インターネットや雑誌、新聞などで星雲、星団や銀河の美しい写真を目にした人もきっとたくさんいることでしょう。これらの天体を3Dで見れたら楽しいと思いませんか?ところが星雲星団や銀河ははるか遠方にあるため、写真に写っている星の距離や星雲の立体構造はほとんどわかっていません。星座の場合と違って、科学的に根拠のある「3D立体写真」を作ることはできないのです。
正確な遠近感ではないけれど、天体の特徴を反映させた「3Dアート」であれば、画像処理により作成することができます。ただ星座写真のような星だけの3D処理と違い、広がりを持つ天体の3D処理ではいくつかの工程が必要となります。その一例として、今月はアンドロメダ大銀河の3D処理を紹介しましょう。
3D処理の工程
- (A)アンドロメダ大銀河と天の川銀河内の星とを分離する。
- (B)天の川銀河内の星だけを3D処理する(距離データがないので立体感は任意)。
- (C)アンドロメダ大銀河のみを3D処理する。
- (D)BとCを合成する。
最も困難な工程はAです。あとは、距離のデータがないことを逆手にとり、自由に美しい立体感を演出できるような処理をしています。ただ、メインの天体の3D処理である工程Cは、その天体の特徴を可能な限り反映させるようにします。
星雲星団や銀河の3D立体天体写真には、上述したように科学的根拠はありません。立体感の定量性もなく、3D写真というよりは写真を素材とした3Dアートと呼んだ方が適切でしょう。しかし、この作例のように銀河が円盤状であることや、銀河系の星の外にある天体であることを直接目で把握できる教育的効果があります。
3D処理には莫大な労力を要しますが、完成した3Dアートを見ながら宇宙空間を漂うと、そんな労力など忘れてしまう楽しさがあるのです。