世界最大のPythonカンファレンス「US PyCon 2019」レポート

第3回 3日目朝のLT紹介,キーノートはPython仕様策定のキーパーソンによるパネル

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キーノート:Python Steering Council

ライトニングトークに続けて,Python Steering Councilによるキーノートがありました。Python Steering CouncilとはPythonの言語仕様を策定する委員会の名前です。

今まで,Pythonの言語仕様の策定は,Guido氏がBDFLとして最終決定を行ってきていました。しかし,Guido氏が2018年7月12日にBDFLからの引退を表明したため,今後の仕様策定をどう決めていくかという議論があり,PEP 13 -- Python Language GovernanceでPython Steering Councilという5名の組織で決定していくこととなりました。その後,PEP 8100 -- January 2019 steering council electionで投票が行われ,Councilのメンバーが決定しました。

参考:
引退を表明したメール[python-committers] Transfer of power

このキーノートでは,2日目のレポートのインタビューにも出ていた,PSF(Python Software Foundation)Executive DirectorのEwa Jodlowska氏が司会進行し,それに対してCouncilメンバーが質問に回答する形で進行しました。

Python Steering Council

Python Steering Council

Ewa:まずは自己紹介をお願いします。

Berry Warsaw:LinkedInで働いていて,Python Foundationチームにも在籍しています。1994年にGuidoと出会って,それからPythonとGuidoが好きです。最初のPython workshopは20名の参加者だったけど,25年でものすごい参加者となってびっくりしています。

Brett Cannon:MicrosoftのVSCodeのPython拡張の開発マネージャーをしています。大学でPythonと出会い,Python devメーリングリストでさまざまなやりとりをしたり,PRを送ったりしていました。

Carol Willing:2016にフィリピンのキーノートでPythonが人々のプログラミング言語であるという話をしました。2012年にPythonのプログラミングをはじめ,Jupyter Notebookはとても便利なツールだと感じました。そしてこのコミュニティの一員になりたいと思ったのです。

Guido van Rossum:私はプログラマーでした。好きなプログラミング言語がなかったのでPythonを作りました。Pythonはオープンソースと残りはコミュニティです(拍手⁠⁠。BDFLとして30年間PEPでの仕様の採択をしてきました。

論争を呼んだPEPPEP 572)を採択した次の日の朝,私はもうBDFLをやりたくないと思いました。そこで20分かけてコア開発者に対して自分たちで今後は進めてほしいというメールを送りました。コア開発者は委員を立ち上げるという方向に決めました。それは正しいやり方でとても安心しました。

みなさんは子どもを大学生まで育てたことはありますか?直接関わることはほとんどなくなりますが,気にかけることをやめることはありません。私はそのような感覚を今Pythonに対して感じています(拍手⁠⁠。それが,私が自分でSteering Councilに立候補して,イマココにいる理由です。

Nick Coghlan: ハードウェアとC++から,Pythonを使うようになりました。Pythonを使うようになったのは,シグナルプロセッシングとunit testがあること,waveモジュールがあることやSWIGを使ってC++のモジュールをラップして使えるからです。Pythonを使ってハードウェアと通信するシステムを作成ししまた。Pythonを使うことによって,現実世界の面倒な部分を無視して開発できるようになりました。

Ewa:ガバナンス(組織運営)がBDFLからSteering Councilに変わって,Pythonはどのように変化し続けると思いますか?

Guido:BDFLだったころ,PEP(Pythonの拡張提案)に対して最終的にyes/noやA/Bを選ぶことは責任があり,かなりストレスが大きかった。そのストレスがCouncilの5人に分散されるようになる。Python言語の組織運営についてはPEP 13に記載した規定に則って運営することになります。もっと重要な決定は,決定のためにコア開発者や外部の協力者に決定を委任することです。まだ数ヵ月しか経っていませんが,このやり方はうまくいくと思います。今後のCouncilはできるだけ決定を委任していこうと思います。

Ewa:Pythonとデータサイエンスは継続して成長しています。CarolはJupyterのSteering Councilメンバーでもありますが,科学系のPythonコミュニティの強さについて教えてください。

Carol:新しいアイデアをコミュニティの全エリアから聞くことが大事です。Web,組み込み,教育,科学,データ分析などそれぞれ異なる要望があります。Steering Councilにさまざまなバックグラウンドのメンバーがいることにより,よりより選択をできると思います。

Ewa:Brett,たくさんのインフラ関係の作業を管理してきました。Mariattaが作成したPEP 581でバグチケットを bugs.python.org からGitHubに移動する予定ですが,現在はどのような状況ですか?

Brett:まず最初にPEP 581について議論し,私たちはそれを受諾しました。そして実際の移行作業をPEP 588にまとめています。language summitでもこの件について議論しフィードバックをもらいました。大きな問題はないので進めていく予定です。

Ewa:Packagingワークグループはmozillaから支援を受けました。次のアクションは?

Nick:パッケージ関連ではPython Packaging Authority(PyPA)とPackaging workgroupがあります。これはPSFとコア開発者の関係と似ています。PyPIの利用者の使い勝手は向上してきたが,パッケージ作成者にとっては異なるプラットフォーム,異なるPythonバージョン用のパッケージを作成するなど複雑になっています。そこをよりよくしたいです。開発Sprintでパッケージについて議論するので,そこでもアイデアが出てくるでしょう。

Ewa:新しいガバナンスモデルではPEP 1(PEP自体のガイドライン)を変更しますか?

Brett:PEPはRFCなどのアイデアからきています。現在のプロセスは必要十分だと思います。PEPは意思決定するためのプロセスで,BDFL delegateという決定を他のエキスパートに委譲する仕組みがあります。Pythonコミュニティは大きくなったので,次の世代のリーダーは言語についての重要な決定をする機会があります。リーダーにはコミュニティとPython言語を健全な状態で,次の25年を活気にあふれたものにしてほしいです。そのためにも積極的に権限を委譲していこうと思います。

Ewa:Python言語の実装か言語そのものだと,どこを見ていこうと思っていますか?

Guido:私たちはPythonの実装を見ています。私たちはPython言語とその実装をどのように進めていくかについて議論しています。

著者プロフィール

鈴木たかのり(すずきたかのり)

一般社団法人PyCon JP,副代表理事,株式会社ビープラウド所属。

部内のサイトを作るためにZope/Ploneと出会い,その後必要にかられてPythonを使い始める。PyCon JPでは2011年1月のPyCon mini JPからスタッフとして活動し,2014年-2016年のPyCon JP座長。他の主な活動は,Pythonボルダリング部(#kabepy)部長,Python mini Hack-a-thon(#pyhack)主催など。

共著書に『Pythonによるあたらしいデータ分析の教科書(2018 翔泳社刊)』『Pythonプロフェッショナルプログラミング 第3版(2018 秀和システム刊)』『Pythonエンジニア ファーストブック(2017 技術評論社刊)』『いちばんやさしいPythonの教本(2017 インプレス刊)』などがある。

最近の楽しみはPython Boot Campの講師で訪れた土地で,現地のクラフトビールを飲むこと。2019年は世界各国のPyConでの発表に挑戦している。趣味は吹奏楽とボルダリングとレゴとペンシルパズル。

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