レポート

アートとテクノロジーのカンファレンス FITC Tokyo 2015 詳細レポート(1日目)

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VR 2.0 宣言

Nobumichi Asai(浅井宣通)

"AKIRA"や「マトリックス」の世界はいつまでも映画の中だけのお話なのでしょうか。バーチャルリアリティ(VR)が概念から実在化へと進み行く今を"VR 2.0"と題したP.I.C.S.浅井宣通氏のセッションは,昨年大きな話題となった"OMOTE"の紹介からはじまりました。

"OMOTE"はもともとクライアントの無い作品でしたが,Vimeoへアップロードした翌日から1日100万Viewsペースで一気に世界へと広まり,世界150カ国からのオファー,様々なアワードでの受賞へと至りました。それはSMAPへも届き,フジテレビ「SMAP×SMAP」番組内での"FACE HACKING"というパフォーマンスへつながりました。

これらの2つの作品は「コンテンツの力によって世界に伝わっていった。以前はCMの本数が媒体力だったが,今は違う。面白いモノをつくれば,世界中の人々とつながれるというのは素晴らしい」と浅井氏は述べました。

以前のVRと,現在のVR

続いて,本題の「VR 2.0」へ。VRとは新しいものではなく,1968年にIvan Edward Sutherlandが提唱したもの。当時は現在スマホでできるようなトラッキングも,騒々しい規模の装置が必要だったと言います。

浅井氏は現在バーチャルリアリティと聞いて古臭く感じてしまうのは何故だろうと考えた時,それは当時概念であったバーチャルリアリティが今は実在するものになったからではないかと思う。概念の頃を1.0とするなら,実体へとフェーズが変わった今は2.0と言えるのではないかと言及し,このことを『VR 2.0』と宣言しました。

そして,⁠テクノロジーの進化が早すぎてあっという間に未来が来てしまった。アートにもエンターテイメントにも,それが現れた」とし,事例をいくつか紹介しました。

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VRのためのデバイス

まずは各種VRデバイスとして,Oculus Riftからはじまり,スマホをケースに入れるだけでVRビューワーになるものとして,OculusとSamsungが共同開発したGear VRGoogle Cardboard日本製のハコスコ指先のジェスチャーで操作できるPinch VRを挙げ,またAppleもVRデバイスを作ろうとしていると紹介しました。

さらに,コンテンツ作成のためのカメラとして,3Dで360度撮影できるSamsungのProject Beyond(未発売⁠⁠,Kodakの180度カメラV570RICHOの360度カメラTHETA等を紹介しました。

Tele-presence

テレプレゼンスとは,遠く離れたところにあたかも自分がそこに居るかのような臨場感を再現できる技術を言います。浅井氏は,DroneにステレオカメラをつけてOculusで覗くと自分が空を飛んでいるような体験ができると話します。例として,暴動の中に自分がいるという体験,Droneで花火の中に入って観る体験,ウクライナ紛争の危険な場所にもテレポート可能な体験,ポールマッカートニーのライブを360度カメラですぐ真横から観れるという体験等を動画で紹介しました。

Tele-existence

テレイグジスタンスとは,自分が向こう側に存在できる体験を再現する技術を言います。わかりやすくいうと,映画"AVATAR"で,カプセルに入ると自分の意識が転送されてアバターになる体験です。

事例としては,実在する女性をモデルにつくったロボットが表情を真似て動く「アクトロイド-F⁠⁠,遠隔地で自身の分身として動き回り存在感のある打ち合わせを可能にする"Double",離れた家族も存在するかのようにコミュニケーションできる"JIBO",今年の1月に発表されたMicrosoftのAR Glassである"HoloLens",光ファイバーでできたスコープ"Magic Leap",ジェスチャーコントローラの"Leap Motion",ゲーム制作のプラットフォームで,フォトリアルな映像をリアルタイムレンダリングで見せることができるUnreal Engine 4を紹介しました。

コンテンツ

続けて,OculusがVR映画会社をつくり既にショートムービーを作成したこと,SamsungがVR Gear用のコンテンツのため,いくつかのコンテンツホルダーと契約したことを挙げ,コンテンツ産業がVR化していくということを表していると述べました。Samsungは,スマートフォンでVRをするためのSDKもリリースしています。

More Technology

浅井氏は最新のテクノロジーは人間の存在にも大きな問いを投げかけているとも言います。事故で両腕を無くした人へロボットの手を移植した例を挙げ,指先まで自在に動いていることには感動したのこと。これはBMI(Brain Machine Interface)という,脳派を読み取って外部機器と連携してしまう技術を使っています。また,自己増殖し進化もする人工細胞,DNA 3D プリンタ,頭蓋骨や移植後皮膚として機能する人工皮膚の3Dプリント技術等を紹介しました。

また,兵士の荷物を戦場で代わりに運ぶために作られたBoston DynamicsのGalloping,鳥のように飛びたいといったライト兄弟の夢が実現されたJetmanを示しました。

さらに,AIが将棋の対戦をしたり,就活のアドバイスをしたり,裁判の判例をサジェストしたりする例,世界最速の処理能力であるD-WAVEの量子コンピュータを示し,⁠ディープラーニングで古今東西の歴史や文学,政治経済などのあらゆる人間の知性を学ばせたら,感情や欲望に判断が左右される人間よりも,優秀な知性ができるかもしれない」と語りました。

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テクノロジーによる現実表現

振り返ってみて,⁠今までみてきたテクノロジーの根っこにあるのはどういうことなんだろう,僕自身が仕事するときの発想の源みたいなものってなんなんだろう」と考えた時,その一つに「デジタル唯物論」があると言います。それは,分かりやすく言うとLEGOでできたマリオを崩すと全く別なものを作ることができるように,「すべてが0と1でできていると考えると,プログラミングするということは0と1を操作して現実を作り変えるとも言える。テクノロジーには無限の可能性があるということができる」と述べました。

最後に,浅井氏は「テクノロジーを表現に使うことは最高に面白い。楽しんでチャレンジしていきたいと思っている」とし,今年の夏に向けて,ドームシアターで没入型のVR空間を生み出す3D VR DOME THEATER PROJECTに取り組んでいることを告げました。

著者プロフィール

関谷繭子(せきやまゆこ)

株式会社 えにしテック

昼は受託系Web開発の会社でデザインのお仕事。夜はおうちでoFやLiveで遊んでいる。

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