レポート

Infinity Ventures Summit 2013 Springレポートその1:パズドラの次のメガアプリは?IT業界と放送業界のキーマンがIVS初参加

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サイバー藤田社長「まだ社長を辞めるのは無理」

初日3つ目のセッション『起業家』の著者が起業家の本質に迫る」では,サイバーエージェント社長の藤田晋氏がモデレーターとなり,ウィルゲート代表取締役の小島梨揮氏,コーチ・ユナイテッド社長の有安伸宏氏,トライフォートCEOの大竹慎太郎氏,nanapi社長の古川健介氏,HASUNA代表取締役の白木夏子氏の5人の若手起業家に対してディスカッションが行われました。藤田氏が自身の創業時の目線に立って各メンバーへのアドバイスを行なっているのが印象に残る,若手世代とベテラン経営者による経営談義が楽しめるセッションとなりました。

若手起業家に質問をするサイバーエージェント社長の藤田晋氏

若手起業家に質問をするサイバーエージェント社長の藤田晋氏

CROOZのCTO小俣泰明氏とトライフォートを創業した大竹氏は自社サービスではなく受託での事業が中心となっています。これに対し藤田氏は「大きなお世話かもしれないけど,リーマンショックで受託の企業がバタバタと倒れた。発注側の理論でヤマダ電機のような危険な状況がやってくる。いきなり自社タイトルでやっていてもいけるんじゃないか?」と元サイバーエージェントの大竹氏にアドバイス。大竹氏は「⁠⁠自社タイトルで始めるのは)リスクが大きいと考えた。ゲームの会社にしようと考えておらず世界最大の技術会社にしたい」と抱負を語りました。

かつて,したらば掲示板をライブドアに売却したnanapiの古川氏に対して藤田氏が「シリアルアントレプレナーはこつを掴んでいる。もうnanapiは売らないの?」と尋ねると,⁠売却はすごくいいけど,サービスを大きくするために買う側になりたい。また市場に合わせて買いやすいものを創るのは好きじゃないので言葉では表現できないものを創りたい。そういったもののほうが面白いんじゃないか?」と語りました。コストはかかり,手間はかかり,明らかに分が悪いサービスだから他の会社が面倒でやらないのがいいのだそうです。

左側トライフォートCEOの大竹慎太郎氏,右側nanapi社長の古川健介氏

左側トライフォートCEOの大竹慎太郎氏,右側nanapi社長の古川健介氏

最後に大竹氏がかつての職場の社長である藤田氏に「経営者としての引き際についてどう考えているのか?あるならばどういう人物に任せたいか」と切り込むと,⁠正直ずっと辞めよう辞めようと考えながらやってきたけど,何か達成したらまた責任が生まれてくる」と答え,誰がやっても伸びる会社をつくろうと取り組んできたが,Ameba事業では自ら細かいところまで率先して取り組むようになったところ「やればやるほど抜けれない状態になった」と語りました。⁠今,ちょっと(辞めるのは)無理(笑⁠⁠」なのだそうです。

楽天三木谷社長初参加「大企業は人材が死んでいる」フジ亀山常務,横で苦笑

IVS初日最後のセッションは楽天CEO三木谷浩史氏がIVSに初参加・初登壇し,LINE株式会社CEO森川亮氏,GMOインターネットグループCEO熊谷正寿氏,フジテレビ常務の亀山千広氏らが登壇する豪華なセッションとなりました。新興勢力であるIT業界,旧勢力としてのマスメディアという対比で描かれることが多かったネットとテレビですが,TBS買収報道で注目を集めた楽天の三木谷氏と,フジテレビの次期新社長に内定している亀山氏が一緒に語るという業界の転換を感じさせるような場となりました。

フジテレビ常務亀山千広氏

フジテレビ常務亀山千広氏

亀山氏は自己紹介から「登壇者の中でネクタイしめているのは僕だけ(笑⁠⁠」と自虐的に切り出し,⁠テレビ局が方向性に悩んでいるのは皆さんたち(IVS参加のIT関係者)があるから(笑⁠⁠」と率直にテレビ局が抱えている課題を語りました。⁠誰でもニュースを伝えることができるようになったことでマスメディアの意義が問われるようになり,マスコミはちょっと迷いに入っているのではないか」というのが亀山氏が長く現場をやってきて感じている印象だそうです。

LINEの森川氏も以前テレビ業界に勤めていたことがあると語り,辞めるときに役員会が開かれたとのエピソードを披露しました。⁠日本は本当に変わる気があるのだろうか?守ることに力を入れている。ネット業界では壊すこともしていなかくてはいけない。本当に守らなければいけないものは何かを考えるべき」と語りました。

亀山氏も「テレビ局って実はかなり受け身。ハイビジョン,4Kなどの技術革新はメーカから起こっている」とそれを認め,⁠マスメディアはすべて受け身なのでメディアとは何かを考え,何を発信するかを考える人を育てなくてはいけない。与えられたものを間違いなく伝えるのではなく,考える人を」と抱負を述べました。さらに「テレビ局をつくることに意味があるのか,コンテンツを創ることに意味があるのか」と自ら問いかけ,⁠SNSやLINEはすごいメディア。創ったコンテンツで人を集めてそこで何かを売る。それを観ることでみんなが語り合うときにテレビじゃなく,そっちでやるというのはコンテンツを創っている側からみてものすごいチャンスを感じる」と話し,テレビという枠を超えて事業に取り組んでいく意欲を覗かせました。

三木谷氏は「日本は田植え文化。百姓は他の人と同じことをしないといけない。違うことをやったら村八分となりスタンドアウトしてはいけない。アジアでも遅れてきてしまっている。多少失敗しても前に出る。日本はもう一回海洋国家にならないといけない」と語りました。続けて「大企業は人材が死んでいる」と話すと,横でそれを聞いている亀山氏がすごく苦笑しているが目に止まり非常に印象に残りました。

楽天CEO三木谷浩史氏

楽天CEO三木谷浩史氏

余談ですが,楽天の社員数は単体で3,000人,連結で9,000人を超えています。対してフジテレビの社員数は1,400人ほど。今回のIVS参加者の会社でいえばGMOインターネットグループ,サイバーエージェント,グリーがそれぞれ約2,500人,DeNAが2,100人です。数字の上では,楽天はかなりの大企業です。業界として成長し成熟した起業が現れ,新経済連盟を立ち上げるに至る一方で新たな世代によるスタートアップが数多く参加するという場でIT業界のひとつの節目を感じました。

LINE森川氏「10年後は自分はLINEにいないと思う。3年後にインターネットの歴史を変えたい」

最後に10年後どこまで会社を大きくしたいか?と問われると,楽天の三木谷氏は「アメリカ行くとAmazonに対抗するなんてバカなこというのはお前くらいだ,とよく言われる。これからさらに大きくなる電子書籍のマーケットの中で勝負できると思っている。日本人でもグローバルな組織作れると証明したい」と語り,GMOインターネットグループの熊谷氏は「来期は売上が1,000億にいくと思う。10年後には一桁兆が見える規模感に。グループ社員は3,000人から3万人に。利益も100億から1,000億に。それくらいやってなかったら命かけている意味がない」と成長への貪欲さを見せました。

フジテレビの亀山氏は「ファンドの会社も遅ればせながらつくった。フジスタートアップファンドから三木谷さん越せる社長出したい」と話すと,LINE森川氏は「自分は創業者ではないので10年後は(LINEに)いないと思う」と話して会場の笑いをとり,⁠インターネットの歴史を変える会社にしたい。それを3年後に達成したい」と自信を覗かせました。

著者プロフィール

美谷広海(みたにひろうみ)

1975年フランス生まれ。引越し歴14回。ゲーム,モバイル,Webとデジタルコンテンツの企画,プロデュースを行い,Webサービスの海外進出、海外から日本への事業展開に従事中。ブログは『Fool on the Web』。海外に日本のIT情報を紹介するasiajin.comにも参加しています。

メールは hiroumitani@gmail.com