PHPカンファレンス2019 開催

[20回開催記念企画]廣川類氏と徳丸浩氏に、これまでのPHPとの関わりをを聞く。 —⁠—そしてPHPカンファレンス2019へ

今年で20回目になる国内最大級のPHPの祭典PHPカンファレンスですが、実は世界で最初に開催されたPHP Confarenceでもあります。回を重ねるごとに大きくなり、ここ数年は、約40ものテクニカルセッションを実施し、参加者数は2,000人前後にのぼります。

PHPカンファレンス2018のキーノートスピーチ会場
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今回はPHPカンファレンス20回開催記念として、ここ数年メイン会場で人気の講演をされている日本PHPユーザ会の廣川類氏と日本屈指のWebセキュリティコンサルタントの徳丸浩氏に、過去の振り返りと今後についてお聞きしました。

—⁠— 廣川氏といえば、日本PHPユーザー会の立ち上げメンバーとして参加され、その後、書籍の執筆やPHPカンファレンスでのご登壇など、PHPの普及にかなり貢献されてきていますよね。この20年を振り返って、PHPとの出会いと現職について教えていただけますか。

廣川類氏(PHPカンファレンス2018にて)
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廣川氏「PHPとの出会いは1996年で、バージョン 2のβ版の頃でした。社会人になってまだ数年の私は、友人たちとWebサーバを趣味で立ち上げてクチコミサイトを構築した際、軽快に動作するPHPとMySQLに出会ったのです。当時、PHPに関する日本語の情報はまだなかったので、勉強がてらマニュアルの翻訳をしてWebサイトに公開したのが、オープンソースと関わるきっかけになりました。その後、翻訳したマニュアルは本家PHPのWebサイトで公開されるようになり、PHPの日本語対応にも関わることになりました。当時も今も本業は非IT系技術者ですので、趣味としてPHPを楽しんでいます。PHPに知り合ったことで、多くの素晴らしい技術に触れることができ、また、たくさんの人と出会えたことに感謝しています」

—⁠— PHPとの出会いはそんなきっかけだったんですね。しりませんでした。続いてPHPの歴史を振り返って、個人的なエピソードや歴史的なターニングポイントなどはありますか。

廣川氏「PHPの一番大きな強みはコミュニティがしっかりしていることです。その意味でも2000年に日本PHPユーザ会ができたことは一番最初の大きな出来事だと思います。スタッフが若返りながら、今も続いています。PHPにとって第2のターニングポイントは、2000年にPHP 4がリリースされた後、2001年に日本語を含むマルチバイト文字がmbstringエクステンションとして標準サポートされたことだと思います。Unicodeが一般化した今では、mbstringエクステンションはシングルバイト圏の国を含む全世界で標準的に使われています。3番目は、PHP 5.3と5.4のリリースです。それまでのPHPは、使いやすくて人気のあるスクリプト言語でしたが、当時人気のあったRubyやPythonなどの現代的なスクリプト言語と比べて言語仕様が貧弱で、実行速度も遅いと批判されることがありました。PHP 5.3/5.4で多くの言語仕様の拡張が行われ、現代的なスクリプト言語となりました。また、実行速度は今日に至るまで改善を続けて高速化しており、実行速度が速い部類になっていると思います。セキュリティに関して脆弱であるとの批判も受けてきましたが、PHP 5においてセキュリティホールを生みやすい一部のオプション仕様が廃止されるとともに、PHPの実装自体の脆弱性も静的解析ツールの適用などにより解消され、安心して使えるツールとなっています」

—⁠— まさにその通りですね。では最後の質問になります。PHPの今後についてお聞かせいただけますか。

廣川氏「PHP自体は、とてもシンプルなツールとして生まれ、Webという技術の進歩がとても速い世界で常に改良を重ねながら25年近く使われ続けています。PHPの作者であるRasmus Lerdorf氏は『PHPは歯ブラシのようなものです。毎日使うものですが、それ自体は皆気にしないですよね?』と述べており、PHP自体が身近で便利な実用的なツールであることを実践し続けてきたことが、今日までPHPが使われてきた最大の理由だと思います。Pythonをはじめ、他にも素晴らしいプログラミング言語はありますが、人間の根本的なニーズはそれほど変わるものではなく、PHPはこれからも現実の問題を解決するための便利なツールとして使われていくことでしょう」

—⁠— それでは最後に廣川さんのPHPカンファレンスのご講演の見所をご紹介ください。

廣川氏 ⁠PHPの今とこれから 2019』といういつものタイトルで講演をさせていただきます。今回は、11月28日に公開を予定しているPHP 7.4における改善のポイントと、開発が本格化している次期メジャーリリースPHP 8で導入されるJIT ⁠Just-in-time compiler)について紹介します。スクリプトエンジンに常に改良を加え、貪欲なまでに高速化をはじめとする改良を続けるPHPの今を感じていただければと思います」

—⁠— ありがとうございました! 皆さん当日の講演をご期待ください。では続いてもう一人の看板スピーカーである徳丸氏にお聞きしたいと思います。WebセキュリティやPHPとの出会いと現職について教えていただけますか。

徳丸浩氏(PHPカンファレンス2018にて)
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徳丸氏「前職の京セラコミュニケーションシステム株式会社(KCCS)はKDDIの出資を受けている縁があり、KDDIの携帯コンテンツサービス(EZweb)の認証課金インフラを担当していました。私はその際に認証課金の基本的なプロトコル設計を担当したのですが、1999年のサービス開始当時は、Webセキュリティの情報がほとんどなく、セキュリティ設計に苦労したことがWebセキュリティとの出会いです。元々社内向けだけで始めたWebのセキュリティですが、2000年前半だとやっている人が少ないこともあり、取材等を受けることが多くなり、情報発信を始めたことから、社外向けのサービスとしてもやってみようと事業化したのが2004年でした。当初は事業としてはさっぱりでしたが、2005年からSQLインジェクションが急増したこともあり、その後は事業として成長できました。当時私はKCCSの事業部長という管理職の立場でしたが、技術にコミットしたいという動機から、独立を決意して作ったのが現職(現社名:EGセキュアソリューションズ株式会社)です」

—⁠— 徳丸氏はWebセキュリティの国内トップクラスのコンサルタントですが、PHPに関してもかなりかかわってこられていますよね。この2つについて歴史を振り返って、個人的なエピソードや歴史的なターニングポイントなどをご紹介いただけますか。

徳丸氏「2010年に書籍を執筆しないかというお誘いをSBクリエイティブからいただきまして、その提示された条件が、初心者向けということと、サンプルをPHPで書くことでした。この条件を承諾して書いたのが、通称徳丸本『体系的に学ぶ 安全なWebアプリケーションの作り方』です。しかし、PHPのほうは守ったものの、初心者向けとしてはちょっと難し目の内容になったと思います。徳丸本を書いたというのは、私のセキュリティエンジニアとしてのキャリアという点で非常に重要なターニングポイントだったと思います。以降、⁠徳丸本の中の人です」と名乗っています(笑⁠⁠ このような経緯から、PHPは「本を書くために本格的に研究し始めた」のですが、その後PHPに深くのめり込むようになりました。現在では、⁠徳丸はPHPの人」と思っている人も多いようです」

—⁠— ありがとうございました。徳丸氏は今年のPHPカンファレンスで『オニギリペイのセキュリティ事故に学ぶ安全なサービスの構築法』というとタイトルで講演します。安全なインターネットサービスを提供するにあたっては、ソフトウェアバグとしての脆弱性対策だけではなく、ビジネスモデル・サービス仕様・アーキテクチャ設計・ソフトウェア設計・実装・サーバなどの多方面からセキュリティ検証が重要となりますよね。徳丸氏のセッションでは実際のセキュリティ事故を題材に解説があります。とても楽しみですね。

最後に、今回のPHPカンファレンス2019開催にあたり、実行委員長の板谷郷司氏からのメッセージもいただいたので紹介します。

実行委員長 板谷氏
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板谷氏「PHPは25年前の1994年 Rasmus Lerdorfによって原型が生まれ、1996年にPHP/FIとして公開されました。PHPは順調にバージョンアップを続け、ユーザ数も増えました。そして20世紀最後の年である2000年に日本のユーザ会によってPHPカンファレンスが世界で初めて初めて行われました。今回は20回目の節目となるカンファレンスです。当時小展示ホールのみで始まったPHPカンファレンスも言語の利用が増えるとともに徐々に参加人数が増え、1,500人を超えるPHPerが全国から集う大規模カンファレンスとなりました。

今年は本カンファレンスがPHPerのチャレンジ、成長、その先へと向かう原動力になることを祈願しテーマを"beyond .*"としました。毎回高い評価を頂いている40近いテクニカルスピーチ、30を超えるブースで皆様をお迎えいたします。皆様と会場でお会いできることを楽しみにしております」

PHPカンファレンスは一人で参加しても楽しめる、楽しいイベントです。テクニカルスピーチもプレゼン上手な方が多く、学べることが多いです。興味がある方は、是非ご参加ください。

PHPカンファレンス2019 イベント概要
イベント名PHPカンファレンス2019
開催日2019年12月1日(日)
会場大田区産業プラザPiO
参加費無料(公式サイトより事前申し込みください)
来場見込者数2,000名
公式Webサイトhttps://phpcon.php.gr.jp/2019/

なお、公式Facebookページと公式Twitterからも情報を発信しています。

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