4月23日、日本最大のユーザ数1,683万人(2009年3月31日時点)を誇るSNSサービス「mixi」を展開する株式会社ミクシィ主催のイベント「mixiアプリカンファレンス2009」が、品川The Grand Hallにて開催されました。今回、昨年発表された「mixi Platform」の一環である「mixiアプリ」がいよいよ本格的に展開する、第一弾の戦略として開催されたもの。ここでは、その模様についてお届けします。
mixiアプリカンファレンス2009開催
「これまでの5年間で最大の変革を迎えている」
オープニングにあたり、株式会社ミクシィ代表取締役 笠原健治氏による主催者挨拶が行われました。
5年間のmixiの動き、そしてこの先5年について述べる笠原氏
まず、ユーザ数の推移や属性とともにこれまでのmixiの5年間を振り返った。前述の通り、1,600万人以上ものユーザを獲得できた理由について、「 mixiがSNSとして日本で普及した一番の要因は、やわらかいコミュニケーションを実現できたからだと思います。それまでのブログによるやりとり、掲示板でのコミュニケーションとは異なり、ゆるいつながりである一方で、リアルなコミュニケーションにつながったからです。その感覚を実現している最大の機能が日記です」とコメントした。
mixiのユーザ数の推移
さらに、「 mixiで一貫している理念はコミュニケーションプラットフォームであること」と前提したうえで、「 昨年のmixi Platform戦略の発表により、現在、過去5年間のうち最大の変革期を迎えています。そして、それを担うものとしてmixiアプリがあります。これにより、今後は誰もがmixi上にアプリケーションを作ることができ、ユーザに対してインパクトのあるサービスを提供できるのです」と、mixiアプリに対する期待を述べました。
具体的なmixiアプリのメリットは、
日本最大のSNSで提供できるソーシャルアプリケーション
PCとモバイルの同時展開は世界初(同カンファレンス翌日に、モバイル向けmixiアプリの仕様が公開された)
ソーシャルアプリケーションプロバイダー向けビジネス支援プログラム
の3つがあるとして、これからのmixiアプリの進化、普及について強く語りました。
Googleが期待するmixiアプリとOpenSocialの可能性
続いて登場したのは、グーグル株式会社代表取締役社長 辻野晃一郎氏。
グーグル株式会社代表取締役社長 辻野晃一郎氏
OpenSocialによるエコシステム
Googleと言えば、ソーシャルアプリケーションの基盤技術であるOpenSocialの推進に大きな役割を果たしている企業の1つ(http://gihyo.jp/news/report/2008/12/2401)で、mixiアプリがOpenSocialに準拠していることから、日本におけるソーシャルアプリケーションの普及に期待しているコメントを述べました。
「日本はとくにモバイルが進んでおり、( mixiアプリからの)モバイル仕様策定への貢献に期待しています。そして、mixi自体が発展することで、さらなる貢献してもらいたいです」 。
mixiアプリの技術仕様について
笠原氏、辻野氏の両名から、日本におけるmixiアプリへの期待とこれからという論点でプレゼンテーションが行われた後、今後は、技術的観点から見たmixiアプリについて、ミクシィ技術顧問の小山浩之氏から、実例とともにmixiアプリの技術的特徴が説明されました。
mixiのインフラを支えてきた一人、ミクシィ技術顧問小山氏
“友達の体験”がSocial Applicationを駆動する
まず、ユーザから見たmixiアプリの動作イメージについて、実際にユーザがログインした状態での操作と結果について触れた。これまでのmixiのUIを踏襲し、ユーザが迷わないようにインストールできる点など、利便性の確保を紹介しました。
そして、本質となるmixiアプリのコンセプトについて「“ 友達の体験” がSocial Applicationを駆動する」と紹介しています。これは、これまでmixiが提供してきた日記やエコーなどのサービスと同じく、友達(マイミク)の動き、ソーシャルグラフの概念こそが、mixiのサービスの強みであり、また、ソーシャルアプリケーションとしての価値であるというもの。「 mixiアプリも、この考え方を踏襲して、PCとモバイル両方に対応して開発が行えるので、ぜひたくさんの開発者の方にアプリケーションを開発してもらいたいです」と、Webアプリケーションエンジニア、プランナーへ訴えました。
さまざまなAPIの提供
前述のコメントの裏付けの1つとして、mixiアプリにはさまざまなAPIが提供されていることも紹介された。
Person & Friends API
Community API
Activities API
Persistence API
gadgets.io API
この他、現在も開発中のAPIがあり、すべてがOpenSocialにも準拠しているため、さまざまな利用シーンやニーズを満たすことができるものとして、mixiアプリの仕様として公開されています。こうした技術基盤と、数多くの開発者たちのアイデアから、すばらしいmixiアプリが開発となるのです。
モバイル向けmixiアプリの技術仕様公開
これまで何度も述べられてきた、モバイル向けmixiアプリ技術仕様「mixiアプリモバイル」についても触れられました。
PCとモバイルを同時展開しているのが、mixiアプリの強み
日本という携帯電話上でのサービスが豊富な環境において、モバイルが担う役割は大きく、また、そのためのプラットフォームの提供は不可欠ということから、mixiアプリではPC/モバイル両環境のプラットフォームが用意されています。
なお、mixiアプリモバイル は、イベントの翌日2009年4月24日に発表されました。
ソーシャルアプリケーション「mixiアプリ」のこれから
全国大会vsマイミク大会
以上、個別のプレゼンテーションの後、最後はミクシィ mixi事業本部長 原田明典氏をモデレータとしたソーシャルアプリケーションプロバイダーの紹介およびビジネス支援プログラムに関しての説明が行われました。
mixiアプリプロバイダーのプレゼンテーションのナビゲーションを務めた、mixi事業本部長 原田明典氏
原田氏は、従来のCGMやそれに準ずるコンテンツとmixiのコンテンツの違いについて、「 全国大会vsマイミク大会」という表現を用いています。これは、従来のコンテンツがインターネット上すべての世界のうえで実現されているコンテンツであることに対して、mixiのコンテンツは、マイミクというソーシャルグラフの中で実現されるコンテンツであり、これこそがmixi、そしてmixiアプリの魅力かつ強みと述べました。
全国大会vsマイミク大会の概念
続々登場! ソーシャルアプリケーションプロバイダー
今回登場したソーシャルアプリケーションプロバイダーは、
ロックユーアジア株式会社
株式会社バンダイナムコゲームス
株式会社リクルート メディアテクノロジーラボ
株式会社コミュニティファクトリー
の4社。
最初に登場したロックユーアジアは、米RockYouのアジア向け法人で、すでにFacebookやMySpace上でソーシャルアプリケーションの開発を行っており、ビジネス的にも素晴らしい実績を残している企業である。今回、mixiアプリに向けて「Super Pets」という、仮想ペット飼育ゲームをリリースしました。
ロックユーアジア取締役 Jia Shen氏(左)
ロックユーアジアが提供する、Super Pets
次いで登場したバンダイナムコゲームスは、すでにピコミクやmixiコレクションなどでmixiとのコラボレーションを行っていたこともあり、今回は、その関係がさらに強化されたことを説明した。mixiアプリについては現在開発中である、マイミク同士でお祝いし合える「バースディケーキ(仮) 」が発表されました。
バンダイナムコゲームスNE事業本部執行役員 浅沼誠氏
バースディケーキのコンセプト
3番目に登場したのは、日本最大規模のメディアを持つリクルートの開発グループ、メディアテクノロジーラボ。同社はすでに、コマーシャライザーやC-Teamなど、多数のWebサービスを展開しており、mixiアプリでの展開についても、従来どおり、数多く豊富な種類のサービスを提供することがMLTの価値として、今回30種類のmixiアプリが準備されていることが発表されました。
リクルートメディアテクノロジーラボ局長 木村稔氏
リクルートMTLでは、30本のmixiアプリリリースが準備されている
ワンパク、カヤックなど、リクルートMTLとともにmixiアプリを開発するパートナー企業
最後に、4月8日に発表されたmixiファンドからの支援企業第1号となった、コミュニティファクトリーが登場した。現在、いくつかのmixiアプリを開発中とのことで、中でもソーシャルゲームのジャンルに注力していくとのこと。
コミュニティファクトリー代表取締役社長 松本龍祐氏
コミュニティーファクトリーが考えるソーシャルゲームのコンセプト
mixiアプリから広がる新たなビジネス
各プロバイダーのプレゼンテーション終了後に、mixiアプリを中心とした新たなビジネスモデルについて、原田氏より詳しい説明がありました。
mixiアプリの3つのビジネス支援プログラム
広告に関しては、「 mixiアプリ・オフィシャル アドプログラム」が準備され、mixiが販売代理・配信を行う形で進んでいくとのことです。
mixiアプリ・オフィシャル アドプログラム
課金に関しては、mixiペイメントAPIが用意され、ソーシャルアプリケーションプロバイダーとmixiによるレベニューシェア(80:20)による課金が行われます。
課金システムを構築するmixiペイメントAPI
今後のスケジュールに関しては、2009年8月にmixiアプリ(PC)サービス提供開始、9月にmixiアプリ(モバイル)サービスおよびmixiアプリ・オフィシャル アドプログラムの提供開始、10月にモバイル課金支援プログラムの提供開始が予定されています。
mixiアプリ関連のロードマップ
「ソーシャルアプリケーションアワード」開催決定
最後に、mixiアプリを対象としたアワード「ソーシャルアプリケーションアワード」の開催が発表されました。応募期間は2009年7月1~8月31日の2ヵ月間、詳細については、ソーシャルアプリケーションアワードの公式サイトを参照。
ソーシャルアプリケーションアワード
http://developer.mixi.co.jp/award
ソーシャルアプリケーションアワード開催のお知らせ
以上、6年目を迎えたmixiのこれからを担うmixiアプリに関連したカンファレンスの模様をお届けしました。今回、技術的な部分はもちろん、これまでの広告モデルに加えた新しいビジネスモデルの1つとして、ソーシャルアプリケーションビジネスの入口が見える内容でした。これからmixiがどのような方向に進んでいくのか、gihyo.jpでは引き続き注目していきます。
写真右から、リクルートメディアテクノロジーラボ局長 木村稔氏、ロックユーアジア取締役 Jia Shen氏、グーグル代表取締役社長 辻野晃一郎氏、ミクシィ代表取締役社長 笠原健治氏、バンダイナムコゲームスNE事業本部執行役員 浅沼誠氏、コミュニティファクトリー代表取締役社長 松本龍祐氏