パソナテックは「AI・IoTの流れをキャリアに活かしたいエンジニアに贈る2days」と題し、「PASONATECH CONFERENCE 2017」を実施しました。
PASONATECH CONFERENCE 2017
https://www.pasonatech.co.jp/lp/conference2017/
今回は2017年5月27日に行われたインフラエンジニアdayから、IoTトラックの2セッションの模様をお届けします。
ヤフー「myThings」の開発、運用で得た知見~IoT時代のエンジニアに求められる5つのスキルとは
ヤフーが提供するIoT向けプラットフォーム「myThings」
5月27日に行われたIoTトラックは、ヤフーのIDサービス統括本部 スマートデバイスユニット IoTプラットフォームの瀬高拓也氏による「バックエンドエンジニアから見たIoTの世界」と題したセッションでスタートしました。
講師を務めた瀬高氏は、新卒でヤフーに入社し7年、当初のアプリ開発からIoT向けプラットフォーム「myThings」チームに移動、バックエンドシステムの開発や運用を行っています。
瀬高氏は、アプリ開発からIoT業界に移動し、そこで得た自身の経験から、「ここが強いエンジニアは重宝されるのではないか」というポイントを紹介しました。それは「大量のリクエストをさばくスキル」「データを利益にするスキル」「サイクルを早く回すスキル」「セキュリティに関するスキル」「データの分析場所を設計するスキル」の5つです。
「myThings」の開発、運用で見えたスキル
IoTの世界では、大量のデバイスが軽量のリクエストを高い頻度で送るようになります。ただし、これは現在でも大規模サービスで存在する課題であるとし、C10K問題やオートスケール、リクエストのリアルタイム性を重視した設計によるアプローチができるスキルが重要であるとしました。データの利益化もすでに課題としてあり、データを単に解析するだけでなく、施策化できるスキルがあると企業側のニーズにマッチするとしました。
サイクルを早く回すためには、PoCでユーザニーズがあるかを検証することが重要。そのためには、作っては壊すというサイクルを早く回せるインフラが必要であり、IoTではバックエンド以外のネットワークを含めた設計スキルが求められるとしました。セキュリティについては、ガイドラインなど対応できることがポイントで、その上で機器の状態や通信の可視化、障害や異常が発生したときに切り離せる環境の設計、そして適切な認証や通信の方式を利用できるスキルが必要としました。
データの分析場所については、今後デバイスの数が数十億から十兆という規模になると、クラウドコンピューティングではデータの集中による処理やネットワークの遅延、コストの肥大化が予測されるため、エッジコンピューティングの技術が注目されていると紹介。そのときに一連の計算ロジックをどこまでエッジに持たせるのか、効率的な処理を行える知見や設計スキルも求められるとしました。瀬高氏は最後に、「まだIoTはバズワード感がありますが、企業の期待値が高く動きも活発です。課題も多いですがチャレンジしがいのある領域だと思います」と述べ、セッションを締めくくりました。
IoTビジネス化のポイントはPoC~IoTは、ビジネスが成り立つかを早期に判断することが必要
社会基盤を視野にあらゆる分野で期待されるIoT
IoTトラック2つ目のセッションは、ソラコムの執行役員でありプリンシパルソフトウェアエンジニアである片山暁雄氏による「IoTシステムを支えるインフラとエンジニア」です。
講師を務めた片山氏の前職はAWSで、AWS利用時のアーキテクチャ設計のサポートや、技術支援を行うソリューションアーキテクトとして活動していたといいます。現在はソラコムでソフトウェア開発に従事しており、多くの著作もあります。
片山氏は、IoTはテクノロジーよりもビジネス面の可能性から、あらゆる分野で注目されていると紹介。また、重要なビジネス基盤だけでなく社会基盤としても期待されているとしました。その一例として、プリンタの故障の予兆をリアルタイムで監視する小森コーポレーションの導入事例を紹介しました。ただし現状のIoTはビジネスになるまでが大変で、仮説と検証のくり返しが必要であるとしました。
またIoTは、システム的な課題も多いと指摘。具体的には「IoT機器をインターネットにどうつなぐか、設定をどうするか」「機器に組み込むのか、外付けにするのか」「通信機器の管理をどうするのか」「不正対策・セキュリティ」を挙げました。そして、そもそもビジネスが成り立つかという問題もあるとして「いくら投資すべきか」「費用以上のメリットがあるのか」「メリットをどう数字化するのか」を挙げました。
究極は「フルスケールエンジニア」
さらにIoTにはデータの流通や企業間利用といった課題もありますが、他社と協調した新しいビジネスの可能性もあると片山氏はいいます。そこで重要になるのがインフラで、とくにIoTではインフラの範囲が広く、クラウドの活用が不可欠としました。クラウドであればセンサー情報の集約や保存・蓄積するシステムを一瞬で準備でき、そこに分析処理と活用という差別化要素を追加することでIoTビジネスの準備ができるとしました。
とくにIoT機器の通信に有効なソリューションとして、片山氏はソラコムのSIMカードを紹介しました。AWS上に管理や課金システムがありWeb/APIから回線管理や利用料の把握、監視などを行えるほか、IoT向けの新しいLTE規格にも対応するとしました。また、注目すべき市場動向として「LPWAN」規格と、それに対応する「LoRaWAN」を紹介しました。
最後に、IoT時代に求められるのはデバイス、通信、クラウドなど、より幅広いスキルを駆使できる「フルスケールエンジニア」であるとしました。たとえば、アプリ、クラウド、セキュリティ、ネットワーク、モバイル、デバイスでチャートを作り、自分のスキルレベルがどのくらいなのかを把握できます。実際にはそんなエンジニアはいませんが、スキルアップのためのコストは低いとして、PoCやビジネス化の判断、コミュニケーション力を磨くべきとしました。