Infinity Ventures Summit 2011 Springレポートその2:スマートフォンビジネスの金脈と海外展開

Infinity Ventures Summit(IVS)では、選ばれたベンチャー10数社が新サービスを短時間で紹介するLaunch Padが名物となっている。このLaunch Padの様子はすでにさまざまな媒体で紹介されているため、IVS2日目のレポートとして筆者が参加した2つのセッションを中心に紹介したい。

ソーシャルゲームでは金がざくざく出ている。6名の開発対戦で月10億の売上が目指せるタイトルを開発

「スマートフォンビジネスの金脈を探る」と題したセッションではDeNAの取締役であり次期社長として内定している守安氏、NHN Japanの森川氏、そしてサイバーエージェント取締役の内藤氏が登壇した。各社ソーシャルゲームに取り組んでいる企業である。

守安氏は開口一番「ソーシャルゲームではすでに金がざくざくでている状態」とし、⁠後はどうやってこの金脈を手に入れるか」と語った。世界展開として日本と中国ではその国で閉じたプラットフォームとしてモバゲーを展開し、 Mobage Globalはその2つの国以外を全てカバーするプラットフォームとして展開していくという。

怪盗ロワイヤルを先がけとしてリリースされてきたDeNAの看板であるロワイヤルシリーズは「ミッションをこなして他人とバトルしてお宝をコンプリートする」という共通した要素を受け継いでおり、1本あたりの売上がすべて月10億円を達成している。DeNAが買収した開発会社ngmocoの持つ開発エンジンngcoreを利用してスマートフォン向けに開発された最新のロワイヤルシリーズが忍者ロワイヤルだ。

守安氏は、このAndroid端末向けタイトルの忍者ロワイヤルも売上月10億円が必達であると考えているという。驚かされるのはその開発体制だ。このDeNAの看板タイトルを企画1.5名とエンジニア3名、うちエンジニア2名は新卒という体制で制作を開始し2.5ヵ月でアルファ版を開発。その後エンジニア2名を増員し全体で6ヵ月間でリリースまで行ったと明かした。

CAは年内に100本のタイトルをスマートフォンに投入

サイバーエージェントは前回の記事でも紹介したように2,000名のうち200名以上がスマートフォン専任の体制で取り組んでおり、 今年3月末の時点で37のスマートフォン向けタイトルをリリースしている。この数字を年内に100まで持っていく予定となっている。

サイバーエージェントのスマートフォンへの取り組みについて語る内藤氏
サイバーエージェントのスマートフォンへの取り組みについて語る内藤氏

また、サイバーエージェントはスマートフォン向けの広告事業にも力を入れており、6月から月間13億インプレッションのネットワークで広告配信を行う。スマートフォンでの広告売上はまだ全体の5%程度にとどまっているという。

ハンゲームも定番ゲームを夏までに70本以上をリリース

ハンゲームを展開しているNHN Japanの森川氏は「スマホで大儲けできるかどうかはわからないが、どれだけクリエイティビティを活かしてどれだけイノベーションを起こせるか? イノベーションを起こすには、自ら成功モデルを生み出さなくてはいけない。成功モデルができたらみんなにのってもらう」と語った。

ハンゲームでは夏までに定番ゲームを70本以上スマートフォン向けにリリースしようと考えており、すでにテレビ番組とタイアップし位置情報をもとに街中に現れた怪獣を倒すという内容のゲームがリリースされている。

定番ゲームアプリを夏までに70本リリースするというNHN Japanの森川氏
定番ゲームアプリを夏までに70本リリースするというNHN Japanの森川氏

ネイティブアプリがいいのかブラウザアプリがいいのか

このように、各社スマートフォン向けのタイトルに力をいれているが、気になるのが今後スマートフォンでのソーシャルゲームはアプリを中心に展開していくのかブラウザを中心に展開していくことになるのかという点だ。

NHNの森川氏は「ユーザはスマートフォンをなんのために買うのか?ブラウザはネットのページを閲覧するために利用するのであり、ゲームはアプリで提供していかないとスマートフォンの価値が最大化されていかないのではないか?」と考えているという。

サイバーエージェントの内藤氏は「iPhoneに関してはアプリだが、Androidに関してはまだアプリがなかなかビジネスにはなっていない。どちらに振れるかわからない状況」と語り、DeNAの守安氏は「海外ではアプリが中心だが、国内では(ブラウザ中心のゲームが多い)ガラケーから移行してくるユーザが多いことを考えると直近では両方と言えるのでは」と述べた。

森川氏によると「アジアではコンソール市場が日本や欧米のようにない状態なので、ゲームをやるためにスマートフォンを買うというユーザがいる。そのためゲームらしいゲームへのニーズが強い。中国、韓国ではカジュアルなゲームよりもコアなゲームのほうが立ち上がっていくのではないか」と考えているという。

シリコンバレーで働くということ

続けて「シリコンバレー最前線&世界に挑む日本のベンチャー」と題したセッションでは、グリーのCFO青柳氏、頓智ドット社長の井口氏、そして500 StartupsのDave McClure氏が登壇した。

グリーが買収したOpenFeintで仕事をする青柳氏は、シリコンバレーに拠点を設けることで得られたメリットと苦労について語った。人材の確保に関しては、シリコンバレーのエンジニアの給与がストックオプションがあって、なお日本の1.5倍と高いため非常に厳しいという。それでもグリーが海外展開を本気でで進めていくことが伝わっていくことで働きたいと答えてくれる人がでてきたということだ。

米国で得られたことについて語るグリー青柳氏
米国で得られたことについて語るグリー青柳氏

とにかく「日本の会社であることを忘れて現地の会社としてやっていかなくてはいけない」とし、⁠米国に腰を据えることで入ってくる情報やパートナシップがある。住んでいると実際に会いたいなと思った会社と会え接点が増えた」とそのメリットについて語った。頓智ドットの井口氏も、⁠すぐ近くにソーシャルやモバイルのエコシステムを持っている会社と同じオフィスの中に入れた。」と話し、⁠そうした環境を手に入れるのに時間がかかるし、一番のメリット。激しく大きなエコシステムを目の前にしているわけだから我々は(シリコンバレーに)に行くべき⁠⁠。

ベンチャーキャピタリストであるDave氏は、⁠シリコンバレーにいる人はいい意味でクレイジーであるのが魅力」と話す一方、⁠日本のマーケットについて悲観的な声を聞くが、まだまだ非常に大きい。高齢化や中国の台頭が叫ばれているが、潮が引いても広い海がまだ残っているのと同じで、それが問題にないくらい大きい」と述べ日本市場が縮小するから海外へと出ていく動きに対して釘をさした。Dave氏は「でも、日本人は英語の影響力、英語の質の持つ力を過小評価しているのも事実。」とも言い加えた。

次のシリコンバレーになる都市は?

「次のシリコンバレーになる都市は?」との質問に、Dave氏は「北京が面白い。次はブラジル。ブラジルにはドイツ人、イタリア人も多く多様性がある」と答えた。青柳氏は「北京の次は東京かな。インターネットの会社の時価総額が大きい順がアメリカ、中国、そして日本。北米が日本を圧倒しており、その間にくるのが中国。中国の内需は東京を圧倒しているので東京は抜かれつつある。20代の層を僕らが育てていかなければいけない」と抱負を語った。

頓智ドットの井口氏は「アジアのハブである、シンガポールに非常に可能性を感じている。またシンガポールの人は恐れを持っていない」と答えた。井口氏は「アメリカ人はプレゼンがうまいというイメージがあるが、僕らが見ているのはアメリカのプレゼンの中でも素晴らしいものだけ。実際にはつまらないプレゼンや馬鹿馬鹿しいプレゼンがたくさんある」と話し、自身が良いプレゼンを行うために200回以上練習していると述べ参加者に恐れを持たず挑戦をする姿勢を示し鼓舞した。

今回のIVSでは、昨年の年末に行われたIVSからさらにスマートフォン、海外展開に向けた動きが加速し実際のサービスも動き出しているのが実感できた。半年先のIVSでは果たしてどうなっているのが今から楽しみである。

おすすめ記事

記事・ニュース一覧