「Chrome+HTML5 Conference~第20回記念HTML5とか勉強会スペシャル~」レポート

日本のHTML5は第2章へ─基調講演

8月21日、東京・六本木のグーグル東京オフィスにおいて、グーグルとHTML5 Developers JPの共催によるChrome+HTML5 Conference ~第20回記念HTML5とか勉強会スペシャル~が開催されました。今回はデベロッパだけでなく、初心者から中級者のマークアップエンジニアやデザイナーを参加対象としたこともあり、日曜日の早朝という開催時間にもかかわらず、200名に上る参加者が駆けつけ、地方ユーザや抽選に漏れたユーザのためにライブ配信でセッションの模様が中継されるほどの盛況ぶりでした。

同イベントはグーグルの準公式コミュニティであるHTML5 Developers JPがこれまで開催してきた「HTML5とか勉強会」の第20回を記念したもの。⁠HTML5の間口をもっと広げたい」という主旨のもと、比較的初心者を対象にしたデザイナーとプログラマー向けの2トラック、合計12のセッションと、2つのハンズオンが実施されました。講師にはHTML5 Developers JPの管理人である白石俊平氏のほか、羽田野太巳氏、mixiのあんどうやすし氏、グーグルの北村英志氏など、Web業界の著名人が多数、登場しました。

本稿では同イベントの最初に行われた白石氏とグーグル シニアエンジニアリングマネージャ 及川卓也氏による基調講演の概要をお伝えします。

基調講演

まず最初に、2年前に同コミュニティを立ち上げ、現在も管理人を務める白石俊平氏が開催のご挨拶。日本のHTML5界をリードしてきたひとりです。

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「この2年でHTML5 Developers JPへの参加者も、HTML5とか勉強会の参加者も倍増した。HTML5への関心が日々大きくなっているのを感じます。この盛り上がりをもっと高め、個々の開発者やデザイナーのスキルを底上げし、日本のHTML5関係者のプレゼンスを世界に示していきたい」と白石氏。今回のイベントをきっかけに、HTML5に興味をもつ人々の裾野を拡げていくため、コミュニティの名称も「HTML5 Developers/Desingers JP」にあらためていくそうです。

次に登壇したのはグーグルの及川氏です。Google ChromeやGoogle日本語入力などの開発を国内でマネージしていることでも知られており、Web関連の世界ではその名を知らない人はいないのではないでしょうか。

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HTML5は現在、さまざまなシーンで急速に普及しています。及川氏はAmazonが新たに開発したHTML5ベースの電子書籍リーダー「Kindle Cloud Reader」について触れ、⁠HTML5が読めるWebブラウザであれば、どんなプラットフォームでも動作可能。こういうWebアプリケーションが今後どんどん増えていくだろう」と予測します。

また、ご自身が開発の中心に立つGoole Chromeについても言及、⁠Chromeは"Webブラウザは今のままで良いのか?"という問いから生まれた」と語り、

  • オープン
  • スタンダード
  • クラウド

をキーポイントに、フロントエンドとしての機能を徹底的に練りあげて作成したブラウザであると解説。及川氏は、とくに「Webアプリケーションが動くベース」としての役割を重要視してきたことを伺わせます。当初からChromeウェブストアを設け、Webアプリケーションの開発を促進してきたこともその一環といえるでしょう。⁠インターネット上の流通コストは既存の世界とは比べ物にならないほど格安。今は一個人であっても世界に向かって自分のアプリケーションを発信できる時代。開発者が世界に打って出る機会を積極的に支援する、それがChromeの役割」と述べます。

また、日本国内でのHTML5の普及について、⁠Google検索の結果では、"HTML5"というキーワードの検索回数は日本がUSを大きく凌駕している。HTML5をテーマにした書籍も数多く、雑誌やオンラインメディアで取り上げられている記事を含めると膨大な数に上る。こういったイベントのような勉強会も数多く開催されており、HTML5の普及という意味では日本は十分に成功している」と高く評価します。

その一方で、⁠Google Chromeのアプリストア(Chromeウェブストア)に登録されているアプリのうち、日本人の手によって作られたものは、少しずつ増えてはいるものの、まだ非常に少ない。海外の企業からクールで美しいアプリを開発/デザインできる日本の企業や人材を紹介してほしいと頼まれることがあるが、紹介できるのはほんのわずか」というやや残念な言及も。これを踏まえて「日本のHTML5開発は次の段階に入るべきだ」と強く訴えかけていました。HTML5の普及というステージから、世界中の開発者/デザイナーのお手本となるようなサイトやWebアプリケーションを生み出せる環境を早急に整える必要性があるということだと思われます。

もっとも明るい話題も少なくありません。⁠先だって話題になったThe Google Puzzleは日本チームのアイデアが形になったものだし、OK GoのHTML5で作られたプロモーションビデオ(Googleとのコラボレーション)は日本に向けて発信されたメッセージ」とし、世界中の市場が日本に対して注目し続けている今だからこそ「コミュニティどうしが組織を超えた形で混ざり合い、日本の開発を次のステージへもっていこう」と呼びかけられました。

最後に白石氏がふたたび登壇し、今後の同コミュニティのあり方について話をしました。⁠HTML5 Developers/Designers JPは3つのミッション"つながる/学べる/盛り上がる"を掲げている。今後もこれをベースに盛り上げていきたい」とし、地方コミュニティとの関係を強化するため「HTML5 Developers/Designers JPがハブ的な存在となり、各組織を有機的につないでいきたい」とのこと。当日は大阪や名古屋などの地方会場を、YouTubeによるライブストリーミングで実験的に接続し、パブリックビューイングとしてキーノートやセッションの模様が配信されました。

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現在、同コミュニティの活動はメーリングリストがベースになってますが、白石氏は「正直、あまり活発とはいえない状態」だといいます。メーリングリストでは気軽に質問できる雰囲気を作りにくいこともあり、今後はFacebookページなどのソーシャルメディアを使ったメンバー間のコラボレーションを積極的に図っていきたいとのことです。

最後に白石氏は「本日をもって、日本のHTML5シーンは第2章に入ります!」と宣言し、日本のHTML5開発者/デザイナーとともに新たなステージを迎えたとして、基調講演を締めくくりました。

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