ユーザを意識した WebマーケティングとWeb戦略

2009年10月20日、株式会社技術評論社主催「第2回戦略的Webマーケティングセミナー」が開催されました。今回は「ユーザの行動」にフォーカスし、顧客を最優先に考えたマーケティング施策に関するセッションが行われました。ここでは、その模様についてお届けします。

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特別講演

ユーザーの行動を見るために
~ウェブ解析によるウェブマーケティングのポイント
図1 特別講演を行った、オムニチュア株式会社コンサルタント 安西敬介氏
図1 特別講演を行った、オムニチュア株式会社コンサルタント 安西敬介氏

検索キーワードに注目!

「第2回 戦略的Webマーケティングセミナー」のトップは、 オムニチュア株式会社コンサルタントの安西敬介氏(オムニチュア)による基調講演、⁠ユーザーの行動を見るために~ウェブ解析によるウェブマーケティングのポイント~」です。Web解析ツールの機能が着々と強化され、アクセスログ以外の多様な分析が可能になりつつある中で、ユーザの行動を理解するための多様なアプローチが紹介されました。

まず最初に安西氏がその冒頭で強調したのは、Webサイト内でのユーザの行動を一歩引いた視点で捉えることの大切さです。どういった手段で顧客がWebサイトを訪れ、どういう順にページを移動しているのか。アクセスごとにそれらを把握しようとすれば、必然的に膨大な手間と労力が必要となります。そこで、アクセスの遷移を総合的に捉え、対策を講じるべき課題を洗い出すことが分析の狙いになるわけです。

その実践に向け、安西氏が提示した分析手法の1つが、企業内検索に着目したものです。

どの検索キーワードがどれほどの頻度で利用され、検索結果が表示されない、いわゆるゼロ検索のどれほど発生しているのか。それらの分析が、顧客の潜在的なニーズや、機会ロスの発生率など可視化につながると安西氏は説明しました。さらに、各種の検索キーワードを独自に分析することで、独自の改善策を実施することも可能になることを強調します。

続いて安西氏は、リファラ情報を活用したアクセス解析手法について説明しました。これは、サイトにアクセスした動機をアクセス元から探るアプローチです。この手法の弱点は、メールやRSS、Twitterからのアクセスは、リファラ情報を取得できないことです。ただし、その場合でも、⁠リンク元のURLに独自のパラメータを付与しておくことで、メディアを問わずアクセス元を判別することが可能」と安西氏。さらに一歩踏み込み、バナーなどにパラメータを個別に設定することで、各種キャンペーンの効果測定などにも活用する方法も紹介されました。

このほか、ユーザのセグメンテーション方法などについても説明。最後に「行動は言葉よりも多くのことを語る」と述べ、多角的な行動ベースの分析がWebサイトの高度化に欠かせないと語り、基調講演を締めくくりました。

セッション1

注目度No.1!ベンダー調査で最高評価を獲得したオラクルCMSの実力とは
日本オラクル株式会社 FM統括本部 担当シニアマネージャー 渡邊紳二氏
日本オラクル株式会社 FM統括本部 担当シニアマネージャー 渡邊紳二氏

時代はCMSからECMへ

基調講演に続くセッションは、⁠注目度No.1!ベンダー調査で最高評価を獲得したオラクルCMSの実力とは」をテーマに、 日本オラクル株式会社FM事業統括本部担当シニアマネージャー・渡邊紳二氏からお話をいただきました。 渡邊氏によると、現在、米国を中心にWebコンテンツのみならず、社内のあらゆるデータを一元的に管理するエンタープライズ・コンテンツ管理(ECM)製品の普及が急速に高まっているとのこと。多くの企業には、⁠Webコンテンツを一元管理するだけではコストメリットがなかなか得にくい⁠⁠、⁠文書管理システムやデジタルアセット管理システム、CMSなどが並存してしまい、社内に同じ情報が散在してしまう⁠⁠、⁠ECサイトをCMSに対応させることは技術的に困難」といった課題があり、それを解決できることがECMに注目が集まっている理由だと説明します。

日本オラクルではECM製品として「Oracle Universal Content Management(Content Management⁠⁠」を提供。その大きな特徴に挙げられるのが操作性の高さです。一般的にコンテンツの登録はテンプレートを利用して行われることが多いものの、そのためにツールの操作を修得する手間が利用者に求められていました。

一方Oracle Universal Content ManagementではWordやPowerPointから直接登録することが可能。独自の変換技術を用いることで、タグの制御やスタイルシートへの適用も可能な他、フォントやサイズもWordなどで自由に設定することができます。また、渡邊氏は「コンテンツに変更を加えた際には、PDFが自動的に生成されることも大きなメリットです」とも。PDFでの履歴管理により監査証跡を残せる仕組みを整えることで、コンテンツの改ざん防止のみならず法制面への対応も図れるわけです。

Webコンテンツ管理とデジタルコンテンツ管理、文書管理のためのスイート製品と位置づけられるContent Management。セッションの最後にはそのデモンストレーションが実施され、多くの参加者が興味深く見入っていました。

セッション2

分析結果を活用したWebサイトとメールのパーソナライズ化の実践方法
~行動ターゲティング、リコメンドとキャンペーンの計画・管理を中心に~
レコメンデーションについて説明した株式会社ブレインパッド 佐藤洋行氏
レコメンデーションについて説明した株式会社ブレインパッド 佐藤洋行氏

分析結果を次のアクションに生かすために

各種ツールの進化と低価格化により、ユーザのサイト内の行動や購買履歴などの分析はもはや一般的なものになっています。 ただし、その結果を次のアクションにどうつなげるべきかに悩む企業も少なくありません。そこでセッション2では「分析結果を活用したWebサイトとメールのパーソナライズ化の実践方法」をテーマに、 株式会社ブレインパッドの佐藤洋行氏からお話をいただきました。

ブレインパッドがWebサイトやメールのパーソナライズ化を支援するため、提供しているASP型レコメンデーションシステムが「Rtoaster」です。その最大の特徴は、サイトを訪れてから離れるまでの利用者のさまざまな行動を継続的に収集し、顧客データの精度を向上できること。アクセス元のサイトやサイトの訪問回数、前回アクセスからの間隔、サイト内検索に用いられたキーワードなど、収集されるデータは極めて多岐にわたり、それらは数値化されデータベースで一元的に管理されます。

その上でRtoasterはユーザ間/商品間の関係性を可視化するネットワークを構築し、2種類のレコメンドパターンを自動作成。マーケティング担当者が作成した各種のレコメンドパターンなどと組み合わせることで、現状を踏まえた最適なコンテンツの表示が可能になるわけです。Rtoasterをメール配信システムと連携させることで、行動スコアに基づき顧客のセグメントごとのターゲティングメールの送信も可能になるとい言います。

ブレインパッドではキャンペーンマネジメントツールの「smartFOCUS」も併せて提供。同ツールを利用すれば、数千万件の顧客データのクロス集計やベン図/各セグメントごとのユーザーリストの作成を、ドラッグ&ドロップ操作で直感的かつ高速に実施することができます。ひいてはマーケティング担当者自らがキャンペーン対象者の抽出を行えるようになり、リストの精度向上も見込めるわけです。

RtoasterやsmartFOCUSを利用したWebサイトやメールのパーソナライズ手法は、レコメンデーションの高度化を推し進める多くの企業に参考になったことでしょう。

セッション3

ウェブ解析のサイクルを加速する最強の国産CMS それがRCMS
前回に引き続き登壇した、株式会社ディバータ代表取締役社長 加藤健太氏
前回に引き続き登壇した、株式会社ディバータ代表取締役社長 加藤健太氏

コンテンツの関係性をメタデータで管理

セッション3のタイトルは「ウェブ解析のサイクルを加速する最強の国産CMS それがRCMS⁠⁠。 株式会社ディバータ代表取締役社長の加藤健太氏が講演しました。

ディバータが提供するRCMSは、⁠Relational Contents Management System」の略称。コンテンツをフォルダ管理するシステムが一般的な中、写真やテキスト、地図情報などのコンテンツをメタデータ化し、その関係性を管理することで、サイトのデザインとコンテンツを個別管理できるのが大きな特徴です。⁠これによりサイトのリニューアルと並行してコンテンツを充実させられるわけです」と加藤氏。モバイル向けサイトなどにコンテンツ流用する、いわゆる「ワンソース・マルチユース」もメタデータ化によって実現されています。

サイト構成の見直しも容易に行えるため、アンケート機能で得られた利用者の声やアクセス解析の結果をもとに、サイトを日々進化させることが可能になります。これらのメリットが高く評価され、早稲田大学ラグビー部や国内熱帯木材機関のWeb、さらにアイ・エム・ジェイのイントラネットにも採用されるなど、利用の裾野は着実に広がりを見せています。

ディバータではSaaS型とパッケージ型の2種類のRCMSを用意。前者であれば、申し込み数分後には利用環境が整うとのことです。また、ベータ版を無料で提供する独自の開発モデルによって、短期間のうちに機能拡充を行ってきたことから、全ページへのLPO設定やEFO導入、多段式の承認ワークフロー、問い合わせ管理など、150以上の機能を利用することもできます、。今でもひと月あたり4~6つほど新機能が追加されているそうです。

最新技術への対応も早く、Google関連技術などの進歩や変化を気にせずに最先端のシステムが扱えるようになっています。

最後は、6,000億のアカウントにサービスを提供するため、さまざまな対策を通じてSaaS型でありつつ高いセキュリティを確保していること、クリックヒートの利用を通じてさらに高度なアクセス解析が可能になることなどについて説明しました。CMSに新たな時代が到来しつつある、そんなことを感じさせるセッションでした。

(座談会の模様は「キーパーソンが見るWeb業界(2009年12月上旬公開⁠⁠」へ)

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