組込みイベントの達人 
――少しのことにも先達はあらまほしき事なり。
案内人・根木勝彦氏  
 
 
 
年々規模が大きくなるET(組込み総合技術展)は、今年の出展社数が445にもなっており、自分の思いどおりに情報収集できる方はそう多くはないのではないだろうか。そこで2日目は、NECエレクトロニクスの根木勝彦さん(自称:組込み中年オヤジ)に水先案内人となってもらい、最新の組込みシステムをウォッチし、おもしろい商材を探すツアーを企画した。今回はその様子をダイジェストで紹介する。         
編集部(2名)以外にも企画に興味をもっていただいた読者(3名)も参加して、総勢6名のツアーが始まった。     
ツアー参加者(左から案内人、上辻さん、天野さん、久保田さん)     
 
 
ET2007ツアー 
( 株) タンバック、メディアラボ( 株)    
最初は、各種CPUによるボードコンピュータを設計・開発する「タンバック 」と「メディアラボ 」 。展示されていた顔認識システムはLinuxが搭載されており、あくまでもデモ用だ。具体的に商談になるのは、展示しているボードをそのままほしいというよりも、それらと組み合わせて新たな機能ができないかというところから話が膨らむそうだ。        
タンバック、メディアラボのブース  
 
 
案内人自らJTAGの口を指差しながら「あとで、もっと進んだソリューションもあるので憶えておいてね」と、ツアーの順序まで気を配っていただいた。    
案内人自らが解説(1)  
 
 
案内人自らが解説(2)  
 
 
( 株) 日新システムズ  
次は、10月に6年ぶりにWind River社と提携した「日新システムズ 」 。組込み開発のプロフェッショナルサービスとして、カスタムハードウェアへのOS移植からアプリケーション開発までのトータルなサービスとVxWorksエミュレータなどの開発支援ツール以外に、リモートKVMなどのネットワークでつないだ遠隔開発支援ツールが展示されていた。開発現場を自在につなぐ遠隔開発支援は今後の効率的な開発の一形態となるそうだ。    
日新システムズのブース 
 
 
( 株) アドバンスド・データ・コントロールズ    
Green Hills Software社製品を中心とした組込み開発ソリューションを提供する「アドバンスド・データ・コントロールズ   」では、ブース内の「TTTech Automotive 」で話を聞いた。同社は組込み開発でも自動車や航空機など高い信頼性が求められる分野に特化している。FlexRayコンソーシアムやAUTOSARなどに参画し、標準化などにもかかわっている。今後、日本のメーカーにももっと利用してもらいたいと意気込む。エンジニアリングから製品、方法論を提供する。        
ADoCブース内のTTech 
 
 
京都マイクロコンピュータ( 株)  
超高速JTAG ICEとデバッガソフトが一体となった「PARTNER-Jet」で有名な「京都マイクロコンピュータ 」では、社長の山本彰一氏が今回の一押しを紹介してくれた。先日発表されたばかりのGoogle携帯電話のプラットフォームの「Android」について、「 オープンソースを上手に使った環境で、Linux、Opera、Eclipseなどが利用されています。Androidをダウンロードしてみたら、自分たちがやってきたOSSでいっぱいでした。それでPARTNER-JetとAndroidをつないでみたらシステムの状態が見えて、これはまだ誰もやっていないからおもしろいかな(笑) 」と。そして同社の使命として「ソフトウェア開発を楽しくする環境を提供するためにやっています。ソフトウェアはしんどいイメージがあるかもしれないけど、今後もそれが楽しくなるような製品を提供したいです」と熱く語った。                
京都マイクロコンピュータ 
 
 
( 株) ガイア・システム・ソリューション    
組込みシステム開発力強化をトータルで提供する「ガイア・システム・ソリューション   」では、『 組込みプレス Vol.8』の「今日も晴れるかな~組込み業界を支える女性たち~」にも登場いただいた吉川美弥さんがデザインしたブースの見学だ。一押し(凝ったところ)は側面がカーブになっているところだそうだ(時間の都合で、展示内容については見れずにすみません^^;) 。          
ガイア・システム・ソリューション   
 
 
NEC/NECエレクトロニクス  
展示製品・ソリューションの印象、説明のわかりやすさ、デモンストレーション内容、ブースデザインという4項目を中心に、初日の来場者アンケートをもとにした「ET2007 Award」で優秀賞だった「NECグループ 」 。グループとしての統一感が好印象であった。        
GPS機能搭載通信モジュールを活用した広域RFIDシステム(移動型センサ)は、KDDIの通信モジュールにNECエレクトロニクスのマイコン、そしてソフトウェアはNECソフトなど各社のコラボレーションでできたものだそうだ。普通は携帯電話でもできるが、マイコンで自由に制御できるゴルフバッグにつけるタグのイメージで、物流で使うとトラッキングしてくれ、温度もわかる。さらに振動を検知して、夜間に動いていないときは省電力になるようなしかけがある。        
NECグループ 
 
 
また、マイコン開発を体験できるセミナー(無料)を開講している「NECエレクトロニクス 」では、グラフィックスのところで話を聞いた。高速赤外線通信のデモのほか、20MHzのマイコンで内臓メモリだけを使ったV850ES/JG2によるFlash Player上に搭載した洗濯機のパネルをイメージした機器が展示されていた。組込み開発ではなく、Flash Player上で動作するアプリケーション開発が可能になる。スタータキットは来年のはじめころには出荷される予定という。また、隣はアプリックスのJBlendでJavaが搭載されている。          
NECエレクトロニクス(V850ES/JG2)   
 
 
パーソナルメディア( 株)  
T-Engineベースの組込みシステム開発サポートをする「パーソナルメディア 」は、x86用の組込み開発パッケージとして「T-Kernel/x86開発キット」があった。PC上でT-Kernelのソフトを開発できる仮想マシンにも対応している。またバーチャル環境での展示もあった。      
パーソナルメディア 
 
 
T-Engineフォーラム 
「T-Engineフォーラム 」では、活動紹介やユビキタスIDセンターなどの活動が紹介されていた。なお、「 TRONSHOW 2008 」は、12月12日(水) ~14日(金)に東京国際フォーラムで開催される。詳細と申込みは、公式Webサイトより。        
T-Engineフォーラム 
 
 
( 株) コア  
“エンベデッドのコア” と大きく書いた「コア 」では、T-Engineトータルソリューションとして応用事例などが展示され、また冊子としてまとめられていた。SDKのラインナップを今後も増やしていきたいという。開発環境やミドルウェアからシステム受託開発までT-Engine開発をトータルでサポートする。     
コア 
 
 
イーソル( 株)  
T-KernelとμITRONを中心に、開発環境、各種ミドルウェア、そしてプロフェッショナルサービスを含んだソフトウェアプラットフォーム「eCROS」を提供する「イーソル 」は、マルチコアが一押し。シングルコアでは限界になったユーザからマルチコア対応へのニーズが多くあるそうだ。なお、マルチコア対応RTOS「eT-Kernel Multi-Core Edition」は1つのシステム内にSMP型とAMP型プログラムの混在が可能になる。           
イーソル 
 
 
ワテック 
CCDカメラやその周辺機器および応用製品の開発設計・製造・販売を行う「ワテック 」では、多数のCCDカメラが展示されていた。モノクロやカラーとバリエーションも豊富だ。暗室でもきれいに映し出す超高感度モノクロカメラが展示された。8割が海外での売り上げだが、海外では1番のニーズがある製品だという。      
ワテックの超高感度モノクロカメラ 
 
 
TOHOKU組込みフォーラム 
東北地方の組込み技術を活用するいわゆる川上企業と自動車や福祉機器、情報家電などの川下企業とのネットワークを構築するなどの展開を見せる「TOHOKU組込みフォーラム 」では、23社がブースを展開した。ジョイント・コーディネータがブース内でツアーを開催していた。とても活気のあるブースだった。     
TOHOKUものづくりコリドー(なまはげがお出迎え)  
 
 
高速回転の物体から文字認識 
 
 
( 株) ハイテックシステム  
ユーザの仕様によって構成を変更できるファンレス・小型・省電力コンピュータを提供する「ハイテックシステム 」は、地元(山形)の企業とコラボレーションして1台からでも可能なKIOSK端末を展示されていた。       
1台からでも可能なKIOSK端末(ハイテックシステム)  
 
 
( 株) ルネサステクノロジ  
マイコンで豊富なラインナップを誇る「ルネサステクノロジ 」では、Tinyマイコンの新製品などの展示以外にも、SH-Mobileの携帯電話用途とは違った展開製品などのソリューションがあった。    
ルネサステクノロジ 
 
 
東京エレテック( 株)  
「東京エレテック 」では、ICソケット、エミュレータ用コネクタ、延長ケーブルおよび基板間応用製品の標準品のほか、ユーザの開発環境を快適にするためのソリューションを同社固有の技術で実現したカスタム製品が展示されていた。     
ツアーの最初で案内人の根木さんから「憶えておいてね」とあった「JTAGのコネクタ」だが、ここで謎解きされた。非常にシンプルな創りで、「 きゅっと挟んでデバッグできる」そうだ。量産品の側をこうしておけば、コストがかからないという。また、こういったアイデアは人と人がコラボレーションして生まれるという。        
東京エレテック(JTAGの口がシンプル!)  
 
 
リネオソリューションズ( 株)  
コンシューマや医療、アミューズメントなど多く機器に搭載されているLineo uLinuxを提供する「リネオソリューショズ 」では、実際の搭載製品も展示されていた。また、組込みLinux開発環境のELITEやさまざまなソリューションが紹介されていた。     
リネオソリューションズ(搭載機の展示)  
 
 
モンタビスタ ソフトウエア ジャパン( 株)  
一番新しいバージョン 5.0がすべてのエディションで出揃ったところを押す「モンタビスタ ソフトウエア ジャパン 」 。5.0では、さらなるリアルタイム性の向上と開発環境(IDE)も一番新しいEclipseベースのDevRocket5.0に対応し、より使いやすくなっている。        
モンタビスタ(モバイル機器向け- Mobilinux)  
 
 
トライピークス( 株)  
組込みLinuxの起動時間短縮ソリューション「TPInstantBoot」を提供する「トライピークス 」では、10月中旬より発売されている三洋電機( 株) のデジタル液晶テレビが、搭載事例として展示されていた。6.5秒くらいで電源断状態から起動する。家電以外にも医療、ネットワーク機器でも搭載されていくという。         
トライピークス 
 
 
ザイリンクス( 株)  
PLDベンダの「ザイリンクス 」では、業界初の65nmプロセスを駆使したVirtex-5 FPGAなどのほか、多くのパートナー各社などで各種ソリューションが展示されていたが、担当者が別件のため3日目に取材することとなった。     
ザイリンクス 
 
 
ツアーの感想 
このツアーの前日に、案内人の根木さんから各ブースへの訪問時間を周知していただき、きちんと訪問予定のブースをマーキングして、効率よく回ることができた。ただ、予定時間があまりにも短かったため、駆け足でのブース巡りとなった感があるが、いかがだっただろうか?      
ツアーマップル 
 
 
ツアーに参加いただいた三氏のコメントは、「 あとでゆっくりと見直しと思うが、とても充実していた(上辻さん) 」 、「 やっぱり実際にまわってみるものだと思った。今まで求めていた商材がポロッと出てきたりした。これまでは自分の目で追いきれなかったものや通り過ぎていたものが見れて、非常によかった(久保田さん) 」 、「 1人だと躊躇(ちゅうちょ)してしまうブースにも入れたので、おもしろかったです(天野さん) 」だった。        
ETフェスタ 
ET恒例のイベント「ETフェスタ」は17時から18時までの開催された。これは、来場者と出展各社がコミュニケーションを深めるイベント。たとえば、組込みコンサルティングやエンジニア教育を提供する「豆蔵 」では、豆蔵というお酒やおつまみに豆のように、趣向を凝らしたおもてなしがされていた。また、メインステージではライブイベントも開催された。今回はSESSAME/TOPPERS+αのメンバーによる演奏だった。          
ETフェスタ(豆蔵ブース)  
 
 
ETフェスタ 
 
 
 
そして、2日目も無事に終了した。さらに、ここからは各種団体/コミュニティの交流会や飲み会が企画され、桜木町近辺は賑わうこととなるが、ここでは割愛する。     
横浜みなとみらい