「第8回 HTML5とか勉強会」活動報告

HTML5開発者コミュニティhtml5-developers-jpが主催し、毎月第3水曜日に開催させて頂いている「html5とか勉強会⁠⁠。第8回となる今回は、人形町にオフィスをかまえる株式会社情報通信総合研究所のプレゼンテーションルームを提供いただき、7月14日に開催しました。

今回は先日リリースされたIE9 Platform preview3のUpdateや、iPadの登場で日本でも話題となっている電子書籍(EPUB)に関するHTML5/CSS3の標準化動向など大変興味深い内容について講演していただきました。

「Internet Explorer 9 Platform Preview3」

Internet Explorerの次期バージョン IE9のPlatform preview3が先日(6月23日)にリリースされました。こちらについてマイクロソフトの五寳(ごほう)さんに講演していただきました。

マイクロソフトは、IE7以降、順次Web標準のサポートを進めています。しかしながら、IE6への後方互換性確保というハードな制約条件を守りつつ標準化への対応を進めなければならなかったため、他のモダンブラウザに比べ、やや遅れをとっていた感が否めませんでした。しかし、次期バージョンのIE9では、HTML5へのコミットメントを表明しており、今回リリースされたpreview3でも著しい進展がみられています。現行のpreview3でサポートされているHTML5の機能が紹介されました。SVGやCanvasなどのグラフィクス系の機能やH.264ベースでのAudio&Videoサポート、また、CSS3のサポート状況などについても、デモも交えつつ説明いただきました。

HTML5の進展・普及に対し、IneternetExplorerによるサポートは重要なファクターであり、マイクロソフトIE9の今後の動向に注目です。また、8月25~27日の会期で開催されるtech・ed 2010ではIE9のLightning Talk登壇者を募集中とのことですので、興味のある方は是非ご確認ください。

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「EPUBやCSSと日本語レイアウト HTML5と電子書籍」

アンテナハウスの村上さんに電子書籍(EPUB)での日本語化対応について講演していただきました。

EPUBはXHTML+CSSに目次やメタデータを合わせてZIPパッケージ化したもので、iPad標準のEPUBビューアiBooksでも使われている規格です。しかしながら、CSS2(縦書きをサポートしていない)をベースにしていることから、日本語環境での組版には対応していません。このためCSS3をベースに、次期EPUBとして縦書きの実現方式を中心とした日本語化対応の仕様化検討を進めており、こちらの詳細について説明いただきました。

例えば、横書きではmargin-leftを用い行頭の字下げが表現されますが、このプロパティを縦書きに適応すると、最初の1行の左側に不自然なスペースが生じます。このため縦書き環境のためにmargin-topを用いると、横書きにしか対応していないブラウザでは同様に不適切なレイアウトが生成されてしまいます。このような観点から、縦書き・横書きをone sourceで表現するためのCSS3でのプロパティ拡張について仕様化検討を進めており、こちらの詳細について非常に分かりやすく、かつ丁寧に紹介いただきました。

なお、HTML5 Japanese Interest Groupで現在こちらについて活発に議論が進められています。このメーリングリストは、誰でも無料で参加できますので、興味のある方は是非参加してみてください。

講演資料は、こちらで公開されています。

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「DaVinciPad開発で学んだ事(HTML5編)」

本勉強会の主催者である白石さんが、ご自身の会社(OpenWeb Technology)のプロダクトDaVinciPadの開発を通し得られた、HTML5によるWebアプリケーション開発のノウハウについて講演されました。

DaVinciPadは、Chrome Extensionによるプライベートなメモ機能とtwitterやfacebookなどへのマルチポスト機能を提供するツールで、⁠Chrome ExtensionならHTML5が思う存分使える!」ことからHTML5の機能をふんだんに活用しています。

この開発経験を基に、例えば、⁠WebStorageはCookieに比べ手軽に利用でき、かつネットワークトラフィックも抑制できることから積極的に利用すべき」とか「オフラインアプリでのDB同期はハードな問題である」などが述べられました。特に、オフラインアプリではサーバーとクライアントが共に異なるステートを持ちうる複雑なケースが存在するため、状態遷移を考慮した設計が非常に大変であるという話は興味深かったです。

講演資料は、こちらで公開されています。

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HTML5 WebSocket

アクセンステクノロジーの遠藤さんから、ご自身がErlangで開発されたWebSocketサーバーについて、デモも含め講演いただきました。

紹介されたデモは、INTEROP TOKYO 2010のために作られたものであり、RADIUSに送られた認証トラフィックをWebSocketとWebGLを使って可視化する非常に完成度の高いものでした。Erlangで開発されたWebSocketサーバーはライブラリとして提供されており、実装時のモデルも含め説明がされました。Erlangでは各クライアントとのコミュニケーションを行うプロセス相当の部分が軽量に作られており、メモリ使用量も少ないことから、スケーラビリティを確保しやすいであろうとのお話が特に印象的でした。

また、各種WebSocketサーバーの実装や、WebSocketを調べるにあたり参考となるサイトも複数言及されました。

講演資料は、こちらで公開されています。

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最後に

筆者が管理しています、Events in HTML5-jpで本勉強会の開催状況や、過去のアーカイブなどを公開しておりますので、是非活用ください。また、html5-developers-jpではHTML5について活発な情報交換が行われており、また各種イベント開催のアナウンスもされています。興味のある方は確認していただければ幸いです。

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