1月21日、2013年最初となる第35回「HTML5とか勉強会」はKDDI さんに会場をお借りして開催しました。
今回のテーマは「Web+OS最前線!」 。最近NTTドコモからの販売が検討されていると話題にもなった「Tizen」と、KDDIからの販売が検討されているという「Firefox OS」 。どちらも今後の展開に注目です。
本稿では、今回のイベントについてレポートします。
Tizenの概要
はじめにTizen の概要について、バイドゥ株式会社 の今村博宣さん に講演していただきました。
まずTizenの生い立ちについて、世間では正確ではない認識が広まっていると今村さんは言います。MeeGoとLiMoが今のTizenの前身だと言われることが多いですが、実際にはMeeGoからの流れにあるTizenと、SLP(Samsung Linux Platform)の流れにあるTIzenがあり、この2つは明確に区別するべき製品であると指摘しました。
前者は「Tizen IVI」という主に車載向けとしての開発が進められているもので、後者が「Tizen Mobile」と呼ばれています。現状一般的にTizenと言われて指すのは「Tizen Mobile」だろうとのことです。
Tizenを推進する企業は数多くありますが、その中でもTizen MobileとTizen IVIのどちらを推進するかがそれぞれ異なると言います。Tizen Mobileを推進する企業には通信キャリアや端末メーカが見受けられますが、Tizen IVIを推進する企業に車メーカが複数見受けられるように、2つのTizenが別のものであることがわかると紹介しました。
詳しくは今村さんのブログ にて、今回の講演の補足を説明していますのであわせてご覧ください。
講演の終わりにはまとめとして、日本でのTizen Mobileの普及はなかなか難しいのではないか、あったとしてもBlackBerryと同じような扱いになるのではないかと述べていました。ですが、Tizen IVIは名古屋地区の動きを見ると普及する可能性があるかもしれないとのことです。
また、Tizenの情報が欲しい方は「Tizen Japan コンソーシアム 」や「Tizen Japan チャンネル 」を見てほしいと紹介しました。
講演の詳しい内容は講演動画 と講演資料 をご覧ください。
Tizen APIの概要
つぎに、ターボシステムズ株式会社 の高橋成人さん にTizen API の概要について講演いただきました。
今回の講演ではTizen 2.0 Alpha版のAPIについて紹介しました。リリース日が2012年の9月と若干古いですが、パブリックなリリースとして最新であると述べていました。
Tizenのアプリには次のような3種類があり、それぞれ違った言語で開発ができるとのことです。
TIzen Web App
HTML5、Javascript、CSS3
Tizen Native App
C/C++
Tizen Hybrid App
HTML5、Javascript、CSS3、C/C++
ですが現状では、ネイティブアプリのドキュメントがないことと、パプリックに公開されているSDKではWebアプリしか組めないと言及しました。
Tizenのアプリの開発環境としてはEclipseベースのTizen SDK が用意されています。現在はWindowsとLinuxで動かすことができます。
また、エミュレータとシミュレータも用意されていて、エミュレータはTizen DeviceとTizenプラットフォームをほぼ完璧にエミュレートすることができるそうなのですが、とても重いところが難点だと言います。シミュレータはChrome上で動作し、動作も軽く様々な挙動のテストができてとても良いと話していました。
詳しくは講演動画 と講演資料 をご覧ください。
Firefox OS(仮)
さいごに、Mozilla の浅井智也さん にFirefox OS について講演いただきました。
まず最初に、なぜMozillaがFirefox OSを出すのかについて"HTML5の目的"という観点を交えて話しました。
HTML5の目的としてアプリのためのHTMLという点があります。ブラウザの挙動を厳密に定義し、互換性を持った実装にすることでマルチデバイスでどこでも同じ"One Web"を実現しようとしています。しかし一方、モバイルの世界では独占プラットフォームによってアプリが支配されているという現状があり、Webが進化する余地があるにも関わらずWebVIewの中に閉じ込めてしまっていると言います。これら独占プラットフォームの問題点として、それぞれ異なる言語やAPIを使わなければならないという点と、ベンダーと運命共同体であるという点、そして囲われた世界でのビジネス的な制約も多くあると挙げていました。
こうした既存の独占的なプラットフォームにおいて、独自のマーケットでアプリをリリースすることや、開発者が直接ユーザへリーチするといったようなことは難しいです。Firefox OSでは規格にそっていれば独自のマーケットをいくつでも作ることができ、そこでアプリのリリースや課金システムの組み換え等を行うことができると言います。こうした透明性や自由度を高めることでオープンなプラットフォームを作るのがFirefox OSの目標だと述べていました。
Mozillaが目指しているのはWebをOSにすることだと言います。マルチメディアの処理や通信制御など、HTML5に関連する技術はフォローしきれないほど多くなりました。しかしWeb開発者がこれらすべてを把握する必要があるというわけではなく、Webで作れるものが多くなり、今までWebでできなかったことできるようになっていることを表しています。
Firefox OSの実装に際して、数多くのWeb APIの実装が進んだと紹介しました。これらはFirefox OSだけで使えるのではなく、ブラウザであれば使えるようにと、実装と並行してW3Cなどで標準化を進めているとのことです。
Firefox OSが他のプラットフォームと大きく異るのは、Web技術が「ネイティブ」となることです。アプリはHTMLやJavaScript、Web APIを用いて作られます。他のプラットフォームでWebアプリを動かす場合、デバイスのカーネルの上にAPIやUIの構築をしていて、さらにその上でWebブラウザを動かし実行しているため、その分がJavaScriptなどの実行速度に影響を与えています。Firefox OSの場合カーネル上にWebエンジンが直接乗っており、中間レイヤでのオーバーヘッドがなくなることでより高速に実行することができるとのことです。
実行速度の他にもFirefox OSには多くの魅力があると言います。
ネイティブに負けない充実したAPIや処理速度により、スリムなHTML5の実行環境をつくります。このスリムな実行環境は端末の価格を抑えることを可能にし、100ドル程度の価格帯の端末でも十分に動作させることができるとのことです。また開発者数が多いという点も多くの魅力で、Webアプリの開発者数は800万人と言われています。これはiOSの10万人、Androidの45万人という人数と比べるとわかると述べていました。
Firefox OSに興味がある方はシミュレータ で簡単に試すことができます。Firefoxのアドオンとして提供しているので試してみてくださいと紹介しました。
Firefox OSの情報は浅井さんのGithubアカウント にてまとめられていますので是非ご覧ください。
講演の詳しい内容は講演動画 と講演資料 をご覧ください。
その他にも…
今回の勉強会では講演の合間にスペシャルゲストとしてなんと、KDDI代表取締役社長の田中孝司氏からスピーチがありました。Web技術に興味津々な田中氏からは「今後こういった活動に対して支援をしていきたい」と心強い言葉をいただきました。会場提供ならびに懇親会の準備など、誠にありがとうございました。
最後に
レポートに対する感想や、勉強会に対する希望・意見・取り上げて欲しいテーマなどがありましたら、twitter(@nakajmg) まで気軽につぶやいていただければと思います。
本勉強会は、毎月第3水曜日、または第3木曜日に開催していますので、興味を持たれた方はぜひ参加ください。ただし、会場や講演者スケジュールの都合などにより、開催日程が前後することがあります。
開催のアナウンスはhtml5j.orgのML で行われますので、こちらをご確認ください。また、コミュニティサイトhtml5j.org も公開していますので、ぜひこちらもご覧ください。