ついに「AIR」舞台が見えてくるか アドビシステムズ社主催の開発者向け一大イベント「Adobe MAX 2007」開催[後編]

前回に引き続き、今回はアドビシステムズ社の開発者向けカンファレンス「Adobe Max 2007」の基調講演後半をお届けする。

基調講演、第二弾

基調講演、第二弾は、エンタープライズ寄りのアプローチで初登場となる製品・サービス、サーバサイドソリューションを中心に発表が行われた。前日の「アプリケーション分野」に関するデモンストレーションに続き、下位レイヤの「サーバ分野」⁠サービス分野」⁠開発ツール分野」にスポットが当てられた。

前日に続きKevin Lynch氏の登場
前日に続きKevin Lynch氏の登場
基調講演第2弾でフォーカスされたカテゴリとレイヤ
基調講演第2弾でフォーカスされたカテゴリとレイヤ

サービス分野の進む道

まずは、以下の4つのサービス・製品が登場した「サービス分野」に注目したい。

「Scene7」
オンデマンドのメディア生成ASPサービス。シンプルなURLでのページアクセスが可能
「SHARE」
コンテンツ共有サービス。アップロード&ダウンロード/共有/ドキュメントパーミッションなどにはREST(Representational State Transfer)APIが提供される
「Pacifica」(コードネーム)
SIP(Session Initiation Protocol)をサポートした高品質なボイスサービス技術。VoIP、メッセージング、プレゼンスの部分をカバーする基盤技術になる予定
「CoCoMo」(コードネーム)
リアルタイムの、メッセージングやストリーミングを行うサービス。パッケージで提供されていたWeb会議などのリアルタイムコミュニケーション製品Adobe Connect Professional(旧Macromedia Breeze)の新設計版で、クライアント、サーバとも刷新されコンポーネント化された。サービスアクセスのAPIを提供

Scene7とSHAREはベータ版の提供が開始されていて、PacificaとCoCoMoは開発の真っ直中とのこと。

CoCoMo
CoCoMo

RIAとWeb標準の出会い、そしてAIR

さて、これらの複数のサービスをAdobe Maxという場で一度に披露されたのには、単なる新サービスの紹介の先を臨む理由があるそうだ。いま、これらを率先して開発・提供するのに意図とはなんだろうか。

これらのサービスは一部でLightweight Serviceという表現も用いられているそうで、そこに見られるアプローチにはさまざまな特徴がある。

  • Web標準を重視・採用している
  • Webの従来の非同期処理から同期するコミュニケーションを呈示している
  • 閉じたパッケージではなくWeb APIやコンポーネントという形でマッシュアップ可能なパーツとして提供される
  • アドビシステムズ社が(パッケージでなく)サービスをサーバサイドでホストする

という点に着目したい。ここで、とくに全体として「Web標準」⁠Webサービス」を指向しているという点が重要だ。これはWeb技術をそのまま活用し、さらにブラウザを超えAIRと結び付くことで、Web標準さらには広くWebサービスと、AIRが融合して生み出される先進的なAIRアプリケーション開発の道を切り開く可能性を期待した試みのようだ。サービス分野、AIRに関しては広告やSaaS(Software as a Service⁠⁠、サブスクリプションベースを絡めたビジネスモデルについても基調講演外でも見解が示されていたが、まずはAIRの普及自体が随所で鍵をにぎっている点は周知のとおりで、開発者の方々には技術的な観点からもぜひ注視していただきたいところ。現在ベータ版のAIRだが、正式リリースは2008年前半を予定しているとのこと。業界的にも長期的に大きな意味を持つ可能性のあるこれらの試みが、実際にWebアプリケーションおよびAIRアプリケーションにいかなる変化をもたらすか、動向は要注目だろう。

ワークフローはどう変わる!? 新開発ツールThermo見参

「開発ツール分野」では、RIAデザインツール「Thermo」⁠コードネーム)が登場した。GUIによるUIの描画に合わせてMXML(Flexの画面 UIを記述するXMLベースの言語)コードが生成される。Flex Builderとのデータキャプチャが可能で、Thermoが生成したMXMLコードにFlexでロジックを埋め込む、そしてThermoに戻って追加修正作業も可能とのこと。プログラマとデザイナがプロジェクトを共有できることになり、既存のワークフローへの画期的なアプローチとされる。また、 Photoshop、Illustrator、Fireworksからの取り込みも紐づけられている。印象としては、実際のツール投入の局面ではプロジェクトの密接な共有よりもデザイナはCS3スイート、プログラマはFlexフレームワークという既存の形態を尊重しつつ開発へのより機動的な参加をうながすというストーリーもいまのところけっこう現実的なのかもしれないと考える人は少なくないようだ。

Thermo
Thermo

LiveCycle ESの新たな門出

「サーバ分野」では「LiveCycle ES」⁠ES:Enterprise Suite)が登場した。従来のサーバサイドのPDFソリューションとしてのイメージが強かった製品だったが、PDF、Flash、HTML/Ajaxをはじめとしたクライアントをサポートする統合プラットフォームへと変化を遂げ、PDFとRIAとを連携できるトータルバックエンドとしてのリポジショニングが強調された。そうなるとFlash Media Serverとの棲み分けは明解で、RIAでもとくにビジネスロジックが関わってくるエンタープライズアプリケーションに関しては、本製品が検討されることになるだろうとのこと。

LiveCycle ES
LiveCycle ES

基調講演のレポートのむすびに

以上、2回にわたったAdobe Max 2007のレポートは、二日間の基調講演にスポットを当てたが、全四日間を通して主要な製品の詳しいロードマップや技術的な詳細から、開発テクニック、 ColdFusionをはじめとするサーバ製品・サービスなど多岐にわたるテーマについて、多数のセッションやパネルが行われた。本イベントは有償のイベントだが参加者にはフリーランスの方も多いとのことで、会場では反応が非常に率直で、スピーカーへの質問などの意気込みたるや時折圧倒されるほど。 Adobe Maxは、開発者向けテクノロジ群に一挙に触れられるという魅力に加え、第一線の開発者が一同に集うほかにはない機会となっているようだ。

日本に初上陸! Adobe Max Japan 2007

なお、11月1日~2日には「Adobe Max Japan 2007」がついに日本、東京で開催されることが決定している。すでに下記のサイトで一部発表されており、本家のAdobe Maxの熱気を引き継ぎつつ、日本開催ならではのセッションを盛り込み一味違ったイベントになるとのことである。FlashクリエータやWebデザイナ、そして広くシステム開発者へ届けるメッセージを考えるなら、既存の技術と比べワークフローの変化がもたらす影響が実感につながるか、開発コミュニティのいっそう充実に結び付くか、あたりがかなめになるかもしれない。合わせてJavaや.NET、LLなどのコミュニティの方々、またAjaxなどのインタラクティブ系の技術に通じた開発者の方々にとっても刺激的な内容を期待したい。

アドビシステムズ
URLhttp://www.adobe.com/jp/
Adobe Max 2007
URLhttp://www.adobemax2007.com/
Adobe Max Japan 2007
URLhttp://www.adobemax2007.jp/

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