米国時間9月26日~27日にかけて、Evernoteが主催するEvernote Conference(EC3)がサンフランシスコにて開催されましたので、内容についてレポートします。
Evernote Conference(EC3)
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今年は昨年までのEvernote Trunk Conferenceから名称を変更し、Evernote Conferenceというタイトルになりました。通算3度目の開催となるので、略号がEC3となっています。
参加者は昨年を上回る1,000人規模となり,2二日間を通じて多くのゲストスピーカも招いて開発者向け、ビジネスパートナー向け、そしてユーザ向けのキーノートやトークセッション、ワークショップが行われました。
CEO Phil Libin氏のキーノート
午前のキーノートではEvernote CEO、Phil Libin氏の講演があり、かねてから「100年続くスタートアップ企業」を目標とするEvernoteが今年の8月で5周年を迎えたことの報告と、Evernoteの現状についての総括がありました。
世界でユーザ数が7,500万人、オフィスも8カ国に300人超というEvernoteの現状の勢いそのままに、ジョークも交えつつPhil氏のプレゼンはとてもエネルギッシュです
また本EC3でファイナリストが決定されるDevcup、10月から始まるベンチャー支援プログラムであるThe Evernote Acceleratorなど、Evernoteと連携するアプリを積極的に支援する活動も表明。
併せてEvernote公式として優れた製品を紹介するチャネルであったEvernote TrunkというサイトをEvernote App Centerという名称でリニューアルし、アプリやサービスの開発者にとってのプラットフォームとしての立ち位置もこれまで以上に推進していくものと思われます。
Evernote App Center(日本語サイト)
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Evernote本体のアプリについても大幅なアップデートが行われ、Skitchとの連携やiPhone版はiOS7のフラットUI化に伴いデザインの刷新など、開発に際してさまざまな苦労があったことを伺わせていました。
機能面で大きく取り上げられたのは
Evernoteのノートに時間を指定してアラームを起動させることのできるリマインダー機能
新しくなったWebクリッパーの紹介(skitchとの統合)
Skitch をすべてのクライアントと統合。ロゴを一新、Evernoteアカウントも必須ではなくなり画像やPDFのアノテーション(注釈を付ける)ツールとしての位置づけにフォーカス。また、より素早くアノテーションできるようにUIも変更
Evernoteでは、とくにデザインに力を入れていることを強調しており、今年のWWDCでApple Design Awardに選ばれた こともその結果の1つだと考えています。
iOSのSkitchの起動直後の画面。起動してからユーザが可能な限り短いステップでアノテーションを付けて保存できるよう、UIが変更されている
「私たちは、アプリを提供するだけの会社ではなくなりました。」
ここからはEvernoteクライアントを他社のプロダクトと連携させるためのサービス・プロダクトの発表が行われました。
Jot Script Evernote Edition スタイラスペン by Adonit
Adonit社の極細スタイラスペンから、Evernote仕様のモデルが発売されました。EvernoteのiPad用手書きアプリであるPenultimateと連携し、手書きのペンのような使い心地でメモが取れるとのこと。
Jot Script Evernote Edition スタイラスペン
Moleskin
Moleskinとは以前から提携していたのですがが、従来の「Evernoteクラシックノートブック」に加え「Evernoteジャーナル」「 Evernoteスケッチブック」のラインナップを揃えてユーザのさまざまなニーズに応えていくとのこと。
ラインナップが強化されたMoleskinとの提携
Post itのデジタル化、iOSクライアントに連携機能追加
iPhoneまたはiPadのEvernoteクライアントにポスト・イットノートカメラが搭載され、ポスト・イットの取り込みができるようになりました。
併せて、Evernote がデザインしたポスト・イット ノート用ホルダーも発売されます。
「目的はペーパレス化ではなく、Bad experienceを無くすことだ」というPhil氏の言葉が印象的でした。
取り込んだポスト・イットはイエロー・グリーン・ピンク・ブルーの4色ごとに分類されたノートとして自動的に保存され、色ごとに特定のノートブックへの保存、タグの割り当て、そしてリマインダーの追加といったアクションを割り当てることができる
SCANSNAP EVERNOTE EDITION SCANNER by PFU
ボタンを1つ押すだけで複数のドキュメントを順次スキャンして、写真やレシート、名刺、文書などを Evernote の中で自動的に整理してくれます。
会場で行われたデモ。そこまできれいに用紙を揃えなくとも、挿入口に並べるだけで1枚1枚スキャンされていくクオリティの高さに驚いた
Evernote Market立ち上げ
また、Evernoteの提案するライフスタイルのデザインに合致するという観点から、仏Cote&Ciel(コート・エ・シエル)のバッグや日本abrAsusの「ひらくPCバッグ」なども紹介。これらを販売するチャネルとして、新しくEvernote Marketの立ち上げも発表されました。
会場では一足早く、Evernote Marketの実店舗が設置されて商品が並んでいた
Evernoteの「ノートをクラウド化するサービス」という側面だけを見ると物販も手がけるという今回の方針は異例とも感じられますが、これも同社の目指す「生活をより豊かに、スマートに」という思想の延長線上にある戦略であり、今後もハードウェア・ソフトウェアの垣根を超えて、生活をより良くデザインするプロダクトがあれば積極的にコラボレーションしていくと思われます。
Evernote Marketにどのようなラインナップが増えていくのか楽しみです。
プラットフォームとしてのEvernote
午後からは並行して複数のトークセッションやワークショップが開かれましたが、ここではPlatform teamのVP、Seth Hitchings氏によるEvernoteのプラットフォームとしての現状についてのトークセッションの模様をレポートします。
Platform teamのVP、Seth Hitchings氏によるEvernoteのプラットフォームとしての現状について
ユーザ数の増加や、画像認識や名刺データのスキャニングといったEvernoteの機能拡張にともない、Evernoteのサーバは2008年10月時点で20台だったものが、現在は600台になっているそうです。
また社内のサーバエンジニアは22名、デベロッパーリレーションチームは12名が現在30,000を超えるサードパーティ開発者とのやりとりを行っています。
新しいAPIの紹介
今回の発表でもあったポスト・イットとの連携などを踏まえて、EvernoteのAPIもPost itノートのような新しいノートタイプに対応します。
またこの冬に、「 アプリごとに単一のノートブックへのアクセス権限を持たせる」APIを提供するという話もありました。Evernoteと連携するアプリの中には、Evernoteをクラウド上に自サービスのユーザデータを保管する場所として使っているものもあり、その場合は1ノートブックにアクセスできれば十分というケースも多いでしょう。またユーザからすると連携アプリが自分のクラウド上のデータに与える影響は局所化できたほうがセキュリティ的にも好ましいため、この機能はニーズが高いと考えられます。続報が待たれるところです。
また現状の有力な連携アプリについても、複数のジャンルにわたって紹介されていました。
①コンテンツの消費
Pocket 、Feedly Pro 、Instapaper などWeb上のソースを中心に、いずれもユーザが情報をいかに整理し、吸収していくかというスタイルを提起していきます。
②タスクマネージメント
Remember the milk 、Azendoo など、EvernoteがReminder機能を導入したこともあり、Evernoteと連携した使い勝手の良いタスク管理アプリはこれからも望まれるところだと思います。
③email
Dispatch 、Mailplane 、Postbox など、メールサービスでEvernoteとの連携を行うアプリも人気を集めています。
④自動化
IFTTT はユーザが複数のWebアプリケーション同士でよく行う一連の連携処理(たとえば、Instagramで撮った写真をEvernoteに保存するなど)を「レシピ」という形で作成、共有するWebサービスです。このように、Webサービス間の利用を自動化して促進しようという試みがありますので、そこでEvernoteとの連携も自然に出てくることになるでしょう。
⑤コラボレーション
UberConference 、Liveminutes など、かなりビジネス寄りではありますが、ミーティングの内容をEvernoteに保存して共有できるアプリも人気があります。
⑥新領域
iHealth のようなヘルスケアの分野や、Google glass、Galaxy Gear、Pebbleといったウェアラブルなど、今後の成長性が見込まれる分野を指します。CEOのPhil自身が「体験しながら作る」と言っているようにまだまだこれからの領域ではありますが、Evernoteもまた「スマホの次」を積極的に模索していると言え、それらと連携するアプリも将来性があるのではないでしょうか。セッションではサムスンの冷蔵庫とコラボしたThe Evernote Fridge(T9000)が紹介されていました。
他のアプリについてもEvernote Appcenter で見ることができます。日本ではメジャーでないアプリも多く、また連携アプリを作るにあたってはこれ以外のジャンルも存在するかと思いますが、1つのアイデアとして上に挙げたようなジャンルについて考えてみるのも良いのではないでしょうか。
またNTTドコモ、Honda Silicon Valley Lab(HSVL) 、Wayraなどの会社と提携し、優れたEvernoteとの連携アプリについて、開発チームにオフィス環境やEvernote社員のヘルプといったリソースを提供してその製品化・ビジネスとしての成功をサポートする「Evernoteアクセラレータプログラム」についても話がありました。こちらはEvernote Devcupの参加者から候補が選ばれ、10月から具体的なプログラムが始まっています。
必ずしも自社のリソースだけでなく、他社の優れたプロダクトや3rdパーティとの連携の推進など、非常にオープンな姿勢でハードウェア、ソフトウェア両面で自らのブランドを確立していこうとするEvernoteの今後がますます楽しみになるカンファレンス1日目でした。
会場で準備されているミネラルウォーターのペットボトルもEC3仕様だった
次回はEvernoteビジネスの話題を中心に、2日目の模様をお送りします。