RubyKaigi2011 スペシャルレポート

日本Ruby会議2011 3日目レポート[更新終了]

この記事を読むのに必要な時間:およそ 19.5 分

秋田ファビオ誠さん「Personal Dilemma: How to work with Ruby in Brazil?」

最初に,⁠RubyそしてRubyコミュニティのこれからの発展をお祈りします。matzとコミッタのみなさんありがとうございます」と流暢な日本語での挨拶がありました。

技術のシフト

ファビオさんは今までは違うRubyとは違うマーケットで働いていましたが,近年コミュニティ活動を始められたとのことです。RubyやRailsは2005年から学び始めたそうで,いろんな記事を読み毎日調査・勉強をしたと振り返ります。Ruby自体は2001年ころに知っていたのですが,2005年頃から突然Ruby,Railsの話題を聞く機会が増えたそうで,それがきっかけとなったそうです。また,DHHが世界で初めてRailsについてプレゼンテーションを行なったのは,2005年のブラジルで行なわれたOSSカンファレンスだそうです。

今年のRubyKaigiの基調講演でのAaronさんの「Rubyが人生をめちゃくちゃにした」という言葉を挙げ,あなたたちもRubyで人生を狂わせた経験があると思うと述べました。ファビオさんがRubyで仕事をしたいと思ったとき,アメリカに移住するか,諦めるかという選択肢を考えたそうです。99%の方がここで諦めてしまうと思いますが,ファビオさんはここで,Ruby/Railsのマーケットをブラジルに作ろう!と思ったと話します。ファビオさんはブラジルで一番に最初にRubyを触ったRubyistではないとのことでしたが,ブラジルからは逃げるつもりも新しくマーケットを作ることを諦めるつもりもないそうです。

また,みんな仕事でRubyを使おうとしていましたが,Rubyでの仕事を始めるにあたり,対話する相手を間違えていたそうです。HackerとHackerの会話といった限られたプログラマ間だけの会話だけでなく,心理学とマーケティングの知識を持ち出し,職をくれる人や給料を払ってくれる人と対話する必要があると述べました。

ファビオさんはコモディティとはどこの会社がやっても大体同じであることと説かれました。みんなと同じことをやっていたらコモディティの中にうもれてしまうとし,リスクをとらないという生き方ではキャリアを積むことができないと話されました。ブラジルでは昔の日本と同じように,同じ会社で働き続けるのが一般的であり,保守的であるという背景があるそうです。ファビオさんはあるアプリ開発で,フリーランスとしてブラジルからアメリカのプロジェクトに参加されことを例にだし,このような開発形態が可能であると示せたことは大きいと感じているそうです。

Railsイベントについて

2008年からRails Summitというカンファレンスが始まりました。予想を遙かに越える反響があり,何かが起こっているということしかわからなかったそうです。その後2009年にもRails Summitを開催し,2010年からはRubyConf Brazilと名称を変え,開催しているとのことです。名称を変更することでRailsを使っている人たちだけではなく,より多くの人たちにRubyのことを,そしてもちろんRailsのことを広めたいとの意向からだそうです。その際,Aaronさんの基調講演でも流れたような映画予告のようなRubyConf Brasilを紹介する動画が上映され,感動巨編のような映像に聴衆のみなさんが驚かされました。RubyConf BrasilではRailsの話題だけでなくnode.jsなどの話もあるそうです。ぜひともみなさんお越しくださいと紹介しました。

画像

画像

浅里洋嗣さん「Rubyを持て,世界に出よう!」

JRubyのコミッタであり,Engine Yardで働く,浅里 洋嗣さんの海外で働くために日本人が知るべきことを発表しました。浅里さんは,アメリカの大学で学び,そのまま海外の企業に就職,そして転職を経て,現在のEngine YardでJRubyのサポートエンジニアをやられています。浅里さんは,海外で働くには「言葉」⁠ビザ」⁠仕事」の3つが重要だと言います。

言葉の壁

日本以外の国で会話するには英語を習得する必要がありますが,どうすれば習得できるでしょうか?と問いかけます。浅里さんは「日本人が英語を勉強するには,話をしたいとう欲求が重要」と言います。会話できるためには,どれぐらいの英語力があるとよいかは分からないため,目標を決めて勉強してもコミュニケーションがとれるようになったとはいいきれません。そこで,どんどん海外の人とコミュニケートする必要があると述べました。また,⁠ネイティブでも完璧な英語の人はいないのだから,物怖じせずにいくべき」とアドバイスしました。

次に,浅里さんがどのように英語を学んだかという話がありました。浅里さんは学生時代,⁠600選』という本から英語を学習したそうです。そして,⁠どんなものからでも英語は学べる」ということを,自身が海外のバンドの歌詞から学んだ経験を交えて紹介しました。また,英語を学習する際に注意すべきこととして,⁠日本語訳は日本語の作文技術なので,日本語訳はしない」⁠辞書は英和辞書を使うのでなく,英英辞書を使う」というポイントを述べました。

最後に,⁠話さないと相手には伝わらないので話しましょう。相手が話に興味を持ってくれれば,英語が下手でも辛抱強く聞いてくれます」と,英語でコミュニケーションするための心構えを説きました。

ビザについて

海外で働くにはビザが必要になります。ビザの種類について紹介しました。

まずは,⁠家族」にまつわるものです。海外の方と結婚したり,養子縁組を組んだりすることでビザを取得できます。また,永住権を既に持っている方からの支援がある場合でも取得が可能だそうです。次に,⁠就労」にまつわるものです。就労するために必要となるH-1ビザは,年に発行される数が決まっているため,取得できるかどうかの予測が難しいそうです。また,大きい会社でなければ取得のための法的手続きの手際が悪いらしく時間がかかるとのことでした。続いては「学生」に関するビザです。学生のビザでは,特別な場合を除いて学校外で働くことはできませんが,在学中に就職活動ができるそうです。他のビザとして,資本金があれば取得できる「投資家」のビザ,永住権をもらうことができる「抽選」によるビザを紹介しました。またアメリカ以外には,25歳以下の人が行なえるワーキングホリデーがあると述べました。

職を探す

まず,職を探すということについて,⁠自分の能力をいかに上手に売り込むかというゲームととらえるとよい」と述べました。海外の就職活動では履歴書が必要なく,コネクションがとても大事だとし,日本の就職活動との違いを言及しました。コネクションを作る方法として以下のような方法を挙げました。

  • GitHub等のOSSの世界に自分のコードを出す
  • 海外の会議に行って人脈をつくる
  • LinkedInなどSNSを利用する

発表後に質疑応答の時間があり,浅里さんの経歴に関する質問など時間いっぱいまで質問が飛び交いました。

画像

画像

石塚圭樹さん「分散オブジェクト環境DeepConnectの新バージョンについて」

Rubyの名付け親で,irbの作者でもある石塚さんの発表です。少し前までは楽天でfairyの研究開発を行っていたそうです。

DeepConnectとは

DeepConnectは,分散オブジェクトシステムを実現するフレームワークです。DeepConnectを使用することで,別プロセスのオブジェクトをあたかもローカルにある普通のオブジェクトのように取り扱うことができると語ります。 ライブラリの簡単な紹介のあと,開発の歴史を語ってくれました。

  • 1996年 途中で放棄
  • 1999年 ソースをいじった形跡がある
  • 2008年 fairyで適用を開始し,DeepConnectという名称へ
  • 2010年 オープンソースとしてgithubで公開へ
  • 現在 新しいインターフェイスでの実装を行なっている最中

この歴史からわかるように,最初の実装からかなり長い時間を経て DeepConnectは世に出ることになったと言います。 現在は,楽天でのfairyの開発が落ち着いたことと,新しいインターフェイスを思いついたということで,DeepConnectの開発を進めているそうです。

DeepConnect の特徴

特徴は,別プロセス上の定数や変数,ファイル等をあたかもローカルにある変数のように扱うことができることと言います。 これらのオブジェクトは基本的に参照渡しで値を受け渡ししているのですが,trueやfalseなどのImmutableなオブジェクトや,String 等パフォーマンスを考慮して値渡しにしているオブジェクトも存在するとのこと。文字列に関しては明示的な操作で参照渡しにすることも可能なのだそうです。 これらの機能をどのようなアーキテクチャで実装しているのかを丁寧に説明しました。

DeepConnectの今後

このDeepConnectはfairyで採用されていて,かなりハードな使い方をしていて品質についても安定しているとのことです。今後の方針としては,全体的な高速化を目指すため,ThreadやQueue等をC言語で再実装することを目標としていると述べていました。

画像

画像

著者プロフィール

KaigiFreaks レポート班

KaigiFreaksとは,会場に来れなかった人にも,雰囲気や内容を楽しんでもらえるように動画収録や配信を行うことをミッションに,RubyKaigi2008で結成された特別編成チーム。

RubyKaigi2009からはgihyo.jpを中心にテキストと写真で現場の様子を伝えるレポート班が加わり,現在のKaigiFreaksは配信班とレポート班の2班編成。


三村益隆(みむらみつたか)

(株)永和システムマネジメントサービスプロバイディング事業部所属。Asakusa.rb & Rails勉強会@tokyo。このところRailsのお仕事をしています。言語好き。

blog:http://d.hatena.ne.jp/takkan_m
twitter:http://twitter.com/takkanm


すがわらまさのり

ハンドルネームはsugamasao。

Mitaka.rb や 若手IT勉強会に参加しています。仕事では自社プロダクトのデーモンの開発あたりでRubyを使ったりしています。伊坂幸太郎さんと荒木飛呂彦さんが好きです。

blog:http://d.hatena.ne.jp/seiunsky/
twitter:https://twitter.com/sugamasao


小松崎典之(こまつざきのりゆき)

ハンドルネームはO-Show。

RubyKaigi2010に参加したことで触発されRubyistを自称するようになる。ブログでRubyやGit関連記事の翻訳をあげています。もっとRubyとGitの情報の流通増えろ!と願ってやまない。

blog:http://keijinsonyaban.blogspot.com/
twitter:http://twitter.com/oshow


菅井祐太朗(すがいゆうたろう)

仕事でも Ruby を使えたらいいなぁと考えている新社会人LOCAL 所属。この春からAsakusa.rbにjoin。

twitter:http://twitter.com/hokkai7go


赤松祐希(あかまつゆうき)

2010年よりRuby on RailsでのWebアプリケーションの開発を中心にフリーランスのRubyプログラマとして活動中。最近はHaskellに興味を持ち出し、勉強しはじめている。

blog:http://ukstudio.jp/
twitter:http://twitter.com/ukstudio