「AWS re:Invent 2019」ミニレポート“re:Inventのスキマから”

004 スタートアップが本来やるべきビジネスに集中させてくれる,それがAWSの最大の魅力 ―アプトポッド 坂元淳一氏

この記事を読むのに必要な時間:およそ 3 分

今年のAWS re:Invventには全世界から約6万5000人のAWSユーザが参加していますが,日本からの参加者も1,700名を超えており,加えて日本企業によるブース出展やセッション登壇も非常に多く見かけました。⁠日本のデジタルトランスフォーメーションは世界に較べて遅れている」などとよく言われますが,少なくともAWS re:Inventの会場にいる限り,そうしたネガティブな雰囲気は感じられず,どの国の参加者にも引けを取らない,トランスフォーメーションへの強い熱量を実感します。ちなみに今年の「AWS DeepRacer League」⁠強化学習で自走する1/18スケールのDeepRacerによるレーシングリーグ)では日本人2名がワンツーフィニッシュを決めており,この分野での圧倒的な強さを世界に見せつけたこともうれしいニュースでした。

12月5日のヴァーナー博士のキーノートの前に行われたDeepRacer Leagueの決勝戦では,日本から参加したDNPの2名が見事にワンツーフィニッシュで会場を沸かせた

12月5日のヴァーナー博士のキーノートの前に行われたDeepRacer Leagueの決勝戦では,日本から参加したDNPの2名が見事にワンツーフィニッシュで会場を沸かせた

今回はそんなアツい熱量でもってre:Inventに参加した日本のIoTスタートアップのひとつ,アプトポッドの代表取締役 坂元淳一氏に,同社の展示ブースにてお話を伺いました。

出展ブースでの坂元淳一氏

出展ブースでの坂元淳一氏

SageMaker,RoboMakerが“ミドルウェア的部分”をサポート

アプトポッドは自動車やロボットなどの産業分野に特化したIoTプラットフォームをハードとソフトの両方に渡って提供する「IoTのフルスタック企業」⁠坂元氏)です。おもな事業としてAI開発およびマシンラーニング基盤の提供,コネクテッドカーのデータ解析,ロボットの遠隔制御,産業機器のリアルタイム監視,IoTによるリモートデータの収集/解析などを展開しており,とくに大量のIoTデータを高速かつ安定的にストリーミングする双方向データ伝送プラットフォーム「intdash」は,100ミリ~1ミリ秒という高頻度で発生するストリーミングデータを時系列で確実にストアできるプラットフォームとして,自動車やロボット,産業機械といった業界から高い評価を得ています。

ハードからソフトまで,産業IoTを支えるソリューションを展開するアプトポッドのコアプラットフォームは,Amazon EC2上に構築されているフレームワーク「intdash⁠⁠。これをAWSのサービスやオープンソースと組み合わせ,機械学習プラットフォームやデータパイプラインとして提供している

ハードからソフトまで,産業IoTを支えるソリューションを展開するアプトポッドのコアプラットフォームは,Amazon EC2上に構築されているフレームワーク「intdash」。これをAWSのサービスやオープンソースと組み合わせ,機械学習プラットフォームやデータパイプラインとして提供している

「高頻度で発生するIoTデータを時系列にストアできるプラットフォームはそう多くありません。IoTデータはネットワークが切断されたり,デバイスのバッテリーが切れたりして,高い頻度でデータの欠損が発生するからです。intdashはたとえ一時的にデータを取りこぼしても,独自開発のストリーム制御プロトコルであるiSCPによって完全回収ができるので,時系列なデータストアが可能になっています」⁠坂元氏)

展示ブースでは,違法工事をコーンの数をもとにリアルタイムに検出→推論するデモが展示。画像の下部は時系列データの推移を示したもの。リアルタイムデータの収集やそれにもとづく推論,さらに可視化までを一貫した統合環境で提供できるのがアプトポッドの強み

展示ブースでは,違法工事をコーンの数をもとにリアルタイムに検出→推論するデモが展示。画像の下部は時系列データの推移を示したもの。リアルタイムデータの収集やそれにもとづく推論,さらに可視化までを一貫した統合環境で提供できるのがアプトポッドの強み

現在,アプトポッドはintdashを「Amazon SageMaker」「AWS RoboMaker」といったAWSのマネージドサービスと組み合わせ,リアルタイムデータをもとにした機械学習環境やロボット開発データパイプラインを構築し,自社ソリューションとして展開しています。同社はなぜAWSのマネージドサービスを選択したのか,坂元氏は「AWSのサービスは,我々が本来やるべき作業に集中させてくれる」と語っています。

「極端なことをいえばSageMakerのようなしくみ―さまざまなフレームワークを使ったモデル構築やトレーニング,エンドポイントへのデプロイなどを回すしくみを自社で作ることは可能です。しかしその構築作業にかかるコストや時間,さらにそれをメンテナンスする手間を考えれば,SageMakerを使ったほうがはるかにラクです。アプトポッドの強みは,リアルタイムデータを低遅延で欠損なく拾えること,IoTデータの伝送/管理/可視化を統合してアプリケーションとして提供できることであって,SageMakerやRoboMakerといった,いわゆるプラットフォームにおける"ミドルウェア"的な部分を作り込むことではありません。AWSのマネージドサービスはスタートアップとしてやるべきことに集中させてくれる補完的な存在」⁠坂元氏)

intdashとAmazon SageMakerを組み合わせた機械学習プラットフォームの構築事例。モデルの構築やトレーニング,さらには蓄積されたモデルの管理やアノテーションなどはSageMakerで。⁠自分でも作ろうと思えば作れるが,SageMakerに任せたほうが断然ラク。今回発表されたSageMakerの各種アップデートもこれからじっくり眺めます」⁠坂元氏)

intdashとAmazon SageMakerを組み合わせた機械学習プラットフォームの構築事例。モデルの構築やトレーニング,さらには蓄積されたモデルの管理やアノテーションなどはSageMakerで。「自分でも作ろうと思えば作れるが,SageMakerに任せたほうが断然ラク。今回発表されたSageMakerの各種アップデートもこれからじっくり眺めます」(坂元氏)

intdashとAWS RoboMakerによるロボット制御のデモ。ラスベガスから東京のオフィスのロボットをコントローラで遠隔操作。ディスプレイの下にはラズパイは設置されており,コントローラから受けた信号を東京リージョン経由で東京のロボットに伝えている。筆者も触らせてもらったが,ほとんど時差を感じることのない操作感

intdashとAWS RoboMakerによるロボット制御のデモ。ラスベガスから東京のオフィスのロボットをコントローラで遠隔操作。ディスプレイの下にはラズパイは設置されており,コントローラから受けた信号を東京リージョン経由で東京のロボットに伝えている。筆者も触らせてもらったが,ほとんど時差を感じることのない操作感

re:Inventへの出展は今回で2回目となるアプトポッドですが,グローバル展開にも積極的に取り組んでおり,全世界に拠点やパートナーをもつAWSのサポートは同社にとっても「我々のようなスタートアップにとって非常に力強い存在」⁠坂元氏)とのこと。AWSはサービス開始以来,伴走者として数多くのスタートアップを支えてきましたが,アプトポッドもまた,"IoTのフルスタック企業"としてAWSのサポートを得ながら,グローバルへの歩みを着実に進めているようです。

著者プロフィール

五味明子(ごみあきこ)

IT系の出版社で編集者としてキャリアを積んだ後,2011年からフリーランスライターに。フィールドワークはオープンソースやクラウドコンピューティング,データアナリティクスなどエンタープライズITが中心。海外カンファレンス取材多め。Blog 「G3 Enterprise」やTwitter(@g3akk),Facebookで日々IT情報を発信中。

北海道札幌市出身/東京都立大学経済学部卒。