DesktopLive.asイベントレポート

#3 小阪淳さん

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過去から繋がる手法

小:高速化,最適化のノウハウの情報を共有して,より簡単に自分が必要な手法にアクセスできる,そういうコミュニティみたいなものがどんどん構築されてくると,すごく便利だと思うんですけどね。

─⁠─便利ですね。いまはそれに特化したコミュニティは見当たらないですね。

小:僕はもともとBASICをちょっと触ってた事があって,触ったばかりの頃はアルゴリズムっていう概念に興奮するみたいなところがあって,その頃に得た知識や感覚が今でも繋がっていて,それが自分にとって貴重な情報だったりする事と,

逆にコンピュータってどんどんどんどん進化してるから,古い時代のtipsみたいなものってどんどん捨てられてくっていう事と,二つあるじゃないですか。

「俺は一体何のために苦労してたんだ」みたいなむなしさに襲われることもあるんですけど,実は,それってどっちに転ぶかわからないですよね,知識って。

さっき言った,すごく地道な⁠速くする手法⁠って,それこそパソコンが遅い頃の方がもっと重要だった訳ですよね。

その頃の知識ってずっと繋がっていて,実は大事な知識だったりするんですね。その辺りに関しては,もっと情報を共有できるといいなと。

─⁠─そうですね

昔の知識で,さすがにそれは時代遅れだろうと捨てられたことが,また別のプラットフォームで急に役立つ事ってありますね。

プレイステーションの3Dの高速化手法が今Flashで3Dで使えるようになって出てくるとか。

小:それこそライブの時にお話しさせてもらった⁠Flashで今できる!って言って騒いでる事ってとうの昔に出来てた⁠って話ですね(笑)

─⁠─Directorのお話ですね!

小:Flashでできるから凄い,っていう事は,もちろんあると思うんです。これだけ普及したプラグインで,しかも,Directorに出来ない事は山ほどある。それと,3Dが共存できるっていう意味では凄いことでもあるんですけど,もうちょっと過去を知っても良いのかなって言う気もちょっとしたりもするんですよね。⁠笑)

小:僕だって知らない過去は沢山ある訳です。

なんだったかな,1970年代とか,初期のテレビゲーム,それこそパソコンじゃなくて大型コンピュータみたいなのでやっていたテレビゲームについてのテレビ番組を見て,最初のテニスゲームって平面だったじゃないですか。

それが初期段階から,ポーンて(ボールがバウンドする身振り)こう横から見てるんですよ。90度違う訳ですよね。ポーンてやってポーンてやって遊んでるんですよね※1⁠。

で,⁠あ,そっか,よく考えたら,コンピュータって軌道計算で進化したそうだから,こっちのほうがナチュラルなんだ」と思って。

転載編集補足:
こちらの記事の画像も参照のこと。

─⁠─なるほど!

小:昔の,表現をミニマルにしてやりたいことだけのエッセンスがそこで実現されている状況って,今の表現が豊かな状況から見ると,逆に面白かったりもする。

『4D2Uナビゲーター』も,なるべく速くするために表現は極力,省きました。

昔のコンピュータゲームを知ってる人が(⁠⁠4D2Uナビゲーター』を)見ると,ちょっと懐かしく思ったりするんですよね。

ベクタースキャンの頃のゲームっぽい感じがするんだと思います。

逆に今,ベクタースキャンのテレビゲーム見た事無い人が見たら「何これ?」みたいな。

─⁠─光ってる!って?

小:そうそう。これブラウン管?みたいな,そういう感じになると思うんですよね。⁠笑)

ひょっとしたら若い子たちの中には,ブラウン管を見た事無い人もいるかもしれないですね。それだけ僕が年とったって事なんでしょうけど。⁠笑)

逆に新しいものが新鮮とは限らない。

そんなことは昔からずっと言われてる事なんだけど,昔のものを見る機会ってどうしても減るじゃないですか。

─⁠─そうですね。

小:でも,今いいのは,一生懸命調べ無くてもネットにいっぱいソースが転がっていて,見ようと思えばすぐに見れちゃうというのがすごく良いと思うんですよね。

小阪さんの作品。チャックで出来た人形

小阪さんの作品。チャックで出来た人形

デジタルとアナログ両方を知ること

小:僕より若い人たちでアナログを知らない世代の人たちっていうのは,結構いるわけです。

「初めて絵を描くのがコンピュータだった」みたいな場合すらある。そうすると,自分がデジタルの表現しか知らないということに閉塞感を感じる人たちっていうのが結構いるみたいで,逆に粘土こねたりとか,そういうことに立ち返ることもあるようです。

アナログに立ち返らせたのは,実はデジタルの功績だと思うんですよ。デジタルっていうものが何を表現できるかっていうことをふまえた上で「アナログってこれだけすごいんだ!」と。

3Dですごい精巧な昆虫を作っても,本物の昆虫よく見たら負けてるみたいなことあるじゃないですか。⁠1匹のハエに負けてる…」みたいな。⁠笑)

─⁠─あります。すごく,あります(笑)

小:デジタルのすごいのは,デジタルにしかできない世界を作ることももちろん,逆にリアルな世界の凄さっていうものを再認識できることでもあるんですよね。

だから,Flashを使ってる人たちがそういう意味で振り返るきっかけみたいな事が増えてくればいいなと思うんですけどね。

─⁠─そうですね。

イベントの感想でも,スペシャルトークで見せた,真鍋大度さんの,顔に電極付ける作品や,アンカーズラボがやっている外部装置をを使ったコンテンツに興味がありますって言う人がすごく多かったです。

画面の中だけじゃなく,リアルな世界に影響があるものを作りたい人が多いと感じて,面白いなと思っています。

小:いわゆるデザイナーと言われる人たちは,僕らの頃,圧倒的に⁠グラフィックデザイナー⁠が多い訳ですが,今はひょっとしたら⁠webデザイナー⁠のほうが数的に多いかもしれないじゃないですか。

逆に紙をやれって言われても出来ない,っていうか,紙に,デザイナー自身が触らなくなってきてるっていうのもある。

で,それは別に悪い事ではないんですけども,意外と実物に触れるってことの面白みに触れる機会が,仕事上になかったりしてくるのは寂しい感じがしますよね。

だから,イベントで体を使うのが面白かったと言うのは,そういうことの反動かなと思いました。

僕,あんまりよく知らなかったんですが,ある展覧会でGainerの本が売ってて「へー,こんなもんがあるんだ」って早速買って作品に使ったりしてたんです。

「Make」のイベントの作品の数々とか。こういう流れっていうのは,すごく健全だなー,すばらしいなーと思って。⁠笑)

─⁠─そうですよねー。小阪さんは立体作品も作られたりするんですか?

小:どちらかというと,博物館やチルドレンミュージアムに納める作品を作る事が多いかな。触って何かちょっとアクションがあったり,そういうものです。

最近,音関係の作品が多いですね。4×5のスピーカが上向きに並んでいて,スピーカーからは,オーケストラみたいに1個1個違う音が鳴っていながら,1つの音として聞こえるような作品です。スピーカーとスピーカーの間を人が歩けるようにしておいて,スピーカーに耳をそばだてると,バイオリンの音,コントラバスの音などバラバラに聞け,それが,オーケストラだけではなく,ある森の音などそういう色々な要素が1つの固まりになって音の場を作ってるようなコンテンツを作っています。

─⁠─面白そう!

小:もっとアクティブに動くようなものも作ってみたいなと思ってます。⁠二足のわらじ⁠じゃないですけども両方やっていきたいタイプなんで,実際に触れる作品もがんばりたいなと思って。

─⁠─なんでもできるんですね~。

小:いや,⁠できる⁠んじゃなくて⁠やる⁠んですよ。⁠笑)

できるかどうかわかんないですけど,やるんですよ。

著者プロフィール

BOW

ボストーク株式会社に寄生するプロジェクトチームの一つ。
石崎奈緒子,高橋真希子,吉川佳一の3人により2008年10月よりスタート。主にwebを中心に活動中。

URLhttp://b-o-w.jp/