アドビシステムズ株式会社が主催するユーザーカンファレンス「Adobe Max Japan 2009」が、1月29日、30日の2日間にわたって東京・台場のホテルグランパシフィック LE DAIBAで行われ、述べ3300人が来場した。このイベントの様子を、詳しくレポートする。
Adobe Max Japan 2009のテーマは「Cnnect. Discover. Inspire」
1月29日の午前10時、日本法人アドビ システムズ株式会社(以下Adobe) 代表取締役社長 クレイグ ティーゲル氏による挨拶が行われた。
Adobe Max Japan 2009のテーマは「Cnnect. Discover. Inspire」 。これは世界各国、すべての開催地にて共通の、MAXの普遍的なテーマであるという。
そして、「 この2日間を掛け、アドビの最新の技術について発見し(Discover) 、トップのクリエイター・開発者のセッションでインスピレーションを受け(Inspire) 、よりダイナミックなコンテンツを創造するためのコミニティと繋がって(Connect)いただきたいと思う」と語り、2日間に渡る日本最大規模のユーザーカンファレンスAdobe Max Japn 2009の開幕を宣言した。
写真1 クレイグ ティーゲル氏の挨拶
基調講演
次に、Adobe CTO(最高技術責任者)兼エクスペリエンス&テクノロジ開発部門担当上級副社長 ケビン・リンチ氏による基調講演が行われた。
ケビン・リンチ氏は「皆さんとAdobe Maxという形で時間を共有できることを大変嬉しく思う。今日は皆さんにとっても私にとってもエキサイティングな一日となるだろう」とした上で、「 多くの変革の時を迎えている。経済や環境など、様々な問題・課題に直面している中で私たちがインターネットを上手く活用し、どんな場所にいようとも、パソコンであろうとモバイルデバイスであろうと、テレビのスクリーンであろうと、その中で、これらの問題を世界で一緒に解決していこうという取り組みが重要だ」と示した。
そして、Adobeが考えているAdobe Flash Platformの概念を紹介した。
写真2 Adobe Flash Platformを説明するケビン・リンチ氏
ソフトウェア業界を取り巻く3つのトレンドと、それを実現するAdobe Flash Player 10/Adobe AIR 1.5
ケビン・リンチ氏は続いてソフトウェア業界の中での3つのトレンドとして、「 Client+Cloud」「 Social Computing」「 Devices+Desktop」を挙げ、それらを実現するFlash Player 10と、その新機能(高品質の新テキストエンジン、Aoudio Videoストリーミング、3DエフェクトとDrawing API・PixelBender)について事例を交えながら説明した。
Flash Playerの普及
Flash Player 10の普及率がすでに50%を達成し、世界でFlashを活用したオンラインビデオが再生されている割合は60~80%であることを発表した。
写真3 すでに50%を達成している、Flash Player 10の普及率
写真4 Flashを活用したオンラインビデオが再生されている割合
次にFlashの素晴らしい能力をWebのみならずローカル・クライアントでシンプルに活用できるものとしてAdobe AIR(以下 AIR)が紹介され、開発者によるAIRの開発ツールキットのダウンロードは100万を超え、AIRを再生するランタイムは1億を達成したと発表。ケビン氏は「AIRがリリースされてからたった1年のことであり、初年度としては好調」とした。
AIRの活用事例
続いてAIRの最新リリースとして1.5を紹介し、Flash Player 10の機能を享受できること、Linux、Mac OS X、Windows対応、WebKit+Squirrelfishを内包すること、AIRには暗号化されたローカルデータベースを実装していると示した。
AIRの活用事例として、Adobeのジェレミー・クラーク氏からニューヨークタイムズ社が紹介された。ジェレミー氏は「現代はウェブやテレビなどの媒体を通じてニュースを得る人が増え、新聞を買う人が少なくなった。これは彼らの業界にとって大きな課題だ。彼らはどんなプラットフォームでどのようにすればよりたくさんの人々に自分たちのニュースを配信できるのかを日々考えていた。その課題を解決するためにAIRアプリケーション構築した」とし、「 AIRの最新技術を利用することで最新のニュースをとりいれ、新しいテキストエンジンによって新聞と同じカラム・レイアウトを再現し、あらゆる解像度・フォントサイズに対応した。これによって非常に読みやすく、すべての記事をブラウズできるようになった。さらに記事の内容に適した広告を入れ、クリックすることでその広告のコマーシャル・ビデオを見ることもできる。また、本紙でも人気が高いクロスワードパズルでは、紙では実現できないインタラクティブな操作性を得た」と説明。さらに「これらはデスクトップでも小型のMIT(Mobile Internet Device) 、でもまったく同様に動作する」とし、前日に購入したというVAIO type Pを取り出し、同アプリケーションが完全に動作することを披露した。
写真5 ニューヨークタイムズ社のAIRアプリケーション
他のAIRの活用事例として、ケビン氏から、高度なソーティングやPDF表示、XMLエクスポートがが可能となっている不動産検索アプリケーション、株式市場の株価状況を一覧表示し、AIRのドラッグアンドドラップ機能を使用して自分がトラッキングしたい株価指数を自由に登録できる株価指数チェックアプリケーション、FeliCaを読み取りメンコができるユニークなゲームアプリを紹介した。メンコができるアプリは、FeliCa対応のラップトップパソコンにFeliCaをかざすと、AIRアプリが情報を読み込み、ステージ上に同様のカードが3Dで表示され、昔懐かしいメンコを物理演算シュミレーションを用いてリアルに再現されていることを実際にデモをしてみせた。
写真6 FeliCaを利用した、メンコアプリ
3つのトレンド「Client+Cloud」「Social Computing」「Devices+Desktop」
その後、冒頭で示された3つのトレンド「Client+Cloud」「 Social Computing」「 Devices+Desktop」についての事例を順番に紹介した。
「Client+Cloud」
まず、「 Client+Cloud」のキーワードに基づく、クラウドからアプリケーションに拡張できる機能の事例として、次のユーティリティ・アプリケーションを紹介した。
Tour de Flex : 様々なAdobe Flash Platformの機能を見ることができる。日本語にも対応。また、コンポーネントや機能についてサンプル及びソースを交え解説する。外部API、例えばAmazon,TwitterなどがAPIに組み込まれており、アプリケーション上でデモ操作することができる。
Adobe DeveloperBox : AdobeのWebサイト、Adobe Lab等のRSSフィードやPDFやコンポーネントリファレンスをアプリケーション上で閲覧、検索できる。
「Social Computing」
次にケビン氏は「ひとりひとりのエクスペリエンスから、もっと他人と繋がっていくエクスペリエンス」 、つまり「Social Computing」の事例として、次のアプリケーションを紹介した。
Adobe Wave : Adobeが開発中のAIRアプリケーション。デスクトップノーティフィケーション機能を搭載。様々なサービスから、コメントや更新があった場合にAdobe Waveがデスクトップ上に通知してくれる。ケビン氏は同アプリについて「世界のWEBコンテンツと個人とを繋ぐ素晴らしい方法」と表現した。
ニコニコ動画 : 株式会社ドワンゴが開発・運営しているサービス。ユーザーが投稿した動画に他のユーザーがコメントをリアルタイムに閲覧・付加できる。紹介ではケビン氏のインタビュー が再生された。ケビン氏は再生中の動画とコメントを閲覧し、「 なにかおもしろいことが書いてあるんでしょうね。私は読めませんが」と、会場に笑いを誘った。そして、「 ソーシャルコンピューティングをこのように取り組むことで動画をよりよいものとしている好例」と評した。
「Devices+Desktop」
そしてケビン氏は「Devices+Desktop」を挙げ、「 インターネットに接続できるデバイスはPCにとどまらない。特に携帯電話はPCを超えるものとなってきている」と、スライドでは情報端末における割合を示すグラフを示しながら言及し、「 携帯電話がPCよりも大きな割合を占めているおり、新興市場では10億人の人が携帯電話からインターネットに繋いでいるという。このことからPCをインターネットデバイスとしてまったく使わない世代がでてくると考えており、大きな変革である。インタラクションのやり方を大きく換えるだろう。つまり我々はソフトウェアやアプリケーションのデザインを考え直さなければならない」と危惧した。
その上で、「 そのためのアプローチは、まずモバイルデバイス・携帯電話の画面サイズにあわせ、コンテンツやアプリケーションのデザインをし、その後にもっと大きなスクリーンであるPCや他のデバイスに対応させるやり方がベストであり、順当である。これは大きなコンテンツを作る上での大きな課題である」と示した。
そして、「 我々は2010年までに10億台の携帯端末にFlashを搭載させることを目標にしてきた。このプロジェクトは順調に進んでおり、目標達成は期待した以上に早い2009年内に実現できそうだ」と語った。
しかしながら、ケビン氏は「デバイス自体も10億を超えるため、これだけでは不十分であり、これらのテクノロジーをより前へ進めていかなければならない」と目標を新たにし、「 弊社は、様々な素晴らしいパートナーと組んでOpen Screen Projectを提唱した。これは一貫した信頼できるエクスペリエンスを様々なスクリーンで提供、それらを皆様が開発し、端末に関わりなくエンドユーザーの方々に信頼のある形で提供できるようにするためのものだ。これによって様々な障壁が取り除かれた」と説明した。
写真7 Flashが搭載されてきた携帯端末数の推移。2009年中に10億台を達成予定
docomoとFlashの進化、そしてAIRから見えてくる未来
これからの携帯端末のFlashはどうなっていくかをより具体的に説明するため、Adobeとパートナーシップを組む株式会社NTTドコモ(以下docomo)の永田清人氏が登壇し、docomoの携帯端末・Flashにおける今までの進化と未来を語った。
永田氏は「2003年に世界の携帯電話で初めてdocomoがFlash Lite1.0を搭載した。2005年にはAdobe Readerを、昨年にはFlash Videoを再生可能にした。Adobeとは長い間パートナーとして提携してきた。Adobeの技術、そしてクリエイター、デベロッパーの方々の協力によって前に凌ぐ心地よさを実現できた」と感謝の意を述べ、これからのモバイルサービスに関して「さまざまなエリアとの融合サービスを行うことを標語とし、テレビであろうがPCであろうが、PDAであろうが、携帯であろうが、すべてのユーザーエクスペリエンスを一緒にしていきたい。これはAdobeの推進しているOSPとぴったりマッチしている。よってこれからはAIRの技術を使ってこの新しい価値を実現するために取り組んでいく」と語った。
永田氏はAIRの技術を携帯端末に導入することによるメリットとして、次の点を挙げた。
AIRアプリとしてパッケージ化・オフラインでも利用できる。
FlashやJavaScriptで作成できるため、リッチな表現のコンテンツの拡大が期待できる。
デバイスの垣根を越えた共通のユーザー体験の提供ができる。
その具体的な未来背景として、オフラインでもローカルに保存された最低限の情報にアクセス・表示できるアプリや、インターネットと連動したストリーミングライブサービス。デバイスにとらわれないオンラインゲームなどが考えられることを示した。
そして、ウェディングの情報・結婚式のスケジュール管理から友人たちへの報告、ご祝儀のオンライン決済、結婚式までに至る共有アルバム機能を搭載した、統合ウェディングアプリを、ムービーと実際の端末・試作アプリを用いて紹介した。
写真8 携帯端末上で動作する、試作中の統合ウェディングアプリ
基調講演の最後に、ケビン氏は「非常にエキサイティングなデモンストレーションだった。未来のビジョンが見えたと思う。是非こうしたトレンドを皆さんも活用していただきたい。私たちも常に最先端を行き、docomo、その他の企業と協力しながらデスクトップ、デバイス、そしてインターネット間を超える新しい未来を作っていきたい」と述べた。
RTMFPを使った未来のコミュニケーション
13:00から、Room 7の会場では、新しいプロトコル「RTMFP」をテーマとしたセッションが行われた。オーガナイザーはAdobe テクニカルエバンジェリスト 太田禎一氏、Adobe アーキテクト 上条晃宏氏。
写真9 Adobe テクニカルエバンジェリスト 太田氏
RTMPの制約
太田氏はまず、前世代プロトコルであるRTMPの背景を説明。Flash PlayerとFlash Media Serverが通信する手段であるTCP/IPと、ActionScript3.0で接続を行うNetConnection/NetStreamクラスに触れた後、それらを使用することで音声やビデオの配信、サーバー経由のメソッドコール、メッセージ配信ができることを説明した。
その後、様々な場面・問題に対応するために派生したRTMPT、RTMPS、RTMPE、RTMPTEを順に説明後、RTMPの問題点として、TCPベースであるためデータ欠損時には再送信しなければならないこと、遅延が避けられないこと、P2Pを構築してもNATと互換性がないこと等を指摘し、RTMFPはそれらに対応するために生まれてきたと話した。
次世代プロトコルRTMFP
次に、RTMFPはUDPベースであり、それによってパケットレベルでの直接アクセスが可能になり、NATおよびファイアーウォールとの互換性が高まったと解説。UDP上に高度なネットワークプロトコルスタックを実装することで、高速なセッション確立、複数の並列メディアフローメッセージ、多様な輻輳情報を利用でき、瞬間的な切断からも迅速に対応できると説明した。
さらにセキュア面でも言及。すべてのパケットはブロック暗号で暗号化され、接続の確立時にSSLライクな認証をサポートしたと高度なセキュリティを保持しながらも、開発者はActionScriptレベルでアクセス可能で、コードはRTMPとほぼ同様に動作するなど、柔軟性を強調した。
写真10 RTMFPのセキュリティ
RTMFPの目玉であるP2P通信についても解説。メディアデータはFlash Media Serverをバイパスし、FlashPlayer/AIRクライアント同士で送受信されるため遅延時間が減少、サーバー側における負荷がほとんどないと語った。
そして、RTMFPにおけるダイレクトP2Pの仕組み、ActionScript APIのコード利用に関して解説したのち、デモコードとデモアプリケーションを披露。比較的簡単にP2P通信によってウェブカムのデータ送信が行えることを示した。
写真11 RTMFPを利用した、ダイレクトP2P通信の仕組み
写真12 RTMFPを利用した、ダイレクトP2P通信のデモ
Stratus
RTMFPを実現する次期Flash Media Serverは公開未定ということで、現在RTMFPを試せるRTMFPランデブーサービスとして、Adobe Labsで公開しているStratus が紹介された。StratusはAdobe IDがあれば誰ででも使用することができ、Stratusを利用することでFlash Media Serverを配置せずに1:1、1:少数の音声ビデオアプリケーションを構築できる。
太田氏は将来の可能性として、「 Flash Player 10、AIR 1.5は第一段階に過ぎない。P2P技術で1対多の大規模なユースケースに適用することも視野に入れているため、私も期待している」と語り、それを実現するための技術"Groups"について紹介した。さらに現時点では不透明だが、可能性としてローカルのファイルのP2Pアップロードついても示唆された。
最後に太田氏は、上条氏のブログ でもRTMFPを取り上げる予定であるため、デベロッパーの方は是非ブックマークしてほしいと語った。
100行にも満たない比較的簡単なコードで、Stratusを利用したFlashによるP2P通信が構築できることは、著者としても驚嘆した。読者の方も、これを機会に試してみてはいかがだろうか。
Space -スペース- FITC session
14:20からのセッションには、ジョシュア・デイビス氏のセッションに参加した。ジョシュア氏は、「 Spaceというのはどういう意味だろうか? 宇宙空間だろうか? それとも我々一人一人の空間?」と、来場者に問いかけるように始めた。
ジョシュア氏は空間と自分自身を結びつけていた。それは、自身が体験したスカイダイビングから、この地球というSpaceの中でいかに自身一人が小さい物であるかを思い知らされたからだと告白した。また、自身が体中に15年間タトゥを入れ続けていると語り、「 まだ探せばタトゥを入れるSpaceがみつかるはずです。小さいですが」と軽快に言った。会場というスペースからも、幾度となく笑いがあがった。
さまざまな観点を持つSpaceという言葉を、彼は作品のテーマに取り入れ、プログラミングを使ってスペースを決め、グラフィックデザインしていくという。
写真13 ジョシュア・デイビス氏
grids-spacing
まず、彼は代表的なSpaceを用いたデザインとしてgridを挙げた。ジョシュア氏は「gridは非常に良い。縦列と横列を自由に決めることができるし、セルの間隔を変数として使うことができる」と述べ、gridという一定のルールに基づいた中に、ランダム性をいかにいれていくかを作品を通して説明した。ジョシュア氏は作品に取り組む際、常にいかにシンプルなアイディアで複雑な結果を出すことができるかを意識しており、グリッドはそれがとてもしやすいという。
ジュシュア氏は「プログラミングを使えば迅速に、素晴らしい結果をそれほどの労力を使うことなくアウトプットすることができる」とし、プログラミングを使ったグラフィックデザインがいかに効率的かを言及した。
また、ジョシュア氏は、セルの間の関係を定義するパラノイズ、それぞれの位置関係・近似性プロキシミティに関しても触れ、「 コンピューティング・プログラミングを使ったデザインは15~20年前にはできなかったと思う。しかし今は変わった、Adobeの製品を使うことでその状況は変わったのだ。人の手ではできないことが技術によって超えることが出来るようになった」と語った。
写真14 グリッドを活かした表現の例
写真15 近似性プロキシミティを活かした表現の例
考えることをやめるということ
彼は講師をしているニューヨークのビジュアルアーツ大学で生徒に作品制作のプロセスについて「考えるな」とアドバイスするという。
「シード(種)としてのアイデアからはじめるが、最終的にどうなるかということはわかっていない」とし、「 予測できるようなものを作っても意味がない。これが課題です。スタートであるアイデアは考えても、最終的なアウトプットはむしろ考えてはいけない。それをすると他のことができなくなってしまう。作品の最終結果を、どのような方向に行くか考えるのではなく、あらゆる実験をしてください」と語った。そして、自身が納得するまで挑戦することが大切であることを強調した。
さらに、「 ただの無作為の結果では良い結果にしかならない。なんらかのルールに、定義、パターンを取り入れたランダム性のほうが、よりよい素晴らしい結果を生むことができる」と語った。
写真16 パターンルールを作成するための方法を解説
写真17 ランダム性を重視した表現を利用したアート
動画1 ランダム性を重視した表現が、重要であることを説明していた ニコニコ動画:https://www.nicovideo.jp/watch/sm6027718
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seedとhard worker
ジュシュア氏は作品作りのアイデアについて、「 インスピレーションは近くにある。自分の環境にいるときは自分の環境を見ることは難しい。だから、見えないものを探せ。それは自分の側にあるものだが、見えない。なぜならそれは当たり前のものだからだ。自分には当たり前すぎて、見えなくなってしまっているのだ。アイデア(seed)は至る所にある。だから、作品を作るときアイデアがないとは言わずに、自分の目をよく開いて、自分に見えなかった物を、自分の周りにあるもの、日常見ている物を見てください」と示した。
また、作品作りの取り組みへの姿勢について、「 作品作りそのものが大好きになるのが重要だ。賞をうけるとか、そういう目的ではなく、自分を表すために作り出すということだ。自分を、誰かに見せるのだ。それを世界に見せて欲しい」と示した。
最後に、ジョシュア氏は「hard workerになること、つまり一生懸命やるということ」が重要だと言及した。そして、「 ただ考え、話すだけでなく、作品は作り出さなければならない。次のPhotoshopにもIllustratorのバージョンにも、自分の尻を叩いてくれる、やる気を出してくれる機能なんてない。自分自身がやらなければならないのだ。あなたが今日、帰ったら作品をつくるのだ。hard workをやるんだ、という気持ちがなければ駄目だ。今日私がここに立っているのも、クレイジーなくらい働いて、どんどんどんどん作品をアウトプットしたからだ。何回も何回も失敗した。そしてやっと何かいいものができた。だから本当に一生懸命大事なことに取り組むこと。それが一番大切なことだと思う」と、会場の一人一人に熱く語りかけた。
実際、彼の話を聴いている私自身、作品を作りたくなってしまった。それも、猛烈にだ。今すぐ作りたくなった。きっと、インスピレーションを得るとはこういうことなのだろうと理解した。ジョシュア氏は会場一人一人だけでなく自分自身にも語りかけているようにみえた。自分に言い聞かせるように。それは言うまでもないが、魅力あふれるとても感動的なセッションだった。