現地時間2009年6月2日、14回目となる「2009 JavaOne Conference」が開幕しました。今回は、4月に合意が進んだOracleによるSun買収というトピック後、初のJavaOneということで、技術的以外の側面からも注目が集まったカンファレンスとなりました。
新ホスト、Sun CGO、Chris Melissions氏
これまで、JavaOneのホスト役と言えばJohn Gage氏でした。しかし、昨年の退社に伴い、今回はCheif Gaming OfficerのChris Melissions氏がホストとして登場しました。Gage氏の雰囲気とはまた違って、若さ溢れ元気良く、テンポの良い進行で14回目のJavaOneが開幕しました。
JavaSE JDK7、JavaEE 6プレビュー
最初のスピーカーには、Sun CEOのJonathan Schwartzが登場。ここ数年のJavaOneで恒例となっている、各分野ごとのJava普及について、利用者数とデモをセットにした形でプレゼンテーションを進めました。
JDK7プレビュー
Schwartz氏は「デスクトップ分野においてJavaは1 Billion(10億)使われている」とし、合わせて最新のJDK7のリリースについても紹介しました。
JDK7
http://java.sun.com/features/jdk/7/
JavaEE 6プレビュー
さらに、エンタープライズ分野においてもFortune 500に属する数多くの企業が採用しているという裏付けとともに、年々普及が進んでいるとし、JavaEE 6プレビューのリリースを発表しました。
JavaEE 6プレビュー
http://java.sun.com/javaee/downloads/preview/
※その後のテクニカルセッションにて2009年9月リリース予定と発表されていました
他ジャンルからのゲストが登場―eBay、Blackbery、Sony Pictures、Verizon Wireless、Intel
エンタープライズ分野の話から、今度は、実際にJavaを採用しているさまざまな企業のゲストを呼び、それぞれの強み、展開について話が進みました。今回、ゲストとして登壇したのは下表のとおり。
今回、EC、モバイル、マルチメディア、通信、チップと幅広いジャンルからのゲストが登壇しました。過去を見ても、ここまで幅広くゲストが登場したJavaOneはあまりなかったように思います。これを見ても、Javaがプラットフォームとして浸透したことを強く訴えたかったことがうかがえます。
これを裏付けるように、「現在Javaによるトランザクションは毎秒300,000発生しています。1日に直すと25億トランザクションにも上ります」というSchwartz氏のコメントが力強かったです。
JavaFXが次のステージへ―JavaFX TV、オーサリングツール、そしてJavaFX 1.2
一昨年のJavaOneで発表されて以来、その後の動向に注目が集まるJavaFX。今回のJavaOneでは、バージョンアップのリリースがされた他、新しいテクノロジーであるJavaFX TVのデモ、さらに開発者やデザイナーからは、本当に心待ちにされていたオーサリングツールのデモが行われました。
JavaFX 1.2
JavaFX 1.2では、RTSP(Real Time Streaming Protocol)によりストリーミングメディアの立ち上げ時間が短くなり、パフォーマンスが向上するなどの改善が行われています。その他、ScreenクラスやAlertsの追加など、新機能が数多く実装されています。
JavaFX 1.2
http://java.sun.com/developer/technicalArticles/javafx/v1_2_newlayouts/
JavaFX TVプレビュー
JavaFX TVは、TV向けのJavaFX実装で、映像放送において高い親和性を持つ技術です。今回、実際にJavaFX TVを使って映像を流すデモンストレーションが行われました。
JavaFXオーサリングツール
これまで、JavaFX開発者にとって悩みの種の1つだったのが、オーサリングツールがなかったことです。まだリリース日については発表されませんでしたが、今回のデモでは、GUIベースのオーサリングツールが登場し、実際にDVDメニュー画面を開発・制作する模様が紹介されました。
James Gosling登場―Java Storeを発表
Java Store発表
続いて、Javaの産みの親、James Gosling氏が登壇しました。今回、初日からいきなり大きな発表が行われます。それが「Java Store」です。
これはアプリケーションデリバリーサービスの1つで、JavaFX技術を駆使して、ドラッグアンドドロップで新規アプリケーションの追加が行えるサービスです。Linux、Windows、Solarisで使えるとのこと。
Java Store
http://store.java.com/
McNealy登壇、恒例のTシャツプレゼント
この後、Jonatahnから「Sunにとって大事なものは何か?」という意味深な問いかけとともに、Sun Chairman、そしてCo-FounderのScott McNealy氏が登壇しました。過去のJavaOneでも何度も登場はしていましたが、今回は前述のような買収話があった後の公式の場ということもあり、会場内はざわめきました。
McNealy氏はその件には触れず、まず、Gosling氏、ホストのMelissions氏の3名で、恒例の会場向けTシャツプレゼントを実施し、JavaOneのステージを楽しみました。
McNealy、そしてEllison、両巨頭が同じ壇上に
楽しいひとときが過ぎた後、Gosling、Melissions両名は降壇し、McNealy氏が一人残りました。そして、これまでのSunに振り返り、ついに、今回のJavaOneで動向が注目されていた話題の人、Oracle CEOのLarry Ellison氏をゲストとしてステージに呼び上げたのです。
拍手とともに登壇したEllison氏ですが、会場からは「どういう発表があるのだろう?」という雰囲気が伝わってきました。
「先日の買収合意により、さまざまな話題や噂が上がっています。しかし、OracleにとってJavaは大切な技術であり、重要なものの1つです。データベースを含め、これからも協力的にしていきたい。そして、今日発表があったJavaFXはとても素晴らしいと思います」と、Java、そしてSunに対して好意的なコメントから始まりました。
JavaOne開催は継続へ、そして
一方、McNealy氏は「BEAみたいにならない?」という彼なりのジョークとも本気とも取れる問いかけをしつつ、「伝統的なもの、たとえばJavaOneは?」という、会場全員が最も気になる点について質問をすると「James(Gosling氏)の仕事を含め、すべて素晴らしいものばかり。これからもJavaを拡張していきたいです。JavaOneも続けます」と、Ellison氏自らJavaOne継続宣言を行い、会場のボルテージは最高潮に達しました。
※その後確認をしたところ、Ellison氏はJavaOneではなく「Javaのイベント」を継続するという発言をしていました。
さらに「今、デバイス上で動いているJavaはとてもエキサイティング。注目しています」というメッセージで、Ellison氏は降壇しました。
最後に、McNealy氏は「これからも世界は変わっていく。私たちも世界を変えることを続けていく」という力強いメッセージで締めました。
降壇する際には、会場からは拍手喝采、スタンディングオベーションで迎えられ、Sun、JavaOneへの期待を感じることができた基調講演となりました。
以上で、初日の基調講演は終了しました。Ellison、McNealy両名が登場したことが最もインパクトがありましたが、他にも各種技術の発表など、非常に盛りだくさんの内容でした。一方で、昨日のCommunityOneであれほど聞こえてきた「Cloud」というキーワードは、ほとんど登場しなかったのが印象的です。JavaOneは“Java”のためのイベントということをアピールしているのかもしれません。
さて、そのJavaOneについてですが、実際のところ、Ellison氏から継続は約束されたものの、次回開催日や開催場所についてはまったく触れられていなかったため、同じスタイルでの開催については未定とも言える状況です。しかし、14回目のJavaOne、初日の基調講演は、これからの技術としてのJavaの進化、JavaOneの未来が良い方向へ進んでいくと感じられる内容で幕を閉じました。