ソラコム、年次イベント「SORACOM Discovery ONLINE」IoTプラットフォームの“最終進化形態”形作る新サービス、新機能を発表

⁠株⁠ソラコムは2020年7月14日(火⁠⁠、同社の主催するカンファレンス「SORACOM Discovery ONLINE 2020」の基調講演にて、新たなIoTインフラやサービス、新機能などを発表した。⁠SORACOM Discovery」は同社の年次カンファレンスで、IoTプラットフォームSORACOMに関する最新の技術情報や活用事例を紹介している。昨年は東京、グランドプリンスホテル新高輪 国際館パミールで開催されたが、今年は他のイベントの例に漏れずオンライン開催となった。

「SORACOM Discovery ONLINE 2020」で挨拶に立つソラコム代表取締役社長 玉川憲氏
「SORACOM Discovery ONLINE 2020」で挨拶に立つソラコム代表取締役社長 玉川憲氏

前日の説明会で、ソラコム代表取締役社長の玉川憲氏は、⁠グローバルコネクティビティで新しい産業を創る!⁠というビジョン元、ソラコムのプラットフォームは最終進化形態を迎えた」と語った。その言葉通り「SORACOM Discovery」でその具体的な発表が行われた。

ここでは、同カンファレンスで新たに発表された注目のサービスや新たなIoTインフラを中心に紹介する。

世界中どこでも最適なデータ通信を利用 ―1枚のSIMで複数のデータ通信契約ができる「サブスクリプションコンテナ」

現状でもSORACOM SIMは全世界140を超える国でキャリアを超えて利用可能であるが、地域によって最適な料金プランが使えず、割高で利用しづらいといったユーザの声があった。これに応えるため、ソラコムは同社が販売するIoT SIMに、複数の通信契約(サブスクリプション)をコンテナ化して無線経由で自由に追加できる「サブスクリプションコンテナ」の機能を追加した。

サブスクリプションコンテナの概要
サブスクリプションコンテナの概要

これまで提供されていたプライマリのサブスクリプション「plan01s」は世界140以上の国、地域をカバーするが、欧米で割安な料金となっている。これに加え、KDDIの回線を使用することにより、日本国内でplan01sと比べ通信料金が約10分の1となる「planX1⁠⁠、そしてアジアパシフィック13ヵ国での通信が可能となり、各国での通信料金が劇的に抑えられる「planP1」の2つのサブスクリプションが新たに使用可能になった。

新たなサブスクリプション「planX1」⁠planP1」
新たなサブスクリプション「planX1」「planP1」
「planP1」で利用できる通信料金、ミャンマーでは従来の100分の1に!
「planP1」で利用できる通信料金、ミャンマーでは従来の100分の1に!

これらのサブスクリプションはソラコムのコンソール上から簡単に追加することができ、一度追加するとSIMの位置から最適なサブスクリプションに自動で切り替わる。また、サブスクリプションが切り替わっても、SORACOMの提供する各種サービスは透過的に利用可能である。

サブスクリプションコンテナの利用料は、1サブスクリプションを追加するごとに初期費用3.0USドル、月額1.8USドル、これとは他に各地域の通信料が従量課金される。

デバイスからのデータにユーザのロジックを適用、転送「SORACOM Orbit」

IoTデバイスから送られてくるデータフォーマットは転送効率の良いバイナリ等の形式が多く、クラウド側のアプリケーション等では扱いづらいという問題に対応したサービス。⁠SORACOM Orbit」を使うと、デバイスから送られてきたデータをSORACOMの各種サービスに送り込む前に、あらかじめ用意されたユーザが設定したロジックに従って変換して送信できる。たとえばデバイスからバイナリで送られたデータをクラウドで扱いやすいJSON形式に変換するといった操作が可能。ロジックはデバイスに返すレスポンスにも適用できる。

SORACOM Orbit
SORACOM Orbit

提供ロジックはWebAssembly形式で登録し、SIMのグループごとに適用可能。WebAssemblyのコード生成用に、AssemblyScript、Rust、C/C++(Emscripten)向けのSDKが提供される。

コンソールのSORACOM Orbit設定画面
コンソールのSORACOM Orbit設定画面

料金は、基本料金がSIM1枚につき20円/(利用した月のみ)+10,000リクエストあたり40円(オペレーター単位⁠⁠。月間SIM1枚分+10,000リクエスト分の無料使用枠がある。

ソラコムのソラ=宇宙というモチーフをもとに、衛星軌道上で一度データを受け取って宇宙に送り出すイメージから「Orbit」と命名された
ソラコムのソラ=宇宙というモチーフをもとに、衛星軌道上で一度データを受け取って宇宙に送り出すイメージから「Orbit」と命名された

閉域網接続用ゲートウェイの機能を大幅拡張「VPG Type-E」「VPG Type-F」

SORACOMのネットワークサービスでは、IoTのデバイスとSORACOM Direct、SORACOM Canalといった閉域接続のサービスでの通信の接続ポイントとして機能しているVPG(Virtual Privete Gateway)の機能の拡張が発表された。

VPGでは閉域網接続だけではなく、VPGで通信を折り返すデバイス間での双方向アクセス、インターネットへのアクセスをIPアドレス範囲で制限できるアウトバウンドルーティングフィルターやインターネットアクセス元IPアドレスを固定することができる固定グローバルIPアドレスオプションといった機能も担っており、この閉域網接続機能を除いた機能だけを利用するプラン「VPG Type-E」がスタートする。

VPG Type-Eは閉域網接続の機能を省き、上記の機能を利用できるほか、⁠SORACOM Beam(データ転送⁠⁠SORACOM Funnel(クラウドアダプタ⁠⁠SORACOM Funk(クラウドファンクション⁠⁠」の各サービス、カスタムDNS機能およびCHAP認証機能が無料で利用できる。

VPG Type-E
VPG Type-E

料金は、従来のプランであるVPG Type-Dでは1ゲートウェイにつきセットアップ料9,800円、利用料300円/時間だったのに対してType-Eではセットアップ料198円、利用料10円/時間と大幅に低価格で利用可能。

VPG Type-Fは「全サービス対応万能型次世代VPG」という位置づけで、従来のVPG Type-Dの機能に加え、新たにAWS Transit Gatewayへの接続を可能としている。料金も従来より低価格でセットアップ料980円、利用料50円/時間(37,200円/月)となった。両プランとも接続回線は月1,000回線まで。これを超える場合はType-Fの別の料金プランとなる。

VPG Type-F
VPG Type-F

またこれに先立ち、グローバルのIoT SIMではこれまでVPGがドイツ1ヵ所だけに設置されていたが、昨年追加された日本、米国にあるSORACOMサービスの「ランデブーポイント」と同じ場所にVPGが増設され、利用場所により近いVPGに接続が可能となった。

オンデマンドパケットキャプチャ「SORACOM Peek」

IoT利用のトラブルシューティングの際にパケットキャプチャが有効な手段となるが、常時必要な機能というわけではなく、パケットキャプチャのために閉域網接続やサーバのセットアップを行うのはユーザの負担が大きかった。これに対するプラットフォームレベルのサービスが「SORACOM Peek⁠⁠。コンソールから時間を指定するだけで、一定時間中にVPGを通過する全パケットをキャプチャでき、ファイルとしてダウンロードできる。キャプチャファイルはWiresharkのようなパケット解析ツールを用いて分析が可能となる。このためSORACOM Peekを利用するには、先述のVPG(Type-E/F)の利用が必須となる。

SORACOM Peekの概要
SORACOM Peekの概要

なお、VPG不要でSIMを指定し、SIMが送受信するパケットをキャプチャできる機能も数ヵ月以内に提供予定とのこと。

利用料金は、1VPGごとに、500円/日、キャプチャデータ容量がVPGごとに1日5GBを超えると1GBごとに100円、データエクスポート量が1ヵ月に5GBを超えると1GBごとに100円(月5GBまでは無料⁠⁠。

SORACOM Orbit、Peek、VPG-E/F の発表は、ソラコムCTOの安川健太氏がシアトルから行った。オンラインカンファレンスならではの風景
SORACOM Orbit、Peek、VPG-E/F の発表は、ソラコムCTOの安川健太氏がシアトルから行った。オンラインカンファレンスならではの風景

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