DeskTopLive.asイベントレポート、3回目は小阪淳さんです。
小阪さんといえば、イベントの際は「僕は今日はアンチFlashでいきます!」とおっしゃってDirectorの魅力をご紹介してくださったのですが、実は、あの『4D2Uナビゲーター』がAS1で書かれていた、という話もあり、濃い裏話を期待してお邪魔しました。
では早速…。
──DTL.asお疲れ様でした。事前打ち合わせでお話ししていた、「プログラムの最適化」あたりから、是非聞かせてください。
小阪さん(以降、小):僕、Flashをすごく初期の頃、「FutureSplash」という名前の頃から使ってて、丁度、プログラム環境として成熟していくのを追いながらやっていました。最初は変数すらなかったんですよ。
──そうですね。僕も、そしてたぶん今Flash界に居る方も、その時代を知らない方も多いと思うので…「FutureSplash Animater」どんな感じだったんでしょう?タイムラインは今の物と同じだったんですよね?
小:そうですね。Directorもそうなんですけど、プログラムというよりは”タイムラインの制御用のマクロ”としての役割だったんです最初は。だから、それこそ変数ではなく、フレームの指定しかできないんですよ。 フレームナンバーなんぼまで飛びますと。[gotoAndPlay]。
──gotoAndPlayはあったんですね。
小:そう。基本的に[gotoAndPlay] 的なものと[gotoAndStop] 的なもののためのものですね。
ボタンを押したら次のシーンに動く。その程度のマクロを組むためのものだったんです。
例えば、その当時、変数を使うためには、いちいち”変数用のムービークリップ”を使って今どこにいるかを変数にするんですよね。で、1あがったら、変数で普通++ってして1あげるのを、フレームを1個動かしてって…。
──あぁ、もうフレームが記憶領域なんですね。
小:そうそう。すごいハイエンドな環境で、ローエンドな事やってる。何か良く分かんない事になってる。(笑)
僕がFlash4で、簡単な物理的なシミュレーション、例えば、バネをのばした、そこまでの距離を測るのに、三平方の定義ってあるじゃないですか。平方根が必要なんですね。でも(Flash4に)平方根がないんですよ。
で、平方根が取れないんで、ニュートン法っていう方法を使うんです。
平方根だけではなくて、色々な関数に適用できる近似値を出すための計算で、ループで計算するんですけど、ループ回数が精度に比例してくる。
で、自分に必要な精度まであればいいので、ループ回数をコントロールしちゃえば、すごく簡単な計算で平方根がだせるんですね。
その後Flash5くらいで、Mathが出て来て平方根が取れるってことになって、平方根に書き換えたら急に遅くなったんですね。
で、なんじゃい!?と。
──ほー、オレが書いた方が速いと。
小:そう。で、プログラム環境が進化してるにも関わらず、実行するファイルが遅くなる。
平方根を使った方が解りやすいんですけど、実は、プログラムを速くするには色々そう言う裏技みたいなのがあるんだということを、知りました。
で、プログラマーの人にちょっと話しを聞いたら「割り算を減らせ」と言うんで、割り算を減らしてみたんですけど、あんまり速くなんないんですよね。
たぶん、かけ算よりもややこしいルーチンでやってるから、(割り算が)遅くなると思うんですけども、(自分が作っている物の場合)あまり効果無いなと。
環境によって効果のあるものと効果の無いものがあって、で、その効果あるもう一つは、三角関数なんですよね。
『4D2Uナビゲーター』の場合は、その、三角関数を0.1度刻みのテーブルで組んでるんですよ。
──10だから、3600?
小:そんなテーブルをサインとコサインを組んでるんですね。
あるシーンでの角度が決まっちゃうと、そこで使う関数の数値って決まってくるんです。サイン×サインとかサイン×コサインっていう掛け算を何度もルーチンの中で使うので、それも一気に計算しておくんです。角度が決まったら、それを全部使うっていう風に。
関数をいかにコンパクトにまとめて省略かするかっていうのが速度にものすごく大きく影響して行くなっていうのがわかりました。
どうやって速度を計っているかっていうと、ストップウォッチで計ってるんですよ(笑)
──お、今回は速かったーみたいな?
小:そうそう。割り算省いたけど全然効かねーなーみたいなね(笑)
わざわざね、割り算を省くためにややこしい事やるぐらいだったら、割り算のままでいいやと。
──そうですねー。
小:ソースコードを見ると後で「何やってたんだ!」っていうことが結構あります。可読性と速くする裏技を使うののせめぎ合いみたいなところがあるんですよ。
で、速くするっていう時のネタとして、僕はあんまり使ってないですが、必要な精度を満たす範囲での関数の簡略化がありますよね。
重力多体問題っていうのを計算する人たちがいて、いわゆる物理学で天文の動きのシミュレーションとか、質量を持った小さな点が無数にある場合の振る舞いとかをシミュレーションで計算して、宇宙の秘密を解き明かそう、みたいなことをやってる人たちがいて、そういう、ものすごい膨大な計算をより速くするためのノウハウを知ってる人たちに話を聞くと「同じ事やってるな」っていうことが分かって。
小:例えば、関数をリニアに近似して間の値を埋めていくとか、そういう、すごく地道なやり方を積み重ねてカツカツなものができてるんだなっていうことがよくわかって、「あぁ、そういう苦労も大事だな」て思いました(笑)
小:やっぱりちょっと大変なんですよね。与えられているものをそのまま使うんではなくて、プログラム的には遠回りをする事になるから、結構めんどくさかったり、しんどかったりするんですけど、効果的な事があるんだなと。
結局Flashで何ができる、できないっていうのは、スピードの問題じゃないですか。逆にスピードを無視すれば、なんだってできるわけですよね。
──ですね。
小:ところが、それがコンテンツとして成り立つか、成り立たないかっていうのは、スピードとのせめぎ合いなんですよね。
だから「こんなことで、3日も4日も費やして俺は一体なんだろ」…みたいに思っちゃう事もあるんですけど…されどスピードなんですよ。たかがスピード、されどスピード。
小:ある限られた、CPUのスペックの中で何ができるかっていう、上限が決まってるからその中で何が出来るかってことを考えざるを得ないってことがあって、スピードってものすごい重要な要素ですよね。それで表現変わってきますもんね。
過去から繋がる手法
小:高速化、最適化のノウハウの情報を共有して、より簡単に自分が必要な手法にアクセスできる、そういうコミュニティみたいなものがどんどん構築されてくると、すごく便利だと思うんですけどね。
──便利ですね。いまはそれに特化したコミュニティは見当たらないですね。
小:僕はもともとBASICをちょっと触ってた事があって、触ったばかりの頃はアルゴリズムっていう概念に興奮するみたいなところがあって、その頃に得た知識や感覚が今でも繋がっていて、それが自分にとって貴重な情報だったりする事と、
逆にコンピュータってどんどんどんどん進化してるから、古い時代のtipsみたいなものってどんどん捨てられてくっていう事と、二つあるじゃないですか。
「俺は一体何のために苦労してたんだ」みたいなむなしさに襲われることもあるんですけど、実は、それってどっちに転ぶかわからないですよね、知識って。
さっき言った、すごく地道な”速くする手法”って、それこそパソコンが遅い頃の方がもっと重要だった訳ですよね。
その頃の知識ってずっと繋がっていて、実は大事な知識だったりするんですね。その辺りに関しては、もっと情報を共有できるといいなと。
──そうですね
昔の知識で、さすがにそれは時代遅れだろうと捨てられたことが、また別のプラットフォームで急に役立つ事ってありますね。
プレイステーションの3Dの高速化手法が今Flashで3Dで使えるようになって出てくるとか。
小:それこそライブの時にお話しさせてもらった“Flashで今できる!って言って騒いでる事ってとうの昔に出来てた”って話ですね(笑)
──Directorのお話ですね!
小:Flashでできるから凄い、っていう事は、もちろんあると思うんです。これだけ普及したプラグインで、しかも、Directorに出来ない事は山ほどある。それと、3Dが共存できるっていう意味では凄いことでもあるんですけど、もうちょっと過去を知っても良いのかなって言う気もちょっとしたりもするんですよね。(笑)
小:僕だって知らない過去は沢山ある訳です。
なんだったかな、1970年代とか、初期のテレビゲーム、それこそパソコンじゃなくて大型コンピュータみたいなのでやっていたテレビゲームについてのテレビ番組を見て、最初のテニスゲームって平面だったじゃないですか。
それが初期段階から、ポーンて(ボールがバウンドする身振り)こう横から見てるんですよ。90度違う訳ですよね。ポーンてやってポーンてやって遊んでるんですよね[1]。
で、「あ、そっか、よく考えたら、コンピュータって軌道計算で進化したそうだから、こっちのほうがナチュラルなんだ」と思って。
──なるほど!
小:昔の、表現をミニマルにしてやりたいことだけのエッセンスがそこで実現されている状況って、今の表現が豊かな状況から見ると、逆に面白かったりもする。
『4D2Uナビゲーター』も、なるべく速くするために表現は極力、省きました。
昔のコンピュータゲームを知ってる人が(『4D2Uナビゲーター』を)見ると、ちょっと懐かしく思ったりするんですよね。
ベクタースキャンの頃のゲームっぽい感じがするんだと思います。
逆に今、ベクタースキャンのテレビゲーム見た事無い人が見たら「何これ?」みたいな。
──光ってる!って?
小:そうそう。これブラウン管?みたいな、そういう感じになると思うんですよね。(笑)
ひょっとしたら若い子たちの中には、ブラウン管を見た事無い人もいるかもしれないですね。それだけ僕が年とったって事なんでしょうけど。(笑)
逆に新しいものが新鮮とは限らない。
そんなことは昔からずっと言われてる事なんだけど、昔のものを見る機会ってどうしても減るじゃないですか。
──そうですね。
小:でも、今いいのは、一生懸命調べ無くてもネットにいっぱいソースが転がっていて、見ようと思えばすぐに見れちゃうというのがすごく良いと思うんですよね。
デジタルとアナログ両方を知ること
小:僕より若い人たちでアナログを知らない世代の人たちっていうのは、結構いるわけです。
「初めて絵を描くのがコンピュータだった」みたいな場合すらある。そうすると、自分がデジタルの表現しか知らないということに閉塞感を感じる人たちっていうのが結構いるみたいで、逆に粘土こねたりとか、そういうことに立ち返ることもあるようです。
アナログに立ち返らせたのは、実はデジタルの功績だと思うんですよ。デジタルっていうものが何を表現できるかっていうことをふまえた上で「アナログってこれだけすごいんだ!」と。
3Dですごい精巧な昆虫を作っても、本物の昆虫よく見たら負けてるみたいなことあるじゃないですか。「1匹のハエに負けてる…」みたいな。(笑)
──あります。すごく、あります(笑)
小:デジタルのすごいのは、デジタルにしかできない世界を作ることももちろん、逆にリアルな世界の凄さっていうものを再認識できることでもあるんですよね。
だから、Flashを使ってる人たちがそういう意味で振り返るきっかけみたいな事が増えてくればいいなと思うんですけどね。
──そうですね。
イベントの感想でも、スペシャルトークで見せた、真鍋大度さんの、顔に電極付ける作品や、アンカーズラボがやっている外部装置をを使ったコンテンツに興味がありますって言う人がすごく多かったです。
画面の中だけじゃなく、リアルな世界に影響があるものを作りたい人が多いと感じて、面白いなと思っています。
小:いわゆるデザイナーと言われる人たちは、僕らの頃、圧倒的に“グラフィックデザイナー”が多い訳ですが、今はひょっとしたら“webデザイナー”のほうが数的に多いかもしれないじゃないですか。
逆に紙をやれって言われても出来ない、っていうか、紙に、デザイナー自身が触らなくなってきてるっていうのもある。
で、それは別に悪い事ではないんですけども、意外と実物に触れるってことの面白みに触れる機会が、仕事上になかったりしてくるのは寂しい感じがしますよね。
だから、イベントで体を使うのが面白かったと言うのは、そういうことの反動かなと思いました。
僕、あんまりよく知らなかったんですが、ある展覧会で“Gainer”の本が売ってて「へー、こんなもんがあるんだ」って早速買って作品に使ったりしてたんです。
「Make」のイベントの作品の数々とか。こういう流れっていうのは、すごく健全だなー、すばらしいなーと思って。(笑)
──そうですよねー。小阪さんは立体作品も作られたりするんですか?
小:どちらかというと、博物館やチルドレンミュージアムに納める作品を作る事が多いかな。触って何かちょっとアクションがあったり、そういうものです。
最近、音関係の作品が多いですね。4×5のスピーカが上向きに並んでいて、スピーカーからは、オーケストラみたいに1個1個違う音が鳴っていながら、1つの音として聞こえるような作品です。スピーカーとスピーカーの間を人が歩けるようにしておいて、スピーカーに耳をそばだてると、バイオリンの音、コントラバスの音などバラバラに聞け、それが、オーケストラだけではなく、ある森の音などそういう色々な要素が1つの固まりになって音の場を作ってるようなコンテンツを作っています。
──面白そう!
小:もっとアクティブに動くようなものも作ってみたいなと思ってます。“二足のわらじ”じゃないですけども両方やっていきたいタイプなんで、実際に触れる作品もがんばりたいなと思って。
──なんでもできるんですね~。
小:いや、“できる”んじゃなくて“やる”んですよ。(笑)
できるかどうかわかんないですけど、やるんですよ。
自分はコレだ、と“決めない”能力
小:最近思ってるのは、昔に比べると「基礎的能力」っていう、“何かをやるために学ばなきゃいけない”とか“習得しなきゃいけない技術”ってのが、減ってる気がするんですよね。
それは、良くもあれば悪くもあって、例えば、音楽をやりたいってなったら、昔だったら“楽器が弾けないとダメ”、“譜面読めないとダメ”とかあったのが、今だったら楽器できなくったって、譜面読めなくったって音楽が作れる。
それこそ音を集めてきてコラージュしたりとか、色んな音楽の作り方もありますし。
自分が何かをやるために必要な技術が減ってるから、逆に、自分が今までやったことのないチャレンジをする事がすごい楽になってるんですよね。
良いものができるかどうかは、また別ですよ。
でも、敷居が下がる事によって、違うジャンルの人が入ってくるのが、そのジャンルにとってすごく刺激になったりするもんですよね。
──そうですね。思います。思います。
小:音楽やってた人がFlashに目覚めて、、、とかね。
──面白いですよね。Flash界でもずっとFlashだけやってた人ばかりじゃなく「わー、色んな人が入って来た」みたいな状況になってくると。
小:いいんじゃないですか。やっぱり競争あっての進化ですから。
──逆にFlashやってた人が、リアルに動くものに手を出してみようとか、もっとアート寄りな作品を作ってみたい!とか、そういう人もいっぱい出てきますね。
小:ね。そうなってくるのと難しいのは、これで食ってくっていうのが言いにくくなるんですよ。
──あぁ、そうですね。なるほど。「専門」っていうのがだんだん薄れて行く。
小:そうそう。その能力を持ってるからといって食っては行けなくなる(笑)
“自分にとって必要な能力”とか、“ものの見方”っていうのを、自分で選ばなくちゃいけなくなって来ている。
一つ武器になるのは、“何かの能力”というよりは“フットワークの軽さ”っていうのがある思うんです。“自分はこうだー!”って決めちゃうと、潰しが効かないじゃないですか。
だから、“決めないっていう能力”は結構使えるぞと。(笑)
自分はデザイナーとか自分はアーティストとか、って、実際、仕事に入ったら違う立場の方がいい場合ってありますよね。
それが一番大きかったのが、『宇宙図2007』っていうポスターを制作した時です。
小:僕の場合、『宇宙図』を作る時の僕の“デザイナーとして”の仕事って、全体の2~3割なんです。後は“内容を考える”仕事だったんですよね。
僕が科学的なコンテンツの内容に対して云々を言うのは、本来なら越権行為というか「オマエにそんな事求められてない」ということだと思います。
でも、僕は“プロの素人”なんだって、言い切ってみたんです(笑)
心の中で、 「僕に分からない事は書かない!僕に分かる事だけを書きます!」みたいなことを思ってて。
──すごいです。
小:そして、色々調べて行くと、色々な事が分かって来て、実際に掲載する文章も僕が元原稿を書いたりする流れになったんですよね。
そんな立場も仕事としてアリなんだっていう発見が大きくて。
じゃ、僕はあんまりデザイナーとか名乗らないで仕事をする方が良いんじゃないかな、と最近はそういう風に思ってるんですよね。
──トークの時に見せていただいた“対話するためのFlash”では、専門家の方と対話をし、『宇宙図』の元となる考えを理解するという目的で作られていますよね。
小:そうそう。やりとりしている間に“実はそんなに難しい話をしてるんじゃない”ってことが分かって来たんですよね。
一般に配るものですから、そんな難しい事やったってしょうがない。
小:で、良かったのは“専門家”って言われる人たちと話す時に、対面して話すと専門用語を言われた時に僕が知らなかったらそこで対話が止まってしまう。
テクニカルな単語をボンボン出されると、全然コミュニケーションできなくなる。
ところが、メーリングリストなどでやり取りする時は、専門用語が来てから調べてメールを出せる。自分の知識のなさをカバーできちゃうんですよね。
すると、さっきの基礎的能力っていうのが、どこのジャンルに行ってもそれほど問われなくなったのと同じように、今度は専門の人たちと対等に喋ったりする事がある程度可能になってくるんです。
小:そういうことが、自分にとって、フットワークの軽さを維持するノウハウになってくるわけですね。
つまり、なるべく人に会わないと!ますます引きこもって行くみたいな(笑)
──そうですよね。分からない事もすぐ調べて、理解して、組み立てて、返事を返すっていうのも能力ですもんね。
小:いちいち説明を求めるよりも、この人に聞くべき事だけを聞くっていうやり取りの省略化もできますから。色んな意味で自分の立場を身軽にする道具がネットによって提供されているんだなっていうのをつくづく思いますね。多分、10年前だったらそんなことありえないです。
“Flashならでは”の3D表現
小:これも(DeskTopLive.asで)話し忘れた事なんですけども、多分時代の流れとしてFlashで3Dやってく方向に行くと思うんです。
僕がちょっと思っていたのは、”Flashでポリゴンをやる”っていうのが何となく良く分かん無いとこがあって。Flashって曲線が描けるから、3Dで曲線を描くっていうコンテンツがもっと増えると思ったらほとんどないんですよね。
(3Dを扱うのに)ポリゴンが良いっちゃ良いんです。実際、曲線にすることで出来なくなる表現がある。たとえば陰線処理ってのはすごく難しくなってくるので、色々問題はあるんですけども、“Flashならでは”みたいなものがもっと出て来て欲しいなっていうのを思います。
──実は、今やろうとしてるんですけど、“Fill”をしなければ良いかなと思うんですけどね。
小:僕も上手い陰線処理方法を今、丁度模索しているところで、同じような事考えてるかもしんないですね。
──そうかもしんないですね。(笑)
Player10って”まとめてポイントの変換”の他にドローイングAPIがすごく整理されたんですよね。
例えば、今まで複雑な曲線描くのに「curveTo」「curveTo」「curveTo」って何回も呼ばなきゃいけなかったんですけど、一発の呼び出しで複数の頂点を渡して曲線を描けるようになったんですよ。
今仰られてたような上手い陰線処理と組み合わせればすごいものができるんじゃないかって思うんです。
小:そうですね。そこ超えると良いですよね。
──そうですよね。
今Flashでやられてる方ってベースとして昔別のプラットフォームで3Dをバリバリ書いてた、つまりレンダリングエンジン書いてたって方は(そうは)いないと思うので、多分、本で調べながらだと思うんですよ。
だから、よそのプラットフォームにある成熟されたテクニックをそのまま持って来ると、必然的にみんなポリゴンに行っちゃうんだと思うんですよ。
小:結局、時代をトレースしてるじゃないですか。
──そうそうそう。時代をくりかえしてるんですよね。
そこに昔、別のプラットフォームでゴリゴリ、プログラム書いてたっていう方が入ってくると、「今はポリゴンじゃないんじゃない?」みたいな発想もでてくるかもしれない。。
『4D2Uナビゲーター』の時にもFlashにするかDirectorでいくか悩んで、結局Flashにしたんですよね?
小:そうそう。Directorって3Dで曲線がかけないんですよね。円だと、多角形近似をしなきゃいけないじゃないですか。例えば、32角形とかにすれば、ある程度滑らかに見えるんですけど、3Dにして傾けるとカクカクな部分が目立ってくるんですよ。きれいな軌道にはまるで見えない…。もう、それは許せない!(笑)
──そこだったんですね。
小:それだったら陰線処理は捨てる!って思いましたね。(笑)
(『4D2Uナビゲーター』では)Flashで地球作ってるんですけど、データの作り方とか地球を作るのがめちゃめちゃ大変なんですよ。
球を常に輪郭で表現してて、プログラムで球面上に滑らかに曲線を貼付けられるのかどうか分からなくて…。だから、日本があの球に張り付いてる状態を見たとき、自分でも「あ、できるんだ!」と感動しました(笑)
Flash が持ってる精度が、それを表現できる精度かどうかってのは、やってみないと分かんなかったです。それこそ、ぴったり張り付かなくてどっか浮いちゃったりする可能性だってあったんですけど、割と上手くいきました。実は、ちょっとずれるんですけども、誤差範囲内です。
やってみないと分からない事って沢山あるし、せっかくやるんだったら、ちょっと苦労してでも人と違った事やりたいじゃないですか。
──『4D2Uナビゲーター』は新鮮ですもんね。
小:ありがとうございます。
今はみんなFlash使ってるから、ひょっとしたら違うツールを使うってことで、新しい切り口が得られるかも知れないですね。僕が(DeskTopLive.asで)ご紹介したツールなんて、めちゃめちゃメジャーなやつなんで、僕が知らないツールもいっぱいあると思うんです。
あんまりそういうのに右往左往するのも本末転倒かと思うんですけど、でも、これだけ色々な人たちが様々なものを使えるとは言っても、まだまだやられてない表現が沢山あって、
模索できるものは沢山あると思うから、若い人たちが作るものを楽しみにしてるんですよね。
──やる気でますねー。本当に。
さらなる追求
小:今、『4D2Uナビゲーター』をAS3に書き換えてるところなんです。ほぼ、書き変わったんですけども、AS3って座標変換できるようになったじゃないですか。
多分、それ使うと遅くなると思うんですよ。
──ですよねー。仰ると思いました。(笑)
小:Flash7の頃には、ArrayしかなくてVectorがないんですよ。web見てたら、ArrayよりもVectorの方が全然速いっていう話を見つけたんですけど。
──そうですね。特にプリミティブ型の時は。
小:だから、それ書き換えると結構速くなるかなと。
純粋に(プログラムを)置き直しただけで、1.5倍くらいスピード上がったので、やっぱり、書き直さないとなと思いつつ…。
でも、AS3になってから結構敷居はあがったんじゃないですか?
──そうですね。
クラスを書かないと、何も始められないとかありますもんね。
小:あと、変数宣言とかシビアですよね。
昔だったらちょろっと簡単に書いてたものが、結構めんどくさかったり。クラスっていう概念っていうのは、どうなんですかね?
最近はなじんでるんですけど、僕らはそれこそ「オブジェクト・オリエンテッド」なんてのが無い頃からプログラムを触ってたので、最初ものすごく違和感のあったんですけど、今の子達って、いきなり「オプジェクト・オリエンテッド」が、当たり前なわけじゃないですか。それもすごいことだなと思って。
──そうですねー。最初は分かんないと思いますね。
──でも、全部AS3で書き直された後にAS1のコードを公開されたら、みんな見に行きますね。(笑)
小:いや、え、いや、全然何にも無いです…。正直、今お話ししたのが全てです。(笑)
いわゆる秘密にしておくような、アンドキュメンテッドな命令とかってのは全然ないですし、僕なりのノウハウみたいなものは正直、、、ない。ストップウォッチで計るとか、そういうノウハウですよ。(笑)
FlashKit.comからソース拾って、やり方を知って、「あ、基本的にはこうやるんだ。」と、そこから始まって、どんどん付け加えてやってるだけの話なんで。
──当日はそれだけ仰ってたんですけど、それだけ聞くのと今の話と全然違う。(笑)そこからの積み重ねがゴッソリありますね。
やっぱりすでに出来てるものに対してAS3で書き直して、さらにここを直したらもっと速くなると思って気持ちをちゃんと持って行けるところがやっぱりすごいですよね。
小:モチベーションを維持するってことが何事にも大切じゃないですか。
それが例え本当じゃなくても、自分のやってることが、自分にとって価値があるってどんだけ思い込めるかなんですよね。
やってみないと、上手く行くかなんて絶対に分からないし、大概の事は上手く行かないんですよ(笑)
だから、どうやってモチベーションを維持して行くかっていうのは、すごく大事ですよね。
小阪さんのお話、いかがでしたでしょうか。このレポートを読んでくださった方に、取材したBOWとして是非お伝えしたいのは、この室内!自作された机、部屋のあちこちにある作品達、まさに憧れのアトリエでした。
そんなアトリエでの小阪さんとのお話、本当に楽しく、大興奮でした。
当日の15分という短い時間ではとてもお伝えしきれなかった、小坂さんの魅力を少しでもお伝えできていると嬉しいです。
当日の様子はニコニコ動画で見ることができますので、あわせてどうぞ。
次回のレポートは一週間後を予定しています。お楽しみに!
[この取材は3月30日に行われました]