AWS re:Invent 2020ミニレポート

002 Macインスタンスを実現した"Mac Mini + Nitro"の衝撃

11月30日(米国時間)に発表されたAWSの新インスタンス「Amazon EC2 Macインスタンス(mac1.metal⁠⁠」はmacOSがはじめてクラウド経由で利用できるサービスとしてIT業界に大きなインパクトを与えました。AWSはこのMacインスタンスを提供するにあたり、各リージョン内で大量の「Mac Mini」をベースにした専有ホストを構築したことを明らかにしています。

AWSのインフラ部門を統括するピーター・デサンティス氏。AWSのハードウェアリソースやデータセンター設計、再生エネルギー施策などをリードする人物
AWSのインフラ部門を統括するピーター・デサンティス氏。AWSのハードウェアリソースやデータセンター設計、再生エネルギー施策などをリードする人物

ではAWSは実際にどのようにしてMac Miniをコンピュートリソースとして機能させているのでしょうか。12月10日(米国時間⁠⁠、AWS インフラストラクチャ&サポート部門 シニアバイスプレジデントであるピーター・デサンティス(Peter DeSantis)氏が行ったインフラストラクチャキーノートでは、その実態を示す非常に衝撃的な画像が公開されました。

デサンティス氏が公開したAmazon EC2 Macインスタンスの「中身」はMac MiniとNitroコントローラをThunderbolt 3ケーブルでつないだだけのごくごくシンプルな構成
デサンティス氏が公開したAmazon EC2 Macインスタンスの「中身」はMac MiniとNitroコントローラをThunderbolt 3ケーブルでつないだだけのごくごくシンプルな構成 デサンティス氏が公開したAmazon EC2 Macインスタンスの「中身」はMac MiniとNitroコントローラをThunderbolt 3ケーブルでつないだだけのごくごくシンプルな構成

「ハードウェア(Mac Mini)にはいっさい手を加えていない」というデサンティス氏の言葉どおり、Mac Miniの筐体にThunderbolt 3ケーブルでAWSのEC2インスタンスの基盤であるNitroシステムコントローラをダイレクトに接続しただけ、逆に言えばたったこれだけのシンプルな構成で最新インスタンスを提供できてしまう「AWS Nitro System」のすごさに驚かされます。

Nitroがもたらす“モダンなクラウドインスタンス”のカタチ

2013年に構想がスタートし、2017年に最初の発表が行われたNitro Systemは、次世代のEC2インスタンスをホストする基盤として開発されてきました。Nitroは従来、サーバ側が処理していた機能(ネットワーク、ストレージ、セキュリティ)をNitroの専用ハードウェアであるNitroカード/Nitroセキュリティチップにオフロードし、専用のハイパーバイザであるNitroハイパーバイザがメモリやCPUなどのリソースをアロケーションします。NitroによりEC2の処理性能を劇的に向上させたAWSは、以後、ベアメタルインスタンスを含むモダンなインスタンスを数多く誕生させています。今回リリースされたEC2 MacインスタンスもEC2の進化の過程でしるされた重要なマイルストーンだといえるでしょう。

最新のEC2インスタンスをホストするNitroシステムの基本構成。従来サーバ側でホストしていたストレージ処理やネットワーキングなどをNitro側にオフロードすることで、サーバ側の大幅な負荷軽減を実現する。EC2でベアメタルインスタンスが提供可能になったのもNitroの登場による
最新のEC2インスタンスをホストするNitroシステムの基本構成。従来サーバ側でホストしていたストレージ処理やネットワーキングなどをNitro側にオフロードすることで、サーバ側の大幅な負荷軽減を実現する。EC2でベアメタルインスタンスが提供可能になったのもNitroの登場による

なお、EC2 Macインスタンスで現在サポートされているCPUは第8世代のIntel Core i7ですが、2021年には話題のApple M1チップにも対応するそうです。世界に大きなサプライズをもたらした"Mac on AWS"ですが、Nitroとともにこれからどんな進化を遂げるのかも見逃せないところです。

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