エンジニアサポート CROSS 2015 レポート

「デザイナーからのラブレター ~デザイナーが本音で話すエンジニアとの新しいカンケイ~」レポート

2015年1月29日(木⁠⁠、横浜港大さん橋ホールにてエンジニアサポートCROSS 2015が開催されました。本稿では、本イベントの一セッションであるデザイナーからのラブレター ~デザイナーが本音で話すエンジニアとの新しいカンケイ~についてレポートします。

なお、本セッションの感想はTogetterにまとめられています。

セッション概要

本セッションでは、スタートアップ/ベンチャーで活躍しているWebデザイナー/フロントエンジニアが集まり、パネルディスカッションを実施しました。テーマはずばり デザイナーとエンジニアの関係性

デザイナーの業務領域は日々拡大しており、エンジニア顔負けにGitを使いこなす人もいます。逆に、エンジニアと言えどフロントエンド制作に触れる機会が増えてきており、デザインと無関係ではいられません。

お互いの担当範囲が不明確となりつつある昨今、両者の理想の関わり方に関して熱い議論が繰り広げられました。

スピーカーの自己紹介の後スライド⁠、セッションオーナーの藤崎祥見氏⁠株⁠キッチハイクは以下の4つを本セッションのテーマとして提示しました。

  • 相手を理解する
  • コミュニケーションについて学ぶ
  • 成功パターンを知る
  • 理想の関係
藤崎祥見氏
藤崎祥見氏

相手を理解する

1つ目のテーマ「相手を理解する」では、デザイナーの仕事へのこだわりや考え方について、トークが繰り広げられました。

⁠株⁠nanapiの木村真理氏は「デザインは情報の塊として捉えていて、最適な見え方を常に追求してpx単位でこだわる」とコメント。またそのアプリ(サービス)がユーザのどういう課題を解決するかという事を重視している。と言う事で、デザイン制作に留まらない目線でサービスを捉えているのが印象的でした。

木村真理氏
木村真理氏

⁠株⁠Fullerの櫻井裕基氏は、⁠ユーザの立場に立って考える事を重視している。最近はデザインと機能が別れてしまっているものが多いが良くないと思っている。機能美とはデザインと機能が融合している事」と元エンジニアらしい意見を披露。エンジニアと楽しくやれる事も重視しているそうです。

櫻井裕基氏
櫻井裕基氏

⁠株⁠サイバーエージェントの新妻里夏氏は、⁠デザインは勿論だが、説明文や文言に関してもこだわりを持っている。キャンペーンの文言などはユーザにとって理解しやすいものになるまで練り直す。デザインのゴールは伝える事。伝わりやすい仕組みを作るのがデザイナーの仕事と語っています。エンジニアからするとデザイナーは華麗なデザインを作成するというイメージがありますが、それだけでなくマクロな視点でデザインを捉えているという事を認識させられました。

新妻里夏氏
新妻里夏氏

⁠株⁠LIGの堀口誠人氏は「デザイナーのこだわりは人によって違うかもしれない。デザインの際にはなるべく迷わないよう、黄金率やフレームワークなどを適用していくようにしている」とノウハウを披露。

堀口誠人氏
堀口誠人氏

デザインの黄金率に関してはサイバーエージェントクリエイターブログのデザインは8の倍数でできているという記事に詳しい情報が載っています。

総じて、デザイナーは視覚的なデザインのみならずサービスのユーザに対する価値に対してこだわりを持っているという事が伝わってきました。

コミュニケーションについて学ぶ

2つ目のテーマ「コミュニケーションについて学ぶ」のお題は、デザイナーが一緒に仕事をしやすいエンジニア像について。

堀口氏は「フロントエンドのデザインまで踏み込んで提案してくれると良い。ラフの段階と実際に実装した画面はどうしてもイメージがずれる事もあるので、デザイナーの話を鵜呑みにしないで提案してほしい」とコメント。

木村氏も「デザインの領域にまで踏み込んでいけるエンジニアは良い。デザイナーに遠慮してはいけない。殴りあうくらいの気持ちで議論した方が良い。 デザインのゴールはPSDを納品する事ではなく、ユーザの課題を解決する事と力強いコメント。

デザイナーにとって仕事をしやすいエンジニアとは、 デザインの領域まで積極的まで踏み込んで議論できるエンジニアという事がわかりました。また、その際には画面のスクリーンショットをベースに会話をするなど、認識がずれないように議論を進める工夫が重要であるという事です。

成功パターンを知る

3つ目のテーマ「成功パターンを知る」では、普段の業務をベースにチームとしてうまくプロダクト開発を進めていくための秘訣に迫ります。

木村氏は「UIの議論は紙でサクッとしてしまう事が多い。喋ったらとにかく視覚化していく事が大事。普段いいなーと思ったデザインはPinterestに共通のボードを作ってイケてるUIを共有していると語り、情報共有の重要性に言及していました。

新妻氏は「うちは業務委託やフリーランスの方に来ていただいている場合も多いので、積極的に意見を吸い上げる仕組みを作るようにしている。そして吸い上げたものをカンバンに張り出し、プロデューサーに見せて意思決定をする」と仕組み作りにも注力しているとの事。

堀口氏は「最初から関係者全員が関わって決める事が成功パターンだと思う。昔短納期のヤバい案件があったけど、最初から全員関わって行ったら結果的に良かった。受託開発の場合は途中でデザインをひっくり返す事があまりできないので、その辺はコミュニケーションも重要になってくる」との事です。

理想の関係

最後のテーマ「理想の関係」では、これからエンジニアとデザイナーの関係がどうなれば良いのかに関して議論がなされました。

堀口氏は「今後はどんどんレイヤーが複雑になり、分業化が進むのではないか。ただ 複数のレイヤーへの知識があると話を通しやすくなるので、どんどんインプットしていく事が大事」という事でインプット活動の重要性を指摘。他の方々も同様の意見で、エンジニア/デザイナーを問わず、引き出しの多さというのが今後のクリエイターの鍵になってきそうです。実際にFacebookにはデザイナーという肩書きはなく、エンジニアとデザイナー両方できる人を集めているそうです(両方できる人はユニコーンと呼ばれます⁠⁠。

また、⁠エンジニアがどういう事を理解していれば働きやすいか?」という質問に対しては、⁠デザインの専門知識というよりは、サービスに対してこだわりを持っている人が良い」という事で、単純にコードを書くだけではなくサービスに対してコミットできるエンジニアが求められています。

まとめ

本セッションでは、エンジニアとデザイナーの理想の関係について迫ってきましたが、重要なトピックをまとめると、以下のようになります。

  • デザイナーは視覚的なデザインのみならず、サービスのユーザに対する価値に対してこだわりを持っている
  • エンジニアはデザインの領域にまで積極的に入って議論する事を求められている
  • デザインに関して議論する際は、空中戦になりがちなので共通言語(ビジュアルに訴える等)で議論する事が大事

今後は、エンジニアといえどコードのみならずデザイン、さらにはサービスの価値に関してまでコミットできるエンジニアが求められていると言えます。

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