SORACOM、セキュアプロビジョニングサービス「SORACOM Krypton」、ダッシュボードサービス「SORACOM Lagoon」提供開始、セルラーLPWA「LTE-M」への対応も発表

⁠株⁠ソラコムは2018年7月4日、同社の提供するIoT通信プラットフォーム「SORACOM」における新たなサービス2種の開始を発表した。発表は同日開催された同社主催するカンファレンス「SORACOM Conference ⁠Discovery⁠⁠ 2018」の基調講演で行われた。

セキュアプロビジョニングサービス「SORACOM Krypton」

新サービスの1つ「SORACOM Krypton」は、SORACOMが提供するセルラー用SIMの認証機能をもとに、同社の認証基盤を使ってさまざまなクラウドサービスに接続するためのプロビジョニング(初期設定)をIoTデバイスにセキュアに組み込むサービス。

IoTデバイスをクラウド等のサービスに接続する際、デバイスごと固有の認証情報を外部に読み取られずに設定する必要がある。従来は1デバイスごごと、およびサービスごとに出荷前に設定していく必要があったが、⁠SORACOM Krypton」ではこれらの設定を接続時にオンデマンドで実行させることができる。

SIM認証の基盤は、デバイスの認証サービス「SORACOM Endorse」の機能を拡張し、セルラー回線だけでなく無線LANや有線LANを使った接続時にも、SIM認証の情報を使った認証設定ができるしくみを実装、デバイスにEndorseクライアントをインストールすることで、⁠SORACOM Krypton」サービスを利用できる。

「Krypton」はご存じ不活性ガス元素の名称で、名前の由来は「隠れたもの⁠⁠。接続情報をセキュアに設定するサービス名にふさわしいとして「SORACOM Krypton」というサービス名になった。

「ORACOM Krypton」のサービスイメージ
「ORACOM Krypton」のサービスイメージ

「SORACOM Krypton」は7月4日から「Public Beta」としてサービスが開始され、開始時点では同社のIoTデバイス管理サービス「SORACOM Inventory⁠⁠、およびAmazonの「AWS IoT⁠⁠、⁠Amazon Cognito」のプロビジョニングに対応している。今後は対応するクラウドサービスを順次増やしていくとのこと。

「AWS IoT」との連携の例
「AWS IoT」との連携の例

利用料金はSIMカード1枚ごと、初回+月額課金となる。

日本向けAir SIM グローバル向けAir SIM
初回料金 180円 1.8USD
月額料金 40円 0.4USD

料金はいずれもSIM1枚あたり

SORACOM Krypton
URL:https://soracom.jp/services/krypton/

IoTデータダッシュボード作成サービス「SORACOM Lagoon」

「SORACOM Lagoon」は、同社のデータ集積、グラフ化サービス「SORACOM Harvest」をさらに発展させたサービスで、Harvestと連携して、収集したデータをさまざまなk立ちでグラフ化したり、プロジェクトごとにダッシュボードを作成し、それをさらに別のユーザに共有することができる。

「SORACOM Lagoon」はオープンソースのダッシュボードプラットフォーム「Grafana」をベースに開発したもの。IoTデータを受け取るサーバ等の側でデータベースやアプリケーションを用意することなく、ダッシュボードに用意されたグラフやテーブルを使って簡単に「見える化」ができる。またアラートを設定し、データがある閾値に達するとメールやLINE等へ通知するといった操作もコンソールを使って設定可能。作成されたダッシュボードは、特定の第三者に共有、公開することもできる。

「SORACOM Lagoon」ダッシュボードの例、スマホ画面用のダッシュボードも構成可能
「SORACOM Lagoon」ダッシュボードの例、スマホ画面用のダッシュボードも構成可能

「Lagoon」は南国にあるような「湖礁」のことで、浅瀬となっている湖を上から見渡すようなイメージのサービスとして命名された。

「SORACOM Lagoon」も7月4日よりPublic Betaとしてサービス開始される。利用にはデータ収集サービスとして「SORACOM Harvest」の利用が必須となっている。利用料金は、オペレータごと(カバレッジタイプ別)の課金となり、標準的な「Makerプラン」は以下のような料金体系となっている。

日本向けカバレッジタイプ グローバル向けカバレッジタイプ
月額料金 980円 9.8USD
ユーザ数 計3ユーザ(編集ユーザ1、閲覧ユーザ2)
ダッシュボード数 3つまで
アラート設定 10アラートまで
SORACOM Lagoon
URL:https://soracom.jp/services/lagoon/
ソラコム 代表取締役社長 玉川憲氏がかつて語ったように、「Agnostics」(非依存性=どんな環境でも対応する)をより進めていくというコンセプトは確実に前進しているようだ。
新たに「Connectivity Agnostic」が加わった
新たに「Connectivity Agnostic」が加わった

セルラーLPWA「LTE-M」に対応

今回のキーノートでは、ソラコムが親会社のKDDI回線を使って提供しているIoT向け回線サービス「SORACOM Air for セルラー」において、LTE-M規格のLPWA回線が利用できる「SORACOM Air for セルラー plan-KM1」の提供が2018年9月より開始されることが発表された。

「LTE-M」⁠LTE-M Cat.M1)は、4G LTEのエリアでの省電力通信を実現した広域対応のLTE規格。既存のLTEよりも消費電力が低いため、乾電池でもある程度の期間、駆動させ続けることが可能。より広範囲で安定した通信が期待でき、ゲートウェイを設置せずに広いエリアでのIoTシステム運用が可能となる。

利用料金は、SIM1枚の発行手数料(送料込み)が1,500円、基本料金は100円/月、データ通信料は0.5円/kBとなっている。SMS、音声通信には非対応。

この「plan-KM1」に対応したSIMカードのほか、チップ組み込み型のSIMも用意されており、これを組み込んだ「plan-KM1」対応リファレンスデバイスも提供される。同社のデバイスパートナー各社からも順次提供の予定。

AWS IoT対応のボタンデバイス発売

先に紹介した「SORACOM Kripton」でもAWS IoTとの協力サービスが発表されたが、これとは別にLTE-M通信機能を内蔵し、AWS IoTのサービス「AWS IoT 1-Click」に対応したデバイス「SORACOM LTE-M Button powered by AWS」が2018年度下半期に提供開始となることが発表された。

「AWS IoT 1-Click」は、Amazonのネット通販で利用の進む「Amazon Dash Button」で知られているサービスインフラ「AWS IoT エンタープライズボタン」を使って、ボタン1つのアクションをトリガにして、AWS Lambda等を使ったアクションをプログラミングにより起動できるしくみ。⁠AWS IoT エンタープライズボタン」のネットワークのベースはWiFiだが、これにSORACOMの通信回線サービス「SORACOM Air for セルラー plan-KM1」を組み合わせて製品化したのが「SORACOM LTE-M Button powered by AWS」である。

SORACOM LTE-M Button powered by AWS
SORACOM LTE-M Button powered by AWS

「SORACOM LTE-M Button powered by AWS」は、タン4電池2本で駆動し、電池交換が可能。Amazon.co.jpおよびSORACOMのユーザコンソールからの販売を予定している。予定価格は8,000円だが、個数/期間限定のキャンペーンを行っており、キャンペーン価格は3,980円(税、送料別⁠⁠。1個ぶんの価格には「SORACOM Air for セルラー plan-KM1」1年分の利用料金と1,500回分のクリックで生じるデータ通信費が含まれる。

Amazonとの連携として、このほか「Amazon Kinesis Video Streams」がLimited Previewとしてサポートされた。
Amazonとの連携として、このほか「Amazon Kinesis Video Streams」がLimited Previewとしてサポートされた
さらに先に紹介された「SORACOM Krypton」を組み合わせることで、これまでIoTのフレームワークでは実現が難しかった「エッジ・ヘビー」なクラウド連携システムを実装できる道筋が立った。
さらに先に紹介された「SORACOM Krypton」を組み合わせることで、これまでIoTのフレームワークでは実現が難しかった「エッジ・ヘビー」なクラウド連携システムを実装できる道筋が立った

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