IoTカメラの進化は新たなフェーズへ! ソラコム、ATOM Cam2をベースにしたクラウドカメラサービス「ソラカメ」ローンチ

ソラコムは5月18日、クラウドカメラサービス「ソラカメ」のローンチを発表しました。ネットワークに接続されたカメラの映像をクラウドに常時録画する月額費用ライセンスのサービスで、スタートアップ企業のアトムテックが開発したネットワークカメラ「ATOM Cam 2」がソラカメに対応します。発表会見に登壇したソラコム 代表取締役社長 玉川憲氏は「ソラコムはこれまでIoTクラウド、IoTデバイスの民主化に取り組んできたが、同じようにIoTカメラの民主化も進めていきたい」と語っており、クラウドカメラサービスという新たな市場の拡大に向けて一歩を踏み出しました。

会見に登壇したソラコム 代表取締役社長 玉川憲氏
会見に登壇したソラコム 代表取締役社長 玉川憲氏

可能性は“想像力とパッション次第”

ソラカメは本体価格2,980円/台のネットワークカメラと、クラウドへの映像保存期間(7日間/14日間/30日間)に応じた月額ライセンスで構成されるサービスです。ソラカメ対応カメラのATOM Cam 2は1辺約5cm、電源とWi-Fiがあればどこにでも設置できる小型のカメラで、フルHDの高解像度、夜間でも撮影できるカラーナイトビジョン、暗闇でも白黒撮影を可能にする4個の赤外線LED、さらにIP67準拠の防水/防塵機能を備えています。

ソラコムの新サービスはカメラ+月額ライセンスのクラウドカメラサービス。本体価格2980円から、月額980円からと利用しやすい価格でローンチするスタイルもソラコムの特徴
ソラコムの新サービスはカメラ+月額ライセンスのクラウドカメラサービス。本体価格2980円から、月額980円からと利用しやすい価格でローンチするスタイルもソラコムの特徴
ソラカメのベースとなるのはアトムテックのATOM Cam 2。1辺5cmと小型ながら、フルHDの画像や夜間撮影のカラーナイトビジョンなど、精細な映像の撮影が可能
ソラカメのベースとなるのはアトムテックのATOM Cam 2。1辺5cmと小型ながら、フルHDの画像や夜間撮影のカラーナイトビジョンなど、精細な映像の撮影が可能
ATOM Cam 2は電源とWi-Fiさえあればどこにでも設置可能。内蔵磁石や両面テープを使えば壁面にも設置できる。マルチアングル構造なので画角の調整も自由に行える
ATOM Cam 2は電源とWi-Fiさえあればどこにでも設置可能。内蔵磁石や両面テープを使えば壁面にも設置できる。マルチアングル構造なので画角の調整も自由に行える
カラーナイトビジョンや赤外線LEDにより、夜間や暗闇でもきれいな映像を撮影できる
カラーナイトビジョンや赤外線LEDにより、夜間や暗闇でもきれいな映像を撮影できる

ユーザはAndroid/iOSのソラカメアプリをインストールし、ナビゲーションに従ってカメラを初期登録すると、その後はアプリから登録した複数台のカメラをリモートで管理/設定できます。単一の管理画面から複数台のカメラを遠隔管理できるのはソラカメの大きな特長のひとつで、フルスクリーンのリアルタイム映像でも最大4台分の映像を同時に確認できます。また、カメラにはスピーカーとマイクが付いているので、リモートで映像を見ている人と、カメラ設置現場にいる人が会話することも可能です。

セットアップもスマホやタブレットから約5分で完了
セットアップもスマホやタブレットから約5分で完了

カメラで撮影された映像は24時間録画され、常時クラウド(AWS東京リージョン)に保存されるので、リアルタイムだけでなく、時間をさかのぼっての確認が可能です。また、カメラが動きや音の変化を検知したら通知したり、変化を検知したシーンだけを録画/一覧表示するモーション検知機能も備えており、インシデント発生時の様子を効率よく確認できます。

フルスクリーン表示で最大4台までの同時接続が可能
フルスクリーン表示で最大4台までの同時接続が可能
撮影された映像は常時録画され、AWSクラウド東京リージョンで保存される。保存期間はライセンスに応じて7日間/14日間/30日感から選べる
撮影された映像は常時録画され、AWSクラウド東京リージョンで保存される。保存期間はライセンスに応じて7日間/14日間/30日感から選べる
動きや音の変化を検知してイベントとして保存するモーション検知録画も可能。インシデントをすばやく特定できる
動きや音の変化を検知してイベントとして保存するモーション検知録画も可能。インシデントをすばやく特定できる
ソラコムの出荷倉庫をソラカメでリモート管理しているところ。モーション検知により、棚に置かれたダンボールの数に増減があると通知がいく設定となっている
ソラコムの出荷倉庫をソラカメでリモート管理しているところ。モーション検知により、棚に置かれたダンボールの数に増減があると通知がいく設定となっている

ユースケースとしては

  • 店舗内の混雑度のチェック、棚に陳列された商品のモニタリング(ソラコムの出荷倉庫でも稼働中)
  • 複数台のカメラによる工場の設備監視(メーター目視チェックの代替、ライン稼働状況のモニタリングなど)
  • オフィスの無人受付での来訪者管理
  • 倉庫などバックヤードの入退室管理

などが挙げられます。玉川氏は「ユーザーの想像力とパッションしだいで、ソラカメのさまざまな使い方が拡がっていくと思っている」と語っていますが、本体価格(初期費用)2980円で、月額利用料金が980円からのサービスであれば、どんなシチュエーションでも、また個人から大企業までどんなユーザでも気軽に試しやすく、仮に適合しない場合でも「失敗を早く見極められる⁠フェイルファスト(fail-fast⁠⁠玉川氏)が可能になります。すでにソラカメのプライベートベータ(試用版)を利用したユーザからはさまざまなユニークな使い方が報告されており、また、新たなフィードバックも寄せられているとのことで、まさにユーザ自身がクラウドカメラサービスの多様化を実現しつつあるといえます。

プライベートベータでソラカメを試用したユーザの声。AGC、寺田倉庫、長崎空港ビルディングなどからも高い評価を得ている
プライベートベータでソラカメを試用したユーザの声。AGC、寺田倉庫、長崎空港ビルディングなどからも高い評価を得ている

なお、ソラカメの料金体系は前述したように、初期費用としてカメラ本体2,980円、月額費用としてクラウド常時録画ライセンス(映像の保存期間)を7日間/990円、14日間/1,650円、30日間/2,160円から選択します(初月無料⁠⁠。クラウドサービスらしく、解約もいつでも可能となっているのも特徴のひとつです(初月に解約した場合は1ヵ月分の月額費用が発生⁠⁠。購入はソラコムのIoTストアから注文できます。

ソラカメの料金体系。カメラ本体に、自動更新の月額費用ライセンスが付属する。初月の月額費用は無料
ソラカメの料金体系。カメラ本体に、自動更新の月額費用ライセンスが付属する。初月の月額費用は無料

「作った人に会ってみたい」から始まったコラボレーション

ソラコムのカメラ事業のローンチはソラカメが初めてではなく、2019年からエッジAIカメラ「S+ Camera」を展開しており、すでに多くのユーザを獲得しています。これに対し、今回発表したソラカメは「IoTカメラの民主化をさらに進める」ことを掲げ、S+ Cameraに比べて機能を絞り、より安価で、すぐに使えるカメラであることを目指しています。本体や月額費用が低額であることや、ソラカメ本体がどこにでも設置できることなどに、そうしたソラコムの思想が込められているのがわかります。

ソラカメが従来のS+ Cameraと大きく異なるもうひとつのポイントは、本体にアトムテックのATOM Cam 2を採用していることです。なぜ自社で開発した機器ではなく、ATOM Cam 2を選んだのか、玉川氏は自身で購入したATOM Camをはじめて触ってみたとき、⁠高品質で低価格の素晴らしいプロダクトでパッションを感じる。作った人に会ってみたい」と強く感じたそうです。その後、知人を介して⁠作った人⁠=アトムテック 代表取締役 青山純氏に会った玉川氏は、青山氏が語る「IoTをもっと普及させたい、日本から世界をリードできる製品を出したい」という思いに共鳴し、ソラコム初のクラウドカメラサービスのベースとしてATOM Cam 2を採用するに至っています。なお、ソラカメのローンチと同時にソラコムはアトムテックへの出資を伴う資本業務提携を発表しており、今後も両社の知見をあわせながらビジネス部門でのカメラ活用を推進していく方針です。

ソラカメローンチに伴い、ソラコムとアトムテックが資本業務提携を発表。今後もクラウドカメラサービスの開発を両社で行っていく
ソラカメローンチに伴い、ソラコムとアトムテックが資本業務提携を発表。今後もクラウドカメラサービスの開発を両社で行っていく

玉川氏が「高品質で低価格の素晴らしいプロダクト」と高く評価したスマートホームカメラのATOM Camは、最初の発売から2年が経過しており、シリーズ累計の販売台数は15万台超に達しているという人気製品です。人気の理由は玉川氏も指摘するように、高画質/高性能/多機能でありながら、圧倒的な低価格を実現しているところにあります。たとえばソラカメのベースとなっているATOM Cam 2は2,980円、AI自動追跡や首振り機能も備えた「ATOM Cam Swing」は4280円、さらにクラウドモーション検知⁠無制限⁠サービスは月額600円/台で、いずれも業界内でも群を抜いた低価格です。

会見に登壇した青山氏は、ATOM Camシリーズが低価格と高品質を両立させている理由について「リーズナブルな価格帯でなければ、誰でも使えるIoT製品にはならない。大量販売できればコストも下げられる。また安い部品ではなく、あえて高性能の部品を使うことで、初期不良やサポート、交換コストなどを減らしている。流通はAmazonや楽天などのオンラインショップと直販に絞り、販売にかかる人件費をカット、また広告宣伝ではなく、使ってくれたユーザの口コミが拡がったことで、ブランドと製品理解の向上が進んだ」と語っています。より良いものを、リーズナブルな価格で、大量に提供するというものづくりの原点のようなアトムテックの戦略が、創業時からIoTの民主化を推進してきたソラコムのビジョン「世界中のヒトとモノをつなげ共鳴する社会へ」とぴったりとかみあい、ソラカメというサービスの共同開発にまで進展したといえます。

玉川氏とともに会見に登壇したアトムテック 代表取締役 青山純氏(右)
玉川氏とともに会見に登壇したアトムテック 代表取締役 青山純氏(右)

使い勝手の良い“眼”の登場が進化の起爆剤となる?!

ここ数年、とくにコロナ禍に入ってからはネットワークカメラを使った「離れた現場の見える化」⁠オフィスの遠隔モニタリング」といった需要が業界を問わずに高まっています。しかしその一方で、既存のカメラソリューションは初期投資(機器や設備工事)が高額で、セキュアなデータ保存環境の整備が難しく、また、初期設定や操作方法が煩雑という課題があり、警備や防犯用途以外でのビジネス現場での普及はなかなか進んでいないのが現状です。

ニーズが高まっているにもかかわらず、ビジネス現場での導入が進まないネットワークカメラ。高額な初期投資やセキュアなデータの保存先の確保、初期設定や操作方法の煩雑さなどがボトルネックになっている
ニーズが高まっているにもかかわらず、ビジネス現場での導入が進まないネットワークカメラ。高額な初期投資やセキュアなデータの保存先の確保、初期設定や操作方法の煩雑さなどがボトルネックになっている

そういったビジネス現場でのカメラ導入を阻む障壁を取り除くソリューションとして開発されたのがソラカメです。玉川氏は「生命が眼をもったことでカンブリア大爆発での進化につながったように、IoT時代のカメラはインターネットの⁠眼⁠にあたる存在。ソラコムの最初の製品であるSIMは3,000円くらいからスタートしたが、ソラカメも本体価格は3,000円弱であり、気軽に買ってもらえるはず。カメラのポテンシャルはこれからが勝負。人々の想像力をかき立て、イノベーションを爆発的に起こしていくカメラへと進化させたい」とネットワークカメラへの強い期待をあらわしています。

カンブリア大爆発は生命が眼を持ったことによって進化したという玉川氏。ネットワークカメラもインターネットの眼として、イノベーションを引き起こす存在となるか!?
カンブリア大爆発は生命が眼を持ったことによって進化したという玉川氏。ネットワークカメラもインターネットの眼として、イノベーションを引き起こす存在となるか!

前述したように、ソラカメにはすでにベータバージョンのユーザからさまざまなフィードバックが寄せられており、これらの声に沿ったアップデートも予定されています。ロードマップではではAIアルゴリズムの適用やAIマーケット連携、開発者へのAPI提供、Amazon S3など外部のクラウドサービス連携などが開発スコープに入っているとのこと。また、ソラコムはパートナーエコシステムとの連携も積極的に推進していく方針を明らかにしており、パートナー企業によるユニークなソラカメソリューションの提供も期待できます。

ソラカメのロードマップ。ユーザからとくに要望されているのがAIアルゴリズムの適用。ソラコムにはすでにAIカメラのS+ Cameraがラインナップとしてあるが、⁠ソラカメはクラウドAIカメラであり、エッジAIカメラのS+とは若干ロールが異なる」と玉川氏
ソラカメのロードマップ。ユーザからとくに要望されているのがAIアルゴリズムの適用。ソラコムにはすでにAIカメラのS+ Cameraがラインナップとしてあるが、「ソラカメはクラウドAIカメラであり、エッジAIカメラのS+とは若干ロールが異なる」と玉川氏

これまで眠っていたカメラのポテンシャルをソラカメがどう引き出していくのか、そしてどんな新しいユースケースが生まれてくるのか、引き続きその進化の行方に注目していきたいと思います。

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