太陽系外の惑星が数多く発見されるようになったのは比較的最近のことで、1990年代に入ってからです。恒星のように自ら光を発するのではなく、主星の光を反射する惑星の発見は非常に難しく、ドップラー法やトランジット法といった観測技術が確立するまでは、両手で数えられるほどしか見つけることができませんでした。
今回紹介する「HD 189733b」は2005年に発見された、地球から63光年とかなり近い位置にある太陽系外惑星です。主星であるHD 189733から500万kmも離れていないごく近い軌道を約2日かけて周回するHD 189733bは、木星型のガス状惑星、いわゆる「ホットジュピター」に分類されます。地球と太陽の距離が約1億5000万km、太陽に最も近い水星でも約5800万kmということを考えれば、HD 189733bがいかに至近距離で公転しているかがわかります。
残念ながら現在の撮影技術では、HD 189733bのようにたとえ地球からそれほど遠くない距離であっても、太陽系外惑星の姿を写真に収めることはできません。しかし、近距離ゆえにわずかな反射光を捉えることはできます。NASAは7月11日、ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope)が撮影したHD 189733bからの光を分析した結果、このホットジュピターが地球よりも深い青色をしていると発表しました。
日中の温度は1000℃を超え、表面はつねに時速7200kmの強烈な熱風が吹き荒れているという灼熱の星が、海よりも青いコバルトブルーをしているのは、大気圏を覆うシリケート(ケイ酸塩)分子を含んだ厚い雲に理由があるようです。シリケートは高熱にさらされると小さなガラス状の物質となり、それが赤や緑ではなく青い光をより散乱させるため、この星を色あざやかなブループラネットに見せていると考えられています。
地球からそれほど遠くないところにある地球と同じような色をした惑星 ─暗黒の宇宙に浮かぶ青いドットを確認できる日がくるまでにはまだ相当な時間が必要ですが、積み重ねられた観測結果が少しずつこの星を我々に見える存在へと変えていってくれます。
NASAのアーティストが今回の発表をもとに描いたHD 189733bの想像図。こぎつね座の方向に約63光年離れた恒星HD 189733を主星とするホットジュピター型のHD 189733bは、主星のごく至近距離を公転している。したがって地球に対する月のように、つねに主星に対して同じ面を見せている(自転周期と公転周期が同じ) 。イエローオレンジの主星のすぐそばを回るディープブルーのホットジュピター。いつかその姿を捉えることができる日がくるのだろうか…。