レポート

アートとテクノロジーのカンファレンス FITC Tokyo 2015 詳細レポート(1日目)

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時空を超えた旅へのいざない

Bradley (GMUNK) Munkowitz

2011年に登壇したときはTRON Legacyの制作について話したGMUNKことBradley Munkowitz氏。今年はデザインキャリアと最近の作品を紹介しつつ,⁠多様性と進化」について語りました。

GMUNK氏のキャリアは大学でインタラクティブなFlashアニメーションをつくるようになったところからはじまりました。学生時代のアニメーションが目に止まり,ロンドンのVir2L Studioへ入社。ファッションの勉強もするようになりました。そしてWebサイトやFlash,Webエクスペリエンスまでも手掛けるようになり,その後ロサンゼルスに渡ってKyle Cooper氏の会社に入社。モーショングラフィック,様々なデザインのスタイルを学びました。WebやFlashの技術を活かしハイテクなインフォグラフィックスを手掛けるようになり,今度はそれらがJoseph Kosinski氏の目に止まり,彼のTRONの映画"TRON Legacy"でホログラムをやらないかと声がかかったのだそうです(参考: Interview: GMUNK (TRON: Legacy)⁠。

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友人と遊びでつくったものから

友人とキラキラしたものをつくったという,作品の紹介からはじまります。

この作品からオファーにつながり,Adobe Logo Remixというプロジェクトがはじまりました。レーザーや鏡の屈折,反射,アクリルなど,新たなマテリアルを扱うことになりました。

インスピレーションのポイントは「光と各マテリアルの交差点で何がうまれるのか」だったと,GMUNK氏は振り返ります。

「レーザーとガラスが複数の屈折を経て見せるもの,鏡とワット数の高いスポットライトや色の忠実性が高いLEDがどうやりとりするのか,アクリルの裏柄にLEDを置いてどのように光るのか,また,アクリルを通してオパールがどのようなグラフィックのパターンを描くのか等を見るのも面白かった。中でもKinectと赤外線カメラを使ったところが一番面白かった。モレイパターンやレンズのグレアなどを生み出すことができるよう,KinectとUVライトを組み合わせて使った」⁠GMUNK氏)

キラキラしたものはさらに進化しました。⁠これを人に適応したらどうだろう」と思い,Tychoのミュージックビデオができあがりました。

自分を広げてくれる人との仕事

そしてサンフランシスコへ引っ越し,映画ゼログラビティ等,フィーチャーフィルムのロボット関係を担っている天才たちBot & Dollyと仕事をしました。その時の作品として,プロジェクションマッピングによるプロモーションビデオを挙げました。

Bot & Dollyはロボットを駆使しながら座標システムを使って位置を正確に把握することができたので,通常であれば難しい,移動するオブジェクトを追うプロジェクションマッピングをおこなうことが可能でした。このプロジェクトのコンセプトは「5つのマジックの概念を実現したもの」で,1. Transformation(変身)2. Levitation(空中浮揚⁠⁠,3. Intersection(交差⁠⁠,4. Teleportation(瞬間移動⁠⁠,5. Escape(脱出)から成ります。

それぞれのセクションごとにインスピレーションボードを作成し,デザインに関しても詳しく調査を行いました。

「ボックスの中身のコンテンツ部分にシェードをかけることででこぼこ感を出したり,コンテンツそのものを光源としてひっくり返すことも可能だったところが興味深かった。Cinema 4DやMayaを使ってこの変身を実現させた。3台目のロボットにカメラがついて,モーションキャプチャで取得したデータをロボットからカメラへ投げるということをしている」⁠GMUNK氏)

次の動画は,制作過程を撮ったものです。

次のThe Creators Projectで取り上げられた動画はセッションでは触れられていませんが,日本語字幕もあってわかりやすいため,あわせて掲載しておきます。

そして,アーティストとして積極的に活動することの重要性を指摘しました。

作業をするにあたって,誰かに雇ってもらうのを待っていてはいけない。誰かが雇ってくれないかな,こんな仕事やりたいな,とただ座っているだけではなく,アーティストだったらどんどん積極的に自分から仕事をしなさい。友人とばかみたいなものを作っていてもいい。アートをしよう!⁠GMUNK氏)

他にもGMUNK氏は,サイケデリックアートもし,Mayaで幾何学のテクスチャをマッピングしたりしています(このためのアプリの作成にはプログラマーに協力してもらってたとのこと⁠⁠。最近は60~70年代に流行ったキネティックアートにもはまっていて,マテリアルと光,ガラスを使った屈折などをArnoldで再現し,グラフィックデザインをしているそうです。

光やマテリアルの関係とは違って,今度は"Chamber"という映画での人を中心としたストーリーを描いたところについて紹介しました。動画を示せず説明しにくいのですが,⁠テクノロジーにより複数のアイデンティティを所有することで,色々な人とつながることができる」というテーマの映画です。このテーマを光や鏡を使ってペルソナを表現したことについて説明し,違う方向性への応用を示しました。

自分自身を進化させるために

最後にオリジナルのものなんてない,自分のインスピレーションに響くものがあるなら盗んでしまえ,身の周りから得たインスピレーションは自分の言葉に置き換えてしまえばいいのだという文を引用しました。GMUNK氏はプロジェクトをやったり原稿を描いたりするときの参考になるように,何千というイメージを彼のPinterestへ入れています。そしてそれらを見ていると自然と手が動くのだとやり方を説きました(2011年に登壇した際,制作に入る前にたくさんの資料を集め,徹底的に調査すると言っていたことを思い出しました⁠⁠。

Pinterestを見る以外にも,GMUNK氏のやり方があります。彼は手がけた作品を自分のWebサイトへ載せており,自分の作品を見返して評価することはさらに自分を進化させ,いろんなことをやってみようという気持ちにさせる。同じことを2度やるのではなくて,自分のレパートリーを増やしていくこと,自分の限界を超えさせるような人たちと手を組ませるということが進化につながっていくと言います。

GMUNK氏はさらに引用します。好きなことをしなさい。日中の仕事が気に入っていないなら夜とか週末に時間を見つけて好きなことをしなさい。自分が好きなことをやっていれば,1日たりとて仕事が嫌だなんていうことはないと,私たちへメッセージを伝え,⁠いつも最初と最後に表示していると言う)Burning Manの画像で終わりました。

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著者プロフィール

関谷繭子(せきやまゆこ)

株式会社 えにしテック

昼は受託系Web開発の会社でデザインのお仕事。夜はおうちでoFやLiveで遊んでいる。

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