeXの開発・普及に尽くされたたくさんの方々を代表して賞をいただいたのだと思っております。LaTeXを使ってくださっている読者の皆様も含め、支えてくださった方々に感謝するとともに、ますます気を引き締めて、これからも本書を3年ごとに改訂していければと考えております。
黒木裕介氏:
2013年出版の改訂第6版から共著者として表に出していただいてからまだ5年経っていないところ、大きな賞をいただきまして恐縮しております。
黒木も、『[改訂版]LaTeX2e美文書作成入門』で単なる一読者としてLaTeXを学び始め、改訂とともに知識を改めてきました。
初めて学ぶ人にも、最新事情を知りたい人にも、これからも「TeXなら美文書」と薦めていただけるよう、活動を続けてゆく所存です。