書籍『ピタゴラスの定理でわかる相対性理論』の補講
第2回 アインシュタインに影響を与えたオーストリアの物理学者
本書のp.
Hasenöhrlによる係数
ハーゼンエール
彼はこの論文
だとしています。
Abrahamによる係数
これに対してMax Abraham(1857-1922)は係数に違いがあるのではないかと指摘して,
Abrahamはユダヤ系の裕福な商人の家に生まれ,
アインシュタインによる係数
さて,
この係数の問題について詳細に書いているのが,
つまり,
生きていればノーベル賞
ここには長い物語りがありそうです。Hasenöhrlは気体物理学で有名なボルツマン(Ludwig Boltzmann 1844-1906)の弟子でした。当時原子の構造を解明する物理学はまさに修羅場で,
第1次世界大戦に志願してHasenöhrlはイタリア戦線で負傷し回復後1915年に再度チロルの戦線にもどったときに手榴弾を受けて戦死しています。シュレディンガーの伝記[2]によると,
Hasenöhrlが与えた影響は大きい
シュレディンガーとアインシュタインはベルリン大学で同じころに教授でしたし,
ウイーン大学の回廊には写真のように大きな業績を上げた教授たちの胸像が並んでいます。2005年の6月にそこを訪れたとき筆者はBoltzmannやシュレディンガーの胸像の写真は撮ったのですがHasenöhrlのことを知らなかったために調べませんでした。
本書のp.
Hasenöhrlはアインシュタインとシュレディンガーに大きな影響を与えた物理学者だということがわかってくるのですが歴史的に忘れられてしまってよろしいのでしょうか?
Fritz Rohlichは1921年のウイーン生まれですが,
- シュレディンガーに関する資料
- 中村量空:シュレディンガーの試作と生涯,
工作社 - D.ホフマン著,
櫻山義夫:シュレディンガーの生涯, 地人書館 - 見城:図解わかる電気と電子,
講談社ブルーバックスシリーズ
- 中村量空:シュレディンガーの試作と生涯,
ウイーンは600年の歴史をもつハプスブルグ王朝の帝都として栄えモーツアルトが活躍したところです。そこから偉大な物理学者が生まれたのですが,
記事中で紹介した書籍
-
ピタゴラスの定理でわかる相対性理論 ―時空の謎を解く双曲幾何―
ピタゴラスの定理がわかれば,球面幾何学の意味がすっきりし,双曲幾何学が手に取るようにわかります。さらに ピタゴラスの定理見方を変えて再度吟味してみると,球面...
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書籍『ピタゴラスの定理でわかる相対性理論』の補講
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- 第15回 ライバル同士の対話
- 第14回 相対論から量子力学への展開と日本の時代
- 第13回 ピタゴラスの定理に宿される秘儀―エネルギーと運動量に関係する法則
- 第12回 光量子仮説と相対性理論―アインシュタインはどのように考えただろうか?ー
- 第11回 電磁界のエネルギーについてアインシュタインはこう考えた
- 第10回 アインシュタインの論文の原文に挑戦!物体の慣性はそのエネルギー量に関係するか? Ist die Trägheit eines Körpers von seinem Energieinhalt abhängig?
- 第9回 独創性の原点,アインシュタインの第一論文
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