ベールを脱いだハイパーテキストタブレット端末「enchantMOON」――予約開始イベントenchantMOON Night』レポート

株式会社ユビキタスエンターテインメント(以下、UEI)が、手書きメモに特化した独自OS搭載コンピュータ「enchantMOON(エンチャントムーン⁠⁠」の発売と販売価格の決定を発表した4月23日の19時より、一般の方を招待してのタッチ&トライイベント「enchantMOON Night」を、五反田にあるゲンロンカフェにて開催した。

enchantMOON

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3台の試作機を代わる代わるに試す来場者
3台の試作機を代わる代わるに試す来場者

会場となった五反田のゲンロンカフェには開始30分前には行列ができはじめ、開始となった19時には会場は満員に。その後も会場には続々と来場者が詰めかけたようで、急遽、イベントを2回に分けて行うほどの盛況ぶりだった(来場者数は250名との公式発表⁠⁠。

なお、4月23日正午から開始していた販売予約については、公式サイトの予約システムがダウンする不測の事態があったにもかかわらず、翌24日午前中には初回生産ロットが完売したとのこと。

このように反響が予想外に大きかったため、すぐに第2ロット生産、6月中旬から7月中旬の発送(シリアルナンバーの刻印あり)で進めていくことがすぐに発表された。併せて、販売パートナーの拡充、実店舗でのタッチ&トライの機会を発売に向けて増やしてとの発表もされている。

現状のタブレットの不満を解消する

詰めかけた聴衆はUEIの清水亮CEOの熱弁に耳を傾けていた。なかでも聴衆の共感を得ていたように思えたのは、⁠ここに来ている皆さんはiPadもしくはAndroidタブレットを使ったりしていて、何らかの不満があるんじゃないでしょうか」と問いかけたときだ。指では思ったように書けない。描いている線の追従性が悪い。enchantMOONはこの不満を解消することに注力されている。その最たる行為がOSレベルでのチューンナップだ。AndroidのアーキテクチャをベースにしながらenchantMOON専用のOS「MOONPhase」を開発。最短反応遅延は0.05秒を実現している。

ユビキタスエンターテインメント代表取締役社長兼CEO 清水亮氏
ユビキタスエンターテインメント代表取締役社長兼CEO 清水亮氏

紙とペン――思考するための道具

なぜそこまで手書きにこだわるのか。

ITの最先端にいる人たちでも、(あるいはホワイトボードなど)とペンが手放せない状況を紹介。かたわらに高性能なPCがあるプログラマでさえ、紙とペンがあれば自然にそこで筆算してしまう。冗談めかして紹介されるが、そこには思考の過程ではPCよりも高速に処理できる手書きの良さが詰まっている。考えを手で描き、目で確認してまた考える。このプロセスが大切だということで、清水氏はこれを「思考の動脈と静脈」と表現する。

プログラマのノートに書かれた筆算を見せる清水氏
プログラマのノートに書かれた筆算を見せる清水氏
思考の動脈と静脈
思考の動脈と静脈

さらに、iPhone発表の壇上でスティーブ・ジョブズが「指」「だれもが生まれながらに持つ世界最高のデバイス」と言ったことについて、Appleフリークでもある清水氏に「あれは間違い」と言わしめるほどにペンの重要性を説いた(きっとジョブズのことだから、将来「あれは間違いだった」と撤回するのを想定したうえでの発言だったんじゃないか、と補足していたが⁠⁠。

一方、紙となるディスプレイについては、表示解像度こそXGAとiPad miniと同等だが、ペン入力の分解能は815ppiという精細さを持つ。つまり、ディスプレイの5倍以上の解像度を持つデジタイザ(読み取り解像度5120×3840ドット相当)が搭載されているということで、非常に細かい文字も認識できる能力を持っている。

だれもがプログラマになれる

enchantMOONのユーザレベルを年齢で想定すると、3歳くらいでハイパーテキストの扱いができるようになり、6歳くらいでMOONBlock(後述)によるプログラミング、12歳にもなればJavaScriptを使い、16歳以上ならモジュールのコーディングまでできるようになるだろうとしている。ここで見られるように、enchantMOONはプログラミング教育での役割にもフォーカスしている。

enchantMOONのユーザレベルを年齢で想定した図
enchantMOONのユーザレベルを年齢で想定した図

enchantMOONに備わるビジュアルプログラミング機能の言語は「MOONBlock」と呼ばれる。だれでも簡単に、いつでも思いついたときにプログラミングできるようにと考えられたものだ。このMOONBlockの存在が他のタブレットデバイスと一線を画す、⁠思考と創造のためのデバイス⁠と感じさせる要因の1つだろう。

この機能の搭載は将来の展望にもつながる。出てきたキーワードは増井俊之氏の「全世界プログラミング」だ。ブロック型プログラミング言語によって老若男女問わず誰もが身の回りのものをプログラミングできるようにすることで、enchantMOONがホームネットワーク、スマートフォン、カーナビ、デジタルカメラなどといった機器とやり取りするハブになるという構想。この実現に向けて、まずは「MOONBlock」をオープンソースとして提供することが予定されている。

さまざまな機器のハブとなるイメージ
さまざまな機器のハブとなるイメージ
MOONBlockによる全世界プログラミング
MOONBlockによる全世界プログラミング
MOONBlockのオープンソース化
MOONBlockのオープンソース化

「ユーザが使いながら自分の好みに育てていく、進化する⁠新しい紙⁠⁠」を具現化するenchantMOON。iPhoneが電話を再発明したように、⁠UEI re-innovated a "paper"」となるか楽しみである。

enchantMOONハードウェア概要
CPUAllWinner A10 1.2GHz
OSMOONPhase
ディスプレイ8インチXGA(1024×768)フルカラーディスプレイ
入力方式静電容量タッチパネル+アクティブ式デジタイザーペン
ヒープメモリ1.0GB DDR3
ストレージ16GB
通信方式Wi-Fi(802.11b/g/n)
カメラフロントカメラ及びセルフカメラ
バッテリー5000mAh/3.7V
付属品ACアダプタ、専用USBケーブル、専用ペンホルダー付きストラップ(初回出荷限定)
価格39,800円(税込)

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