「弥生スマートフォンアプリコンテスト」第1回開発者ラウンドテーブル

弥生株式会社は9月16日、東京都千代田区の同社において「弥生スマートフォンアプリコンテスト第1回開発者ラウンドテーブル」を開催した。このセミナーは、9月6日から同社が開催している「弥生スマートフォンアプリコンテスト」への応募を検討中の開発者を対象に、弥生シリーズの紹介やデータ連携のコツなどを解説するもの。

「弥生スマートフォンアプリコンテスト」は、弥生ユーザに業務効率化に役立つスマートフォンアプリを提供することを目的に開催しているもので、経理や人事などのバックオフィスの業務を楽しく、簡単にするAndroidあるいはiPhone向け日本語版アプリを募集している。後援は国内最大級のAndroidアプリレビューサイトである「アンドロイダー」を運営する株式会社トリワークス。

このセミナーは⁠ラウンドテーブル⁠と題している通り、スクール形式の座席ではなく6人掛けのテーブルに参加者が向かいあって着席する形であった。担当者によると「開発者同士の交流も深めていただき、かつ気軽に質問やご意見もいただけるような雰囲気になるように」このような形式にしたという。

会場の模様
会場の模様

日本の法人・個人事業者の9割が弥生のターゲット、そこにリーチする

発表早々に30名を超える参加希望者の申し込みがあり、翌日には第1回の受付が終了になったというから、開発者の関心の高さがわかる。今年はアプリコンテストの当たり年と言ってもいいくらい、さまざまなメーカや媒体社によるコンテストが開催されている。100万円という賞金額も特別高い金額とはいえなくなっている。

それでも、⁠業務アプリ』というビジネスに結びつきやすい分野に特化しているところと、リリース後のプロモーションサポートが魅力ですね。スマートフォンアプリはとにかく数が多く、せっかくリリースしたとしてもそのまま埋もれてしまう可能性も高い。コンテストで受賞することができれば、弥生ユーザーにアピールできる上、レビューサイトへの掲載の確率が上がるというのは、普通にリリースするよりもはるかにメリットが大きいと思います」と、この弥生のコンテストが開発者を熱くさせる理由を開発者のひとりが語ってくれた。

今回のラウンドテーブルには、3名のプレゼンターが登壇した。まず最初は弥生の岡本浩一郎社長が登壇。参加者への挨拶、弥生の紹介に続き、⁠弥生は累積の登録ユーザ数が90万を超えている。すでに多くのお客様の支持をいただいているが、まだまだ成長の余地もあり、非常に大きなマーケットだ」と、本コンテストに賭ける意気込みと熱意を語った。また、日本国内には420万を超える法人・個人事業者がおり、弥生のターゲットユーザである従業員20名以下の小規模企業、個人事業者はそのうち9割近くを占めている。スマートフォンアプリの開発者にとっても、中小企業が気軽に導入できるアプリをうまくヒットさせることができれば、かなり多くの売上本数を見込むことだって夢ではないとした。

また岡本社長は、PC用業務ソフトベンダである弥生がなぜスマートフォンアプリコンテストを開催したのかという点について、⁠弥生はこれまでPCソフトの専業メーカとしてやってきたが、昨今のスマートフォンブームやユーザーの利便性という視点で考えると、スマートフォンへの対応は無視できない課題となっている。その中で今回アプリコンテストを開催させていただくことになったのは、多くの開発者の方に関わっていただくオープンな戦略を選択したから」と述べた。⁠弥生のビジネスに多くのパートナーに参加していただくことで、双方のビジネスが発展していくことを狙っている。今回の賞金もアプリの著作権を買い取るためのお金ではなく、あくまでも⁠ビジネス支援金⁠⁠。この賞金をより一層のビジネス拡大の一助にしていただきたい」とプレゼンを締めくくった。

ユーザに「便利」と思ってもらえる業務アプリの要素とは?

続いて登壇したのは、本コンテストの企画を担当した弥生のマーケティング部担当マネージャである関根理絵氏。関根氏は、業務アプリや弥生シリーズ連携に関する説明を行った。PCではおなじみの業務アプリも、スマートフォンアプリではあまりなじみのない分野。本コンテストを攻略するには、開発するアプリにどのような要素が必要なのか。⁠業務担当者というのは毎月、毎年の決まった時期に集中する作業に悩まされている。確定申告をしないといけない個人事業者も、多くの方は申告時期の直前にまとめて作業をすることが多い。便利と思ってもらえる業務アプリの要素としては、⁠ニッチタイムの有効活用』⁠ルーチンワークの効率化』という機能が必要」と関根氏は説明する。

たとえば、電車に乗っている間に交通費をスマートフォンに記録し、そのデータを弥生会計で取り込むことができれば、経費の付け忘れを防ぐとともにPCでの取引入力の手間も省くことができる。業務に使用する消耗品などを購入した際には、レシートの文字をスマートフォンで撮影してテキスト化し、購入日や金額、購入品の名称などから仕訳データを作成することができれば、ひとつひとつ手入力するよりはるかに効率的だ。スマートフォン業務アプリへの期待は膨らむ。

しかし、今回のアプリコンテストには少し残念な点もある。それは、弥生シリーズのAPIが提供されないことだ。今回の連携の対象となるのは、各製品で対応しているインポート・エクスポートの機能を利用したテキスト連携のみとなる。これに対して岡本社長は、⁠今回のコンテストは、そういう意味では見切り発車的な点は否めない。しかし、わたしたちはすべての機能を作り上げてからコンテストを実施するよりも、今できることから始める道を選んだ。開発者の方々のご意見もいただきながら、連携の仕様についても今後検討したい」とコメントしている。

関根氏はさらに、使いやすい業務アプリのポイントとして「オンラインで自動的にデータのやり取りができない以上、どちらのデータが最新なのか、常に把握しやすい状態でないとデータの先祖がえりなどが起きる危険性がある。スマートフォンは特定のデータ入力をするための端末とし、全体のデータはPCに入っている弥生シリーズで管理する『一方通行のデータ連携』の方がユーザにとっても使いやすいのでは」と言う。例として、スマートフォンでタイムカードアプリを使って勤怠情報を入力し、一か月分の勤怠データを書き出して弥生給与に取り込むことができれば、時給で勤務している従業員の給与計算作業を効率化できる、といった仕組みが紹介された。

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このコンテストは、製作したアプリの露出をアップできる絶好の機会

最後のプレゼンターとして登壇したのは、今回のコンテストの後援をしているアンドロイダーのエヴァンジェリストである佐藤進氏。佐藤氏はコンテストの審査委員のひとりでもある。スマートフォン業界に詳しい佐藤氏からはどんなヒントがもらえるのかと、参加者も熱心に話に耳を傾けていた。

佐藤氏は「Androidは、すでにOS別シェアで国内第一位。無料アプリの本数でもiPhoneアプリの数を抜いている。課金環境が整備にされつつあり、国内アプリベンダも積極的に参入を開始したところだ」とAndroid業界がまさに急成長していると説明する。その分、多くの開発者や業者が参入し、せっかく作ったアプリがなかなか日の目を見ないという現状もある。⁠Androidアプリは数が多くてなかなかアプリの存在をアピールしづらいのが現実。そういう意味でも、このコンテストでは従来のスマートフォンアプリのやり方とは違った方向で、製作したアプリの露出をアップできる絶好の機会なので、利用しない手はない」と強調した。

もうひとつ、特にAndroidアプリについてはマネタイズの課題を指摘する。⁠Androidアプリは無料アプリが主流であり、世界のAndroid Marketでダウンロードされた有料アプリのうち、80%はダウンロード数が100未満だった」と佐藤氏は厳しい現状を解説する。だが、⁠業務アプリ』というのは、まだ市場も確立されていないが、ビジネスニーズの高いものなので有料アプリでも十分ヒットする可能性はあると思う」と業務アプリコンテストへの期待を語った。

こうして3名によるプレゼンが終了し、最後に質疑応答の時間に移ると、開発者からの積極的な質問が相次いだ。どの参加者からもコンテスト応募を前提とした具体的な質問が寄せられる。最後まで熱気を保ったまま、ラウンドテーブルは終了した。なお、第2回のラウンドテーブルが9月28日に予定されているが、すでに満席とのことだ。ラウンドテーブルの追加や地方開催の要望も届いているため、第2回ではUstreamでの動画配信を検討しているという。最新情報はコンテスト公式のFacebook、Twitterで案内されるので、興味のある方はぜひチェックして欲しい。

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オランダの調査会社Distimo社による「Android Market」の調査結果より。調査期間は2011年4月1日~5月19日。
「弥生スマートフォンアプリコンテスト」公式ページ
URL:http://www.yayoi-kk.co.jp/appcontest/index.html
「弥生スマートフォンアプリコンテスト」公式Facebookページ
URL:http://www.facebook.com/yayoiappcontest
「弥生スマートフォンアプリコンテスト」公式Twitterアカウント
URL:http://twitter.com/yayoiappcontest

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