2月17日、日本クエスト・ソフトウェア(株)はホテル日航東京(東京都港区)において、新製品発表セミナー「Discover the Power of Quest 2012」を開催した。
セミナーの最初に登壇したのは米国Quest Software社(以下、Quest)でワールドワイドセールスを担当しているMatt Vitale氏。Quest全体の2011年度の実績と今後の事業戦略や展開について語った。
同社はこの10年間安定して売上を伸ばしているが、Matt氏の発表によると、2011年度の実績も通年の売上額は前年度比で11.8%増の8億5740万ドルになったとのこと。分野別の売上高の伸びは、ライセンス販売が昨年よりも5%増、サポートサービスが15%増、プロフェッショナルサービスが24%増といずれも好調であったという。
これだけ好調を維持し続けてこられた理由はいったい何なのか。続いて同社の事業戦略について語った。同社はこれまでプラットフォームに特化したソリューションを展開することで、売上やユーザ数を増加してきた。具体的には、最初はOracleに注目し、その周辺でサービスを展開。その数年後には、企業買収によりMicrosoft周辺のビジネスを手がけ、最近ではVMware周辺まで拡大するといった具合だ。MicrosoftのグローバルISVパートナー・オブ・ザ・イヤーを2度受賞しているほか、仮想化管理ベンダとしてもVMware社とMicrosoft社に次いで第3位との評価を得ている(2011年IDC社分析)。
このように、これまではプラットフォーム特化型の戦略が功を奏し、同社は売上8億ドルの企業になったわけだが、今後はどう進んでいくつもりなのか。Matt氏は「より横展開できるシステム管理ソリューションベンダになるため、今まで参入していなかった分野に参入していく」という。具体的にはデータ保護、エンタープライズセキュリティ、アイデンティティ管理などの分野だ。
物理、仮想化、オンプレミス、クラウドなどITのインフラは年々複雑化しており、ユーザがそれらについていくのは難しくなっている。それらをより効果的に管理するために、より多くのソリューションを、使いやすく簡単な製品という形で提供していくという。
そういったニーズに迅速に応えるために同社がとった戦略が企業買収だ。買収で同社のポートフォリオを拡大することでユーザに新たな価値を提供していくとの考えだ。昨年のBakBone Software社(以下、BakBone)の買収は、その典型的な例と言えよう。
Matt氏に続いて登壇したのは、日本クエスト・ソフトウェア(株)の代表取締役社長の大越大造氏。昨年行われたバックボーン・ソフトウェア(株)とクエスト・ソフトウェア(株)の合併に伴う組織体制や製品販売体制の変更について説明するとともに、日本法人の売上状況を発表した。このまま順調にいけば、2011年度は米国本社と同様に前年度比10~12%の売上増になるという。
その後、大越氏はいくつかの日本における主要製品の紹介も行った。その中での注目は、データ保護製品だろう。「Quest Unified Data Protection(QUDP)」(仮称)と題し、BakBone製品とQuest製品の連携を進めるという。まず第1フェーズとして2012年の9~11月ごろを目途に、各製品のコンソールを統一する。バックアップ/リストア製品「NetVault Backup」、ディスク・バックアップ製品「NetVault SmartDisk」、仮想環境専用バックアップ製品「vRanger」を1つのGUI画面で管理可能にする。
第2フェーズでは、バックアップ先としてクラウド環境を指定できる機能、およびリカバリモジュール「Recovery Manager」との連携機能を提供。
第3フェーズでは、複数拠点のバックアップを1つのバックアップポリシーで管理できる機能の提供を予定している。
大越氏はQUDPにより、1つのコンソール画面から、共通したポリシーで、物理/仮想/アプリケーション/システムの各種バックアップエンジンを使って、同じバックアップデバイスにバックアップし、最終的にはクラウド環境にも自由にバックアップできるしくみをめざしているという。ユーザは合併によるメリットを感じてもらえるはずだと述べた。
セミナーでは、その後、同社のSE3名が、データ保護製品の「NetVault」「SharePlex」、仮想化管理製品の「vRanger」「vFoglight」「VKernel vOPS」、マイグレーション製品の紹介を行った。
データベース管理などを得意とするQuestと、バックアップを得意とするBakBoneが合併したことで、冒頭のMatt氏のスピーチのとおり、ユーザはこれまで以上に幅広いサービスを選択できるようになったのは確かなようだ。今回のセミナーではその可能性をかいま見ることができた。