11月10日から12日の3日間、幕張メッセで「クラウドコンピューティングEXPO 2010」が開催されました。このイベントにおいて、特に注目を集めたブースを紹介します。
クラウドサービスを発表したさくらインターネット
仮想サーバを利用したホスティングサービス「さくらのVPS」で話題を集めているさくらインターネットは、このイベントに合わせて「さくらのクラウド」を発表、同社の代表取締役社長である田中邦裕氏のセミナーも多くの聴衆を集めていました。
さくらのクラウドはIaaS型のパブリッククラウドサービスで、12月頃を目処にアルファ版のサービスを開始する予定です。
CPUやメモリ、ストレージ容量をカスタマイズできるほか、従来のさくらインターネットのサービスと同様、ネットワーク利用に対する課金は発生しないのが特徴です。課金は1日単位でいつでも解約できる上、申し込みからわずか数秒で使い始められるなど、気軽に利用できるサービスとなっています。
さらに注目したいのが、さくらのクラウドにおいて提供される「VMイメージバンク」でしょう。これは仮想マシンイメージを保存できる領域で、ローカルにある仮想マシンイメージやOSのインストールイメージをアップロードしたり、逆に保存されているディスクイメージをダウンロードしたりできるというもの。さくらのVPSと連携もサポートしており、VMイメージバンクに保存されているイメージをさくらのVPSにデプロイするといったこともできるとしています。
田中氏はさくらのクラウドについて、「何も足さない、何も引かない」ことがコンセプトだと説明します。その言葉の裏には、IaaSとして必要な機能に注力し、不必要な機能を省くことによって性能がよい仮想サーバを低コストで提供するという意図が込められています。現時点では価格は未定としていますが、現在980円で提供されているさくらのVPSをやや上回る程度とのこと。今後、大いに注目したいサービスと言えるでしょう。
さらにさくらのVPSの今後について田中氏に伺ったところ、上位プランの提供やDNSの逆引きへの対応などを考えているとのこと。こちらも、これからの発展が楽しみです。
クラウドの活用事例をアピールするニフティ
ニフティのブースでは、2010年1月に提供を開始した「ニフティクラウド」を大々的に紹介。その中で、パートナー企業がニフティクラウド上で展開しているサービスや、多数の導入事例が展示されていました。
IaaS型パブリッククラウドサービスであるニフティクラウドは、すでに500社以上に使われているとのこと。さらにSaaS提供インフラとしての利用、あるいは企業がエンタープライズ用途で使うといったケースも増えているということで、幅広い領域でクラウドが着実に浸透している様子がうかがえます。
さらに来場者の注目を集めていたのが、家電製品とニフティクラウドを小型サーバで接続する小型サーバです。現在、ネットワークに接続できる家電背品が増えていますが、これらとニフティクラウドを専用の小型サーバを使って接続することにより、クラウドの新たな使い方を提案していました。そのほか教育機関向けのICT基盤としての利用事例の紹介なども行われており、積極的にクラウドの活用方法を広げようとする姿勢が印象的なブースとなっていました。
高性能サーバで差別化を図るカゴヤ・ジャパン
カゴヤ・ジャパンは、2011年2月に提供を予定している「カゴヤ・クラウド/VPS」について展示を行っていました。
カゴヤ・クラウド/VPSは仮想化ソフトとしてOpenVZを利用したVPSサービスです。サービスの特徴として挙げられたのはパフォーマンスの高さで、QuadCore CPUを2基搭載し、さらに128GBのメモリを搭載したハイパフォーマンスサーバが利用されるとのこと。同社のそのほかのサービスと同様に低価格であることも特徴で、予定価格は1時間あたり2円、月額固定の場合は900円としています。
同サービスで構築した仮想マシンを、KAGOYA 専用サーバー FLEXで提供している物理サーバへ移行できる点も特徴でしょう。これにより、事前のテストはカゴヤ・クラウド/VPS、本番環境はKAGOYA 専用サーバー FLEXと、スムースに使い分けることが可能です。
ちなみに同サービスのベータ版を先着200名に無償提供するとアナウンスしたところ、わずか1日で定員に達したということで、コストパフォーマンスの高さで提供のあるカゴヤ・ジャパンのVPSサービスということで、多くのユーザーが注目しているのが分かります。サービスの正式リリースに大いに注目しましょう。
柔軟性の高いIaaSを展開するフリービット
フリービットでは「Feel6. VDC ENTERPRISE-FARM」を中心に展示、その柔軟性の高さや低コストである点をアピールしていました。
IaaSとして提供されているFeel6. VDC ENTERPRISE-FARMは、サーバやネットワーク、ファイアウォール、ロードバランサなどを自在に組み合わせて利用できるIaaSであり、パブリックに公開するWebアプリケーションの実行環境をはじめとして、さまざまな用途で活用できるのが特徴です。仮想UTM(Unified Threat Management)も提供されており、自社のポリシーに即したセキュリティ対策を実現することができます。さらに仮想マシンのコントロールやネットワーク管理が行えるWebコンソールや、迅速にサーバを展開できるクローン機能など、多彩な機能が提供されているのも見逃せません。
そのほか注目を集めていたのが、ソーシャルアプリケーションプロバイダ向けの特別プランです。これは複数のユーザーが使う共用ストレージではなく、専用のストレージを割り当てたIaaSを月額10万円で提供するプランです。共用ストレージでは、ほかのユーザーのディスクアクセスがパフォーマンスに影響してしまいますが、専用ストレージであれば本来の性能をフルに引き出すことが可能となります。ストレージはシステム全体のパフォーマンスにおいてボトルネックとなりやすい部分だけに、このプランの魅力は大きいのではないでしょうか。
新サービスの提供に積極的な姿勢を見せるNTTPCコミュニケーションズ
「すべての会社にクラウドを。」というコンセプトのもと、クラウドサービスを積極的に展開しているのがNTTPCコミュニケーションズです。同社では10月にVerioのインフラを利用した「WebARENA CLOUD 9」のサービスを提供開始しており、クラウドコンピューティング EXPOのブースでも同サービスを大々的に展開していました。
クレジットカード払いであれば最短3分で仮想サーバを使い始められるパブリック型のIaaSであるWebARENA CLOUD9は、月額4800円で利用できるほか、ストレージやメモリ/CPUの追加を日割りで利用できるなど、IaaSらしい柔軟性の高い料金体系を採用しています。さらに物理サーバに障害が発生した場合、自動的に別の物理サーバに仮想マシンを移行するフェイルオーバーや、同じ物理サーバを利用している別のユーザーの負荷が高い場合に物理サーバを移すマイグレーション機能を備えており、安定したサーバ運用を実現しています。
そのほか、社内外のユーザーと情報共有やコミュニケーションが図れるSaaS「WebARENA SaaSアプリケーションコラボレーションツール(仮称)」や、クラウドのメリットを手軽に活用できる「パッケージ型クラウドサービス(仮称)」なども展示されていました。WebARENAのブランドでホスティングサービスを長年リードしてきたNTTPCコミュニケーションズは、クラウドの時代においても要注目の存在であるのは間違いないでしょう。