書籍『ピタゴラスの定理でわかる相対性理論』の補講

第6回 光と電磁波

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電磁波を式で表す

これから問題とするのが,平行線を長くどこまでも張った場合のことです。弦の場合には,波動の速度が仮に秒速300mとすると,秒速100mの乗り物からからは200mの速度に見えるし,乗り物の速度が300/mであれば止まって見えるはずです。

アインシュタインの疑問は,光の場合でした。光も電磁波の一種です。彼の相対性理論では,平行フィーダ線にそってどんなに速い速度の航空機に乗って観測しても,観測者には電磁波の伝播速度が同じ速度cだということです。

電磁波の場合,電磁波の速度が観測者によって変わらないためには,電磁波の方程式がx' y' z' t'系でも,(3)式と同じ形で,次のようでなければなりません。

ただしダッシュ(⁠)はx' y' z' t'座標系で観測したときの電磁界を意味します。

教科書に書かれていないことが多い

初歩的な多くの電磁気学は,このことに触れていません。触れたとしても,マックスウェルの方程式から導かれる波動方程式は,自動的にそうなるのだと述べているものが多いです。

しかしそれをていねいに説明するためには,若干の疑問があります。2つの座標間での電磁界の関係をどのように与えているかが問題になるからです。

工学部のテキストでは,

とするのが一般的だと思います。

さらに,電界があってそこを導体が速度 vで通過したときには磁界が発生すると考えたのがマックスウェルです。

彼は式(4)に関連して,磁界を速度 vで通過すると電界が発生するとしました。これを2つの座標系の間の関係に変換して表現すると次の式です。

しかし,通常の速度では,右辺の第2項が無視できるので実質的に,

とすることが多いようです。

この問題点をしっかりと書いている教科書は違います。表1はその比較です。平行フィーダ線の中央の電磁波(BとE)の関係としてみてください。

電界と磁界の間には,時間と位置の関係とまったく同じローレンツ変換があるのです。これはアインシュタイン以降に,電磁気学の教科書を再構築していくプロセスで専門家たちによって整備された関係式だと思われます。

日本人による教科書として代表的なものは,大阪大学教授だった砂川重信氏の『理論電磁気学』(紀伊国屋書店)です。

表1 時空と電磁界のローレンツ変換(図3のxyz系とx'y'z'系の間の関係式)

 変数ローレンツ変換式
時空x:位置
t:時刻
電磁現象E:電界強度
B:磁束密度

時空で不変なものインターバル

この時空で不変なものの代表は,確かに光速 cですが,より広く言うとインターバルであることを,⁠ピタゴラスの定理でわかる相対性理論』の6.12節や7.7節に書きました。

時空の不変量は,インターバルs2=(ct)2(x2+y2+z2です。

電磁界の不変量は,この形に類似して(cB)2-E2です。つまり,

が2つの座標間で成り立ちます。これは電磁界のインターバルのようなものです。ケータイで便利に使っている電磁波のインターバルともいえます。

このように波動には不思議な現象があります。筆者が大学で電子工学科の学生として取り組んだ卒業研究は,また不思議な波動でした。

それはガラス管の中に閉じ込めたアルゴンなどの稀ガスのプラズマに伝播する音波のような波動で,1方向にしか伝播しない移動縞というものです。

不思議というのは,発信源から波が遠ざかるのではなく,遠方から発信源に向かって進行してくる波動だからです。そんな波動がこの世にあるのかと読者は思われるに違いないないのですが,極めて不思議の国のことのようですが,本当にそうなのです。

次回はそれについて書いてみたいと思います。