ソラコム、「SORACOM Discovery 2021」「SORACOM Arc」発表 ―あらゆるIPネットワークからセキュアなIoTサービスが利用可能に

⁠株⁠ソラコムは2021年6月23日(水⁠⁠、同社主催の年次カンファレンス「SORACOM Discovery 2021 ONLINE」の基調講演にて、新たなIoTインフラやサービス、新機能などを発表した。⁠SORACOM Discovery」は同社の年次カンファレンスで、IoTプラットフォームSORACOMに関する最新の技術情報やさまざまなアイデアを使った活用事例が紹介される。5月にはガートナーが毎年発表する「マジック・クアドラント2021」に業界の名だたる企業と共に初選出されるなど、世界的な注目度もさらに上がっている中、昨年に続いて今年もオンラインで開催された。なお、⁠SORACOM Discovery 2021」は、前夜祭も含め6月22~25日の4日間にかけて開催される。

「SORACOM Discovery 2021」の基調講演を行うソラコム代表取締役社長 玉川憲氏
「SORACOM Discovery 2021」の基調講演を行うソラコム代表取締役社長 玉川憲氏

ここでは、同カンファレンスで新たに発表された中から注目のサービス、IoTインフラを中心に紹介する。

次世代SIM「iSIM」の実証実験を実施

SIMカードは端末の認証等セルラー通信においては重要なパーツで、カード型のSIMに加えて最近はチップとして機器に実装するeSIMも一般的になってきた。これを一歩進めてセルラー通信モジュールのチップ内にSIMの機能を統合したiSIM(integrated SIM)が次世代のSIMとして注目されている。

ソラコムは、iSIMチップを開発するソニー、iSIM OSを提供するKigenとともに、iSIMの実証実験を行った。ソニーが提供するセルラーIoTチップセットAltair ATL1250評価ボード内にハードウェア的にセキュアな領域を確保、Kigen提供のiSIM OS上にソラコムのキャリアプロファイルの書き込みを行った上で、これらを使った通信、およびソラコムプラットフォームから各サービスへの接続まで正常に動作することが確認された。

ソニー、Kigen、ソラコムの3社によるiSIM実証実験の概要
ソニー、Kigen、ソラコムの3社によるiSIM実証実験の概要

SIMカードのセキュアな機能はそのままに、WiFi、有線からSORACOMサービスを利用できる「SORACOM Arc」

ソラコムの提供するIoT通信の回線管理、データの活用、クラウド連携や、とくにセキュリティに特化したリモートアクセスや閉域網システムなど、ほぼすべてのサービスは、あたりまえだが同社の提供するIoT SIM(セルラー)やLPWAN通信の利用が前提であった。これらに含まれない通信としてWiFiや有線通信などがある。こうした通信手段でも同社のサービスが利用できるようにするサービス「SORACOM Arc」が発表され、6月23日から利用が可能となった。

「SORACOM Arc」でキーとなる技術が「仮想SIM」である。これはSIMを持たないWiFi等の通信に、セルラーにおけるSIMと同じ認証情報を設定するもので、プロトコルとしてLinux等で実績を持つVPNソフトWireGuardを使って安全な認証や通信を確立する。

仮想SIMとSORACOM Arc
仮想SIMとSORACOM Arc

さらに、SORACOM SIMを使用しているユーザが、SIMを利用しながらWiFi等に切り替えながら通信をする場合も、仮想SIMとSORACOM SIMを紐付けて、ソラコムの提供するサービスを透過的に利用することもでき、この場合同一SIMからの通信としてデータを処理できる。

仮想SIMとSORACOM SIMを同一SIMからのデータとして透過的に利用可能
仮想SIMとSORACOM SIMを同一SIMからのデータとして透過的に利用可能
SORACOM SIMと仮想SIMの紐付けにはSORACOM Kryptonが使用される。SORACOM SIMに一度アクセスすれば、あとはモデムがなくてもインターネット越しにセキュアな接続が可能となる
SORACOM SIMと仮想SIMの紐付けにはSORACOM Kryptonが使用される。SORACOM SIMに一度アクセスすれば、あとはモデムがなくてもインターネット越しにセキュアな接続が可能となる
SORACOM Arcの名前の由来はArc放電であると紹介する発表者のソラコムCTO 安川健太氏
SORACOM Arcの名前の由来はArc放電であると紹介する発表者のソラコムCTO 安川健太氏

なお、これまでSORACOMが発表するザービスは頭文字がAから順番にアルファベット順に名付けられてきたが、⁠SORACOM Arc」では再びAからはじまる名称になったことについて、安川CTOは同社サービスの通信インフラである「SORACOM Air」と同様のレイヤを担っているため、同じ「A」を冠するサービス名がふさわしいと考えたことを明かした。

シアトルから参加の安川氏に「録画でないことを証明します」と玉川氏が話しかけ、Arcの名前の由来について語り合う一幕も
シアトルから参加の安川氏に「録画でないことを証明します」と玉川氏が話しかけ、Arcの名前の由来について語り合う一幕も

AIカメラがソニー製AIプロセッサ搭載イメージセンサーで超進化

また、23日の基調講演では前日に発表された同社のAIカメラ「S+ Camera Basic ⁠サープラスカメラベーシック⁠⁠」の新モデル「S+ Camera Basic Smart Edition」が紹介された。

S+ Camera Basic Smart Edition
S+ Camera Basic Smart Edition

「S+ Camera Basic」は、2020年に7月に発売されたLTE通信機能が内蔵されたAI搭載カメラ。同社のエッジデバイス運用基盤サービスSORACOM Mosaicを利用し、カメラの動作管理やAIアルゴリズムの入れ替えを専用コンソールを用いて遠隔で行うことができる。AIアルゴリズムのサンプルも用意され、顔検出や文字の読み取り、動画の差分、物体検出などの操作をすぐに試すことができる。

「S+ Camera Basic Smart Edition」は、このカメラのイメージセンサーとしてソニー製のAI処理機能搭載イメージセンサーIMX500を世界で初めて搭載したモデル。IMX500搭載により、画素数が800万→1230万画素になり、高感度になる等、基本的な画質も大幅に向上したほか、AI処理機能がセンサー側にあるため、高度なAI処理を撮影と同時に高速で行うことができる。サンプルアルゴリズムも従来用意されているものに加えて、ソニーがIMX500向けに提供しているAIモデルも利用可能。販売価格は7万1,280円(税込み、送料別⁠⁠。数量限定の販売となる。

S+ Camera Basic Smart Editionの発表は「テクノロジーの民主化」と銘打ったコーナーにて、ソラコム執行役員 プリンシパルソフトウェアエンジニアの片山暁雄氏により行われた
S+ Camera Basic Smart Editionの発表は「テクノロジーの民主化」と銘打ったコーナーにて、ソラコム執行役員 プリンシパルソフトウェアエンジニアの片山暁雄氏により行われた

このほか、以下のような新しい機能等が発表された。

  • IoTデータを手軽に可視化できるSORACOM Lagoonがアップデートされ、グラフ化の機能が大幅に強化
  • 通信内容をキャプチャできるSORACOM PeekがSIMごとのキャプチャに対応(SORACOM Peek for SIM)
  • IoTデバイスの死活監視等に便利なAPI経由でpingが送れる機能の実装
  • 通信のトラブルシューティングを行う診断機能を実装
  • サポートプランの大幅拡大(プライオリティ、エンタープライズのプランを新設)

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